肩の状態を知ろう

肩の状態は自覚しにくく、異常に気付くのが遅れがち。肩の関節と筋肉の状態をこまめにチェックしてみましょう。 チェックで痛みを感じたら、肩の病気や臓器の疾患が疑われます。


■肩の特徴

肩こりが原因で肩の病気につながることがある

●肩の構造

肩関節は、人間の体の中で最も大きく動かせる関節です。そのような動きが可能なのは、上腕骨が大きく動く肩関節の構造と、 それを支える肩甲骨の周囲の筋肉が十分に働いているからです。 肩関節は、背中側にある肩甲骨と上腕骨をつないでいる部位で、肩甲骨のくぼみに上腕骨の丸い先端(上腕骨頭)が挟まっています。 例えば、腕を真上に上げる場合、肩関節自体は約120度、さらに肩甲骨が約60度動いて、腕が真上に持ち上がります。 その時肩甲骨は、背中から肩にかけて広がる僧帽筋という大きな筋肉により引き上げられます。 肩関節のスムーズな動きには、僧帽筋が大切な役割を担っています。

●肩の状態が悪化する過程

肩こりとは、肩の筋肉(主に僧帽筋)が硬くなっていると感じている状態です。 肩関節と肩甲骨は連動して動くので、筋肉が硬くなると、肩を動かすためには、関節が必要以上に働くことになります。 そのため、関節に負担がかかり、自覚のないまま負担をかけ続けると、やがて関節が傷害され、肩が動かしにくくなったり、 痛みが出たりすることにもつながります。 肩こりに悩んでいる日本人は、およそ1200万人と考えられています。肩こりは身近な症状ですが、日常的だからといって軽視しないように注意が必要です。


■肩のチェック

肩の関節や筋肉の状態をこまめに知ることが大切

肩甲骨の動きは自覚しにくいため、肩こりが進行して、肩の状態が悪化していても、異常に気付かない場合があります。 肩関節と肩甲骨は連動して動くので、関節の肩甲骨のそれぞれの状態を認識しにくいことも、異常を発見させにくくしています。 自分の肩の状態を正しく把握するために、「肩が十分に動くか」「肩を正しく動かせるか」をチェックする方法を3つ紹介します。 いずれも簡単な方法で肩の異常を発見できます。チェック自体が肩の運動にもなって肩の健康を守ることにもつながるので、 こまめに行ってください。

●肩のチェック①腕開き

両腕の動きから、肩関節の可動域を知る方法です。腕が少ししか開かない場合は、肩関節の動きが制限されているという異常を知らせるサインになります。

●肩のチェック②腕開き

両腕が「上がらない」「まっすぐ上がらない」「左右差がある」などの場合は、肩関節が硬いか、あるいは肩関節に連動する肩甲骨や 筋肉を十分に動かすことができないためだと考えられます。 腕開きと前・横バンザイの双方ができた場合には問題ありません。腕開きができて万歳ができない場合には肩の筋肉に問題があり、 両方できなかった場合には肩関節に問題があります。

●肩のチェック③肩回し

肩がスムーズにかわせるかどうかにより、肩関節や筋肉の異常が発見できます。


■肩の病気

五十肩が代表的だが、臓器の疾患が原因の場合もある

チェックの最中に痛みが起きた場合は、肩の病気が疑われます。 肩の痛みを起こす病気で最もよく知られているのは五十肩(肩関節周囲炎)です。 激しい痛みを伴うものには、腱板が切れる腱板断裂や、腱板内に石灰が沈着して急性の炎症を生じる石灰性腱炎があります。 腱板断裂が起きたり、痛みがなかなか治まらない場合には、手術を行う場合もあります。

他にも、臓器の疾患が原因で、肩の痛みが起きる場合があります。臓器の炎症や臓器周辺の筋肉の緊張が影響して、痛みが起こると考えられます。 中には心筋梗塞や狭心症など、命にかかわる恐れのあるものもあるので、肩に痛みが起きたら、一度医療機関を受診することが勧められます。