慢性疲労症候群(CFS)の原因

人間の体内には、過去に感染したさまざまなウィルスが潜伏しています。ストレスなどの影響で 免疫力が低下すると、ウィルスが活動を再開します。それを抑え込もうと各種の免疫物質 (インターフェロン、TGF-βなど)が体内でつくられ、悪影響が生じます。

▼ストレス
・精神的ストレス・・・・・人間関係のあつれきなど。
・身体的ストレス・・・・・過労、トレーニングのし過ぎなど。
・科学的ストレス・・・・・建材などから放出される化学物質など。
・物理的ストレス・・・・・紫外線、温熱、騒音など。
・生物学的ストレス・・・・ウィルス、細菌など。

▼ウィルスが再活性化する
人間の体内には、ヘルペスウィルスなど、過去に感染したさまざまなウィルスが潜伏している。 ストレスで神経系の働きに異常が生じると、免疫の働きが低下する。 その結果、潜伏していたウィルスが活動を再開する。 これを「ウィルスの再活性化」という。

▼インターフェロンなどの免疫物質による影響
再活性化したウィルスを抑え込もうとして、体内ではインターフェロンなどの免疫物質が盛んに作られる。 過剰な免疫物質は、脳の働きに影響を及ぼし、強い疲労を生じさせたり、血中に長くとどまって 疲労感を長引かせる。また、微熱、筋肉痛、関節痛、気分の落ち込みなどを引き起こす。

▼TGF-βによる影響
免疫物質が過剰に作られると、内分泌系にも異常が生じる。 TGF-βが血中に長くとどまって、疲労感を長引かせたり、幸福感や情緒に関係する ホルモン(DHEA-S)を減少させ、疲労の回復などを阻害する。

▼DHEA-Sの減少による影響
DHEA-Sの減少は、アセチルカルニチンという物質の減少も招く。 アセチルカルニチンは、脳では神経伝達物質の合成に使われているので、減少すると 主に脳の慢性疲労に関与する部位の機能に異常が起こる。

また、自分の組織を攻撃する種々の自己抗体がつくられて、それが脳に運ばれ、脳の疲労を感じる 機能の異常を引き起こしている可能性も指摘されています。
慢性疲労症候群(CFS)の研究では、血流量などを手がかりに脳の機能を調べる研究も行われて います。慢性疲労症候群患者の脳の血流量を健康な人と比べると、自律神経、意欲、記憶、体温調節や心拍 と関係する部分など、いろいろな部分で血流量が低下しており、脳の機能低下が確認されています。


●ストレスと遺伝的な背景

慢性疲労症候群患者の多くは、精神的なストレスを抱えていることが多いようです。 家庭や職場のトラブル、配偶者の死亡など、人生にはストレスとなる出来事がいろいろあります。 これらの”出来事ストレス”が何項目あるかを調べたところ、健康な人の平均約4項目に対し、 慢性疲労症候群発症時の患者は平均8項目と、多くのストレスがあったそうです。
またストレスの影響については、遺伝的な背景も研究されています。脳では、セロトニンをはじめ、 さまざまな神経伝達物質が神経細胞の間を移動することで情報が伝えられます。 同じようなストレスに対する感受性の違いは、神経伝達物質をやりとりする部位の遺伝的な違いが 関係している可能性が報告されています。