肥満関連腎臓病

中性脂肪が多い人は、腎機能が速く低下して、腎臓病が悪化しやすく、腎不全の危険増大。


■肥満関連腎臓病

肥満で内臓脂肪が増え腎臓を圧迫すると、血圧が上がって腎臓の血管が傷つき機能低下

最近、肥満の人が腎臓病を発症しやすいという問題があることがわかってきました。 慢性腎臓病(CKD)になると、腎不全だけでなく脳卒中や心筋梗塞などを合併する危険が高くなります。 ここでは肥満と腎臓病の関係について説明します。

肥満と腎臓病について、琉球大学の井関那敏教授らが約10万人の日本人を対象に、17年間の追跡調査を行っています。 その結果、BMI(肥満度)が増加するにつれて腎不全になる危険が高くなることがわかりました。 日本には現在、慢性腎臓病の患者さんが1300万人いるといわれています。なかでも、BMIが30以上の男性で、 腎臓病を発症する人が右肩上がりに増えています。そのため現在では、肥満に由来する健康障害として肥満関連腎臓病が加えられるようになりました。


なぜ、肥満が腎臓病を招いてしまうのでしょうか?
肥満は、中性脂肪が体内に蓄積することから始まります。中性脂肪とは食事で摂った糖から作られる脂肪のことで、 エネルギー源として蓄えられます。しかし、中性脂肪がエネルギーとして使いきれないと、体内にどんどんたまって肥満を招きます。 肥満が進むと、内臓を保護するために内蔵を覆っている腹膜に存在する脂肪細胞に脂肪が蓄積されることによって、 腎臓が圧迫されるようになります。その結果、腎臓の周辺の血管に数百キロもの圧力がかかって血液が流れにくくなります。 腎臓は脱水症状が起こったと錯覚し、塩分を体にとどめるようになります。そこに塩気のあるものを食べると、血圧はさらに上昇。 血管が次第に傷ついてきます。 腎臓は毛細血管の塊のような「糸球体」という小器官で血液を濾過し、老廃物や毒素を尿として排泄するための仕事を しています。血圧が上がると細い血管ほど傷つけられ、動脈硬化が起こります。糸球体も例外ではなく、動脈硬化が進めば 血液の濾過能力が落ちてくるのです。 一方で腎臓は、過剰にとった塩分を体外へ出そうとして通常の2〜3倍も働くため(糸球体の過剰濾過)、 腎臓は大きな矛盾を抱えることになります。糸球体の動脈硬化によって濾過能力が落ちてきたのに、 無理に頑張って働こうとするからです。その結果、腎臓全体の機能低下を勧めてしまうのです。

また、脂肪細胞が肥大化するとレプチンというホルモンが多く分泌されるようになります。 レプチンは交感神経の働きを促す作用があるので、血圧が上昇します。 高血圧は腎臓の血管に負担を掛け、やがて濾過能力を低下させていきます。 肥満関連腎臓病では内臓脂肪蓄積に伴って、血圧を調整するレニン-アンジオテンシン系というシステムの働きが高まることも わかってきました。腎臓には、体の水分量を保ち、血液の循環を正常にするため、血圧を上げたり、体の水分と塩分のバランスを 取ったりする働きがあります。腎臓の糸球体に入り込む動脈の周囲には、傍糸球体装置(細胞)というものがあり、 血圧の変動を感知してレニンと呼ばれる物質を分泌。血圧が低下するとレニンの分泌量は増え、上昇すると分泌量は減少します。 レニンは血液中でアンジオテンシンTという物質を作りだし、血管内皮細胞膜の変換酵素によってアンジオテンシンUになります。 アンジオテンシンUには血管を収縮させる強い働きがあり、血圧を上げてしまうのです。 糖尿病や高血圧などの病気がなくても、肥満関連腎臓病はただ太っているだけで腎機能を悪化させてしまうのです。


●肥満で尿たんぱくが「+1」を超えている場合は、肥満関連腎臓病初期の可能性が高い

肥満関連腎臓病を防ぐには、やはり肥満を解消することが近道です。海外の研究で、肥満関連腎臓病の患者さん63人に 減量を指導したところ、2年後にはBMI値が平均9.2、尿たんぱくは51%も低下したことが報告されています。 女性は隠れ肥満も多いので要注意。一見痩せていてもBMI値が高い人や、中性脂肪値(基準は50〜149ミリグラム)が高い人は、 隠れ肥満に該当します。 一方で、女性の無理なダイエットにも気をつけなければいけません。腎臓一つにつき糸球体は約100万個あるといわれ、 生涯この数は増えることはありません。しかし母体(子宮)の中で発育が悪く、標準より小さく生まれてきた人は 糸球体の数が少ない可能性があります。生まれつき糸球体が少ない人が肥満になると、普通の人よりも糸球体に大きな負担が かかることになり、やがて糸球体が硬化し働かなくなってしまいます。

肥満関連腎臓病では、尿たんぱくが出るまでに時間がかかることがありますが、「+1」になったら要注意。 この数値が出たら肥満関連腎臓病の初期と考えていいでしょう。糸球体の濾過量を血液クレアチニン値から求める推算GFRも、 腎臓の状態を見るうえで重要です。ただし、塩分過多で腎臓が働きすぎているときは、濾過機能の数値が実際より高く出ることが あるので、数値の変化に注意しましょう。