女性の尿漏れ

生活の質の低下を招き、多くの女性を悩ませる『尿漏れ』は、運動療法や薬物療法などで症状を改善することが期待できます。 不快な症状が続く場合は、泌尿器科や婦人科を受診してください。


■女性の尿漏れとは?

咳などとともに尿が漏れたり、急に尿意が起こったりする
腹圧による尿失禁と急な尿意を催す2つのタイプがある

尿漏れを起こしたことがある女性は、約2000万人と推計され、40歳以上の女性の約3人に1人が尿漏れを経験していると考えられています。 骨盤内には、おなか側から膀胱、子宮、直腸の3つの臓器が並んでいます。 骨盤の下側には、恥骨から仙骨にかけて骨盤底筋という筋肉があり、骨盤内の臓器をハンモックのように支えています。 尿道の真ん中あたりには、尿道括約筋があり、尿を溜めているときには尿道を締めて尿が漏れるのを防ぎ、 排尿するときには緩めて尿道を開きます。 女性の尿漏れには、腹圧性尿失禁切迫性尿失禁の2つのタイプがあります。 約2割の人が切迫性性尿失禁、約3割の人はその両方を合併している混合性尿失禁とされています。 また、切迫性尿失禁は「過活動膀胱」という病気の可能性もあります。


●腹圧性尿失禁

お腹に力が入った時、「腹圧」が高まることで尿漏れが起こります。 「咳やくしゃみをしたとき」「笑ったとき」「スポーツをしているとき」「重いものを持ったとき」などが尿漏れを起こしやすい状況です。、 症状が進行すると「急に立ち上がったとき」「歩いているとき」などにも尿漏れが起こるようになります。 主な原因には、骨盤底筋の緩みと尿道括約筋の機能低下があります。

▼骨盤底筋の緩み
骨盤底筋が緩む大きな原因には出産があります。出産で胎児が産道を通過するときに、骨盤底筋が傷ついて緩んでしまいます。 また、加齢肥満が原因で骨盤底筋が緩むこともあります。 膀胱や子宮を支えている骨盤底筋が緩むと膀胱と尿道が下がり、膀胱と尿道の角度が変わるため、尿道が開きやすくなってしまいます。 このような状態で腹圧がかかると、弱い腹圧でも尿道が開いて尿漏れが起こります。

▼尿道括約筋の機能低下
閉経後の女性ホルモンの分泌低下や、子宮の手術などによって、尿道を取り囲む尿道括約筋の機能が低下し、腹圧で尿が漏れやすくなる場合があります。

◆腹圧性尿失禁の原因

骨盤の底にあたる部分には、筋肉や靭帯でできたハンモック状の「骨盤底筋」があり、膀胱、子宮、直腸などを支えています。 健康な人であれば、膀胱に強い腹圧がかかっても、それによって尿が漏れてしまうことはありません。 骨盤底筋が尿道を支えていますし、尿道を締める「尿道括約筋」も収縮するので、膀胱の出口がしっかり塞がれるからです。 ところが、腹圧性尿失禁の場合は、腹圧がかかることで尿漏れが起きてしまいます。「妊娠や出産」「肥満」「加齢」などが原因で 負担がかかり、骨盤底筋が緩んでしまうからです。骨盤底筋が緩むと、膀胱と膣が後方に倒れ込みます。 この状態で膀胱に腹圧がかかると、膀胱の出口が広がり、尿が漏れやすくなるのです。 さらに、尿道括約筋が弱く、締まりにくくなることも原因になります。


●切迫性尿失禁

急な尿意を催して、トイレに行くまで我慢しきれずに尿漏れを起こすことがあります。 また、冷たい水に手を触れる、水の流れる音を聞くといったトイレに関連する刺激などがきっかけとなって、 条件反射的に突然、尿意を催すこともあります。通常は、昼間や夜間の頻尿を伴うことが多いとされています。 主な原因は、過活動膀胱です。排尿は、脳の中枢神経と膀胱が連携することで行われています。 排尿するときには、脳から指令が出ることによって尿道の筋肉や尿道括約筋が緩み、膀胱の筋肉が収縮することで尿が出ます。 ところが、中枢神経の病気によって脳と膀胱のやり取りがうまく機能しなくなると、わずかな刺激で勝手に膀胱が収縮していまい、尿漏れが起こります。 このほかにも、加齢による膀胱機能の変化や膀胱の血流障害によって膀胱が収縮しやすくなったり、膀胱の知覚神経が過敏になるなどして、 過活動膀胱が起こることがあります。このような過活動膀胱は、50歳代以降に多くなります。 さらに、切迫性尿失禁を起こす過活動膀胱の原因には、内臓脂肪型肥満に複数の生活習慣病が重なって起こる メタボリックシンドロームも関係していると考えられます。

過活動膀胱

急に我慢できないような激しい尿意を感じる「尿意切迫感」が典型的な症状です。 「頻尿」もよく見られる症状で、排尿してもすぐに尿意が起こります。 就寝後、1回以上トイレに行く「夜間頻尿」もあります。 尿意切迫感が起きたとき、トイレに行くのが間に合わず尿が漏れてしまうことがあります。 これを「切迫性尿失禁」といいます。 尿漏れに悩む女性のうち、腹圧性尿失禁のみの人は約5割、過活動膀胱による切迫性尿失禁のみの人が約2割、両方を併せ持つ人が約3割います。

【過活動膀胱の原因】

膀胱に尿がたまると、”たまった”という情報が、膀胱から脳に伝達されます。すると、脳は”排尿せよ”という指令を送り、 それによって膀胱が収縮し、尿道括約筋が緩みます。こうして排尿が行われるのです。 過活動膀胱の場合は、膀胱と脳との間の伝達がうまくいかず、膀胱が勝手に収縮します。 そのため、排尿を我慢することができず、尿漏れが起こるのです。