超睡眠法第1章『ピークシフトで脳をマネジメントする』⑨就寝

就寝①眠れない原因はどこにあるのか?
就寝②”誘惑”は遠ざけておくのが一番!
就寝③映像が浮かんできたら眠りのチャンス!
就寝④思わぬアイデアが埋もれているかも!?
就寝⑤マイナス思考の連鎖が始まる前に”脱出


■不眠のメカニズムを知っておく

◆何らかのきっかけから、悪い習慣を引きずって不眠に陥る

「眠りたい!」と強く願えば願うほど眠れないという人は多いのではないでしょうか。 眠れないという不安や孤独感にさいなまれ、それを埋めるために悪習慣が生まれ、その結果、リズムがずれてしまうことがあります。 そのため、眠れない時はまずリズムを整え、「自分は眠れる」という既成事実を作ってから悪い習慣を改めていくようにしましょう。 不眠の原因は考え過ぎの性格、不規則な生活など人それぞれですが、そこに人間関係や体調の変化、ストレスなどのきっかけが重なり、 始めて不眠状態となるのです。この眠れなくなったタイミングで、テレビや本を夜中までだらだら見るなどの習慣ができてしまい、 きっかけだったことが解決したあとも、不眠を自ら作り出してしまうのです。 ちなみにこんな状態が2週間以上続いたら、睡眠問題を抱えているといえます。

  • ▼寝床に入ってから入眠までに1時間以上かかり、眠ってもすぐに起きてしまう。
  • ▼悪い夢を見て、汗をびっしょりかいて目覚めてしまう。
  • ▼睡眠中に大声を出したり、食事をしてしまうが自分では覚えていない。

このような状況に陥ると、医療機関での治療が必要となります。 そこで次のような対処を事前に行い、睡眠問題の発生を防ぎましょう。

  • ▼睡眠のリズムを整えることを一つだけ始める。
  • ▼睡眠に悪い習慣を一つだけ止める。

◆睡眠不足が不眠症に発展する

睡眠不足の一つに、「行動誘発性睡眠不足症候群」があります。「昼間に急激に眠くなる」「終末に過眠する」 「8分未満で眠りに落ちる」といった症状が現れます。その特徴は、「自発的な断眠」、普段から慢性的に睡眠不足なのに、 テレビ視聴やネット閲覧で自ら睡眠をさらに削ってしまうことにあります。 この状態が長く続くと、鬱病や不安障害につながり、不眠症になり社会生活にも影響を及ぼします。 また、睡眠不足は血糖値の上昇にもつながり、糖尿病や高血圧症のリスクが高まりますので、注意が必要です。

【睡眠不足は病気のリスクを抱える】

不眠症を1年間治療せずに放置しておくと、鬱病になるリスクが約40倍も高まるという研究結果があります。 リズムが乱れると睡眠不足のサインもあるので、早めに対処しましょう。


■寝室や寝床に不要なものを持ち込まない

◆寝る前は脳に対して、余計な刺激を与えない

「全然眠れないんです」という相談の中には、原因が自分の習慣にあるケースが多々あります。 夜遅くまでSNSをやったり、テレビを見たり本を読んだり・・・・・眠れないからやり始めたことが、 いつの間にか習慣になってしまいます。 快眠グッズを買いあさったり、考え事をしないように頑張るなど、無理な目標を立てたがために脱却できない人もいます。 まずは、確実にできることを一つだけ始めることが、不眠解消のカギとなります。 また眠るときにやってはいけないのが、寝室や寝床に本や携帯電話、音楽プレーヤーなど、眠りに無関係なものを持ち込む行為です。 脳の活動が、置かれた状況に簡単に左右されてしまいます。眠れないからといって寝床で本を読むことが習慣になると、 寝床に入るなり読書で使う部分の脳の活動が活発化するようになり、より寝付きが悪くなります。 これはテレビやパソコン、携帯電話においても同じです。脳の温度が上がってしまい、睡眠にふさわしくない状態になってしまうのです。 そのため、眠る直前はなるべく脳を興奮させないよう視覚的刺激を避け、頭が熱くなっていると感じたら、 タオルなどを使って頭を冷やしましょう。またどうしても本を読みたかったり、携帯電話を使用したい場合は、 寝床以外の場所でやるようにします。眠気が強くなったら本や携帯電話をその場においてから寝床に入るようにしましょう。 生活スペースと睡眠スペースを分け、メリハリをつけることが睡眠改善への第一歩となります。

◆「ながら活動」は脳をフル回転させてしまう

そして夜、なるべく控えておきたいのが食事をしながらテレビを見たり、音楽を聴きながら本を読むなどの「ながら活動」です。 一度に2つのことをすることで脳がフル回転し、脳が興奮していまいます。 寝付きが悪いいう方は、試しに、夜テレビを消してご飯を食べてみましょう。 最初は静かすぎて落ち着かないと思いますが、3日ほど続ければ、その状況にも慣れてきます。 その後テレビをつけると、今度はその音量が煩わしいとさえ感じられるはずです。 普段の生活から脳を興奮させすぎない環境を作ることが大切です。

【生活と睡眠のスペースを区別する】

寝床に本や携帯電話を置いておくと、眠れない時に読んだりいじったりして、眠りに入るのが遅れる恐れも。 例え部屋が狭くても、生活スペースと睡眠スペースはなるべく別にするよう心がけてください。

【寝床に持ち込んではいけないもの】
▼本
寝る前に漫画や小説を読む人も少なくないが、読書で使う部分の脳が活発になってしまう。

▼携帯電話
目覚ましに使うつもりが、寝る前や目覚めた後にSNSなどをチェックする習慣がつくと、目覚めた後もだるさが残りやすい。

▼音楽プレーヤー
リラックスする音楽でも流しっぱなしで寝ると、脳の睡眠中の作業を妨げるので注意。

▼テレビ
寝床に寝転んで、録画しておいた番組をまとめてみるなどの習慣があると、脳が眠るという反応が薄くなってしまい、 熟睡感が減る、見るときは寝床を出て。

■「入眠時心像」を使って眠りにつく

◆モヤモヤした映像が眠りをサポート

寝床に入り、目を閉じて数分経つと、意識とは関係のないモヤモヤとした映像が浮かんできます。 この映像を「入眠時心像」といい、夢とは異なり、脳が外部からの刺激(視覚や聴覚)をシャットアウトして 眠りに入りやすくするために見せる映像です。入眠時心像は、非現実的で楽しい映像が多い傾向があります。 睡眠時に見る夢が怖いもの、ビックリするものが多いのとは対照的です。 寝付きの良い人の多くは、実際にこの映像を見ていても、覚えていない人が多いようです。 この映像は、見ようとする訓練を重ねることで見られるようになります。 感覚が掴めてくると、眠りに入る安心材料にすることができます。 不眠に悩んでいる人は、寝床についたらまず、目を閉じて「何が浮かんでくるのか」を意識して飲むようにしましょう。 眠れない時は、いろいろなことを考えてしまいますが、これは「受け身」の態勢です。 目を閉じて、「映像を見よう」と意識し、映像が浮かんできたらそれに集中します。 注意がそれると映像が消えてしまい、脳が目覚めてしまいます。 「浮かんできた映像を捕まえる」イメージで、自分なりの感覚を掴むようにするとよいでしょう。

◆目を閉じるだけで出るアルファ波、就寝前は物音に過敏になる

眠りに入る前、近所から聞こえる物音や犬の鳴き声が気になってしまい眠れなくなった。 そんな経験が皆さんにもあるのではないでしょうか。夜、就寝前に音に敏感になる理由は、2つ考えられます。 1つは、脳波の影響です。一般的にアルファ波はリラックスした時に出る脳波だと認識されていますが、 実は目を閉じただけでも、アルファ波は出ます。アルファ波が出ているときは聴覚が敏感になるので、 就寝前には音が大きく聞こえるのです。 生体リズムの中で体が休もうとしているときには、脳の機能も低下しています。 その状態にあるときは、動物ならば捕食される危険性があるため、必要以上に警戒し、注意を払う機能が本能的に働きます。 その結果、昼間と同じ音なのにとても大きく感じたり、ちょっとした話し声でも気になってしまうのです。

【入眠時心像を逃すとネガティブ思考に】

早く眠ろうとベッドに入ったものの、なかなか眠れなくてマイナス思考の考えが頭を巡ってしまうことがあります。 否定的な出来事が次第にエスカレートし、睡眠不足になって翌日まで響いてしまうことも。


■寝床で浮かんだ考えをメモに書く

◆マイナス思考のループが不眠へと陥らせる

「明日は始発の新幹線で出張だから、今夜は早く寝よう」。そんな時に限ってなかなか眠れずに焦ってしまった・・・・・ 誰でもそんな経験があるはずです。一度入眠時心像を逃し、脳が目覚めてしまうと、いろいろな考えが頭に浮かんでしまいます。 特に、マイナス思考が強まるので、頭の中は仕事の心配事やプライベートの悩みなど、ネガティブなことばかり。 果ては、「自分は眠ることすらできない」とさえ考えてしまいます。そんな時は体を起こし、考えをメモに書いてみましょう。 脳には、「前頭連合野」という思考などを司る部分と、「後方連合野」という感覚などを司る部分があり、前後に分かれています。 この2つは競合関係にありますが、メモを取れば後方連合野(感覚)が働き、前頭連合野(思考)の働きを抑えることができます。 また一度メモを取ると、その後に同じ考えが浮かばない効果もあります。 これを繰り返すことで考えことが減り、自然と眠くなっていきます。 ちなみに携帯電話やスマートフォンなどではなく、紙とペンで書くのがベストです。

◆メモには事実だけを淡々と記していく

このとき注意していただきたいのは、事実のみを書くということです。頭に浮かんできた事実だけを書きだしてください。 想像的なことを書くと思考を司る脳の部分が元気になり、目が冴えてしまって眠れなくなってしまうからです。 また事実とはいえ、日記や感情的な言葉を書いてもいけません。例えば誰かに叱られたイメージが浮かんできたら、 そこに触れず「人が話していた」など、淡々と書き記すことが重要です。 その一方で、昼間は閃かなかった仕事のアイデアがパッと浮かぶことがあります。 「これはすごい!早速明日試してみよう」と思っても、朝起きたらきれいさっぱり忘れている・・・・・とならないように、 短くメモをしてみましょう! また、寝る前に日記を書きながら1日を思い返す方もいると思います。しかし、寝床でそれを書いていると、 やがて寝床に入っただけで条件反射的に言語野(言葉の理解や表現を司る脳の部分)が働いてしまい、寝入りが悪くなってしまいます。 くれぐれも寝床には余計なものを持ち込まないよう、気を付けてください。

【レム睡眠の力を借りてアイデアを記す】

睡眠中の記憶の整理は、主にレム睡眠の最中に行われています。自分の頭が固く、発想が豊かでないと思っていても、 レム睡眠の力を借りれば柔軟な発想ができます。閃いたら、寝床を出て短くメモしてみましょう。


■眠れなかったら15分で寝床を出る

◆寝床から離れてひとまず脳を落ち着かせる

入眠時心像を使っても、メモを書いても、確実に眠れるというわけではありません。 特に脳が過剰に興奮しているときは、寝床の中で横になっている時間をできるだけ減らすことが大切です。 そこで15分経っても眠れない場合は、いっそのこと寝床を出てみましょう。 寝床から出たら、頭を使う作業をなるべくやらないことです。脳を刺激してしまっては、元も子もありません。 照明をできるだけ抑えて、雑誌を眺める、ゆったりとした音楽を聴くなどして、自然と眠気が催してくるのを待ちましょう。 そしてギリギリまで我慢し、どうしても眠いというタイミングで寝床に入ります。 すると大脳の興奮も静まりやすく、寝付くことができます。

◆仰向けに寝るのは意外と体に良くない!?

眠る体制はうつ伏せ、仰向けと人それぞれですが、実はうつ伏せで眠る方が長生きできるという研究があります。 犬や猫があおむけになって寝ていると、「大丈夫かな?」と心配になってしまうほど無防備ですが、 それは人間にも当てはまるのです。 人間は二足歩行になった時点で気道がかなり狭くなったのですが、仰向けに寝ていると重力で押され、さらに狭くなります。 この狭い気道を空気が通る際に発生するのが「いびき」です。いびきは結構デリケートな悩みで、場合によっては 夫婦仲がこじれる要因にもなりかねません。うるさいのもさることながら、無呼吸の心配もあるのであなどれません。 もしイビキが気になる場合は、胸の下にクッションを入れ、うつぶせで寝てみましょう。 睡眠時は胸式呼吸より腹式呼吸の方が優位になりますが、仰向けだと腹式呼吸の動きができなくなります。 一方、うつぶせは腹式呼吸も可能になるので、顔を左右どちらかに向け、顔を向けた側の手を曲げた胸の下に クッションを入れて寝てみてください。最初は息苦しいかもしれませんが、次第に慣れてくるはずです。 ちなみに私自身もうつぶせの態勢で寝ていますが、仰向けで寝ていたころよりも体の調子が良くなりました。 うつぶせで寝ると、喉にたまっている痰を取りだせる効果があり、鼻炎や喉の痛みの解消にもつながります。 最初はよだれなどが出てしまっても、そのうちなくなっていくので、ぜひ試してみてください。

【仰向けが気持ちいいのはイメージ】

仰向けとうつ伏せだと、何となく仰向けの方が気持ちいいイメージがあります。 野原で大の字になっている姿はいかにも気持ちよさそうですが、睡眠中の呼吸には、 うつ伏せの方が利点が多いことも知っておきましょう。