プラークコントロール(歯石の除去)

現在でも、口の中の歯周病菌を完全に除菌する薬はありません。 正しいブラッシングなどで物理的にプラークを除去するのが歯周病の治療であり、予防でもあります。
歯石は、プラークがミネラルを吸着して石のように硬くなったものです。軽石のようにたくさんの穴があり、そこに細菌が棲み着いています。 歯石はスケーラーという器具で取り除きます。手用スケーラーで削り取る場合と超音波スケーラーで粉砕する場合があります。 除去した後は、細菌の毒素が付着した歯の表面をきれいにします(ルートプレーニング)。


■「プラークコントロール」とは?

歯磨きと歯科での処置でプラークを除去

『歯周病』は、歯周病菌の塊である「プラーク(歯垢)」が、 歯や歯周ポケットに付着することで起こります。最近では、プラークについての研究も進み、 プラークは「バイオフィルム(生物膜)」とも呼ばれるバリアを形成し、歯周病菌にとって有害なものが プラークの内部に入らないようにしていると考えられています。 歯周病患者の場合、口の中には、健康な人の10倍以上の数の歯周病菌がいるといわれています。 また、歯磨きをしないでいると、歯周病菌の数はさらに増えます。 原因となるプラークを口の中からできるだけ除去することが、歯周病の基本的な治療法であり、 予防法でもあります。 プラークを口の中から除去することを「プラークコントロール」といい、プラークのついた場所により、 患者自身が自分で行なったり、歯科で行なわれたりします。歯ブラシなどが届きやすい歯肉から上の 表面についたプラークは、患者自身が自分で取るようにします。歯肉より下の歯周ポケットの中のプラークは、 歯ブラシなどは届かないので、歯科で専門家に除去してもらいます。


●自分で行なうプラークコントロール

痛くない程度の力で歯と歯ぐきの両方を磨く

◆3つのポイントを守る

プラークは、毎日の丁寧な「歯磨き」で取ることができます。また、歯肉の血行をよくするために、 歯肉をマッサージする「歯茎磨き」も大切です。磨き方によっては、プラークが取れないばかりか、 歯肉が傷つくこともあるので、正しい方法で磨くことが大切です。 歯磨きは時間の長さではなく、質が大切です。きちんと歯磨きをすれば、口の中の細菌は劇的に減少します。 主な歯磨きの方法には、スクラッピング法バス法があります。 正しい歯磨き方はもちろん、歯並びに合わせた磨き方、歯間ブラシやフロスの使い方など、歯科で指導を受けましょう。 歯磨きの最も重要なポイントは、次の3つです。

▼歯と歯肉の境目に毛先を45度の角度に当てる
歯と歯肉の境目は、プラークのたまりやすいところです。この部分に毛先を当てることで、 プラークの除去と歯肉のマッサージを同時に行なうことができます。

▼歯ブラシを細かく横に振動させる
歯ブラシを大きく横に動かすと、毛先が歯肉や歯に当たらずプラークが残ったり、 逆に歯肉が大きくこすられて傷つくことがあります。

▼痛くない程度の軽い力で磨く
強い力で磨くと、歯肉が痛んだり出血します。逆に弱すぎると、プラークが落ちにくくなります。 一般に「200gの圧力」が適しているといわれますが、歯肉の状態によっては、その程度の力でも 痛みを感じることがあります。「痛くなく、気持ちが良い」を目安に磨いてください。 鉛筆を持つように、歯ブラシの柄の端を持つと、余分な力が入りにくくなります。

これら3つのポイントを守って、1本の歯の表裏を約20回ずつ磨きます。 すると、表裏含めてすべての歯を磨くのに、約10分かかります。 なお、歯ブラシは、植毛部が比較的小さく、硬すぎないものを使用します。 歯肉が腫れているときは柔らかいものを使い、腫れが改善したら、普通のものを使うようにします。 また、磨き残しを防ぐために、決まった順番で磨くことをおすすめします。

●食べたら磨く

食べ物や飲み物が口に入ると、口の中の細菌が増殖するので、「食べたら磨く」ようにします。 朝昼晩の食事の後だけではなく、間食をしたり、甘い飲み物を飲んだら、その後にも磨きます。 理想は、毎回丁寧に10分間磨くことですが、それが困難な場合は、最低1日1回は10分かけて 磨いてください。その他のときは、効率よくプラークを落とせる電動歯ブラシや音波歯ブラシを利用して、 短時間で磨くもの良いでしょう。
歯肉が後退して、歯と歯の間に隙間ができると、そこにプラークが付着して、歯周病が悪化します。 歯間ブラシやデンタルフロスなど、補助的な道具を使って、歯と歯の間も手入れしましょう。


■歯科で受けるプラークコントロール

スケーラーでプラークや歯石を取り除く

歯周病と診断された場合、歯科では歯科医や歯科衛生士によって、次のような専門的プラークコントロールが 行なわれます。

▼PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)
歯磨きでは取れにくい部分の汚れや食べ物や飲み物などでついたステイン(沈着した色素)などを、 専門の器具を使って取り除きます。 軽度の歯周病なら、正しい歯磨きとPMTCなどを続けていれば、完治します。 ただし、PMTCで汚れを取った後、歯磨きをしていても、約2~3ヶ月で汚れを取る前の状態に 戻るといわれており、歯周病が軽度なら3ヶ月に1度、中等度・重度なら1ヶ月に1度くらいの間隔で PMTCを行うのが適当です。健康保険は適用されます。

▼スケーリング・ルートプレーニング
歯や歯周ポケットにたまった歯石や歯垢を「スケーラー」という金具で取り除く、歯科治療の基本となる治療法です。 まず、スケーリングを行い、次にルートプレーニングでポケットの奥の歯垢や歯石、菌に汚染されて軟らかくなった 歯の表面などを取り除きます。ルートプレーニングは麻酔をかけて行うことがあります。 超音波を使ったスケーリングも盛んに行われています。 これらの治療には健康保険は適用されます。

▼洗浄する
歯周ポケットの深さが4mm以上あるときは、PMTCやルートプレーニングの後で、ポケット内に抗菌薬を 注入します。

レーザー光線を照射することによって、歯の表面の菌を殺したり、歯石を取ったり、歯肉の細胞を活性化させたり することもできます。スケーリングとして行ったり、フラップ手術と併用して行ったりします。
この他、歯磨きの指導も行なわれます。歯科でのプラークコントロールは、健康な人でも少なくとも1年に1回、 歯周病の人や以前歯周病だった人の場合は、3~6ヶ月に1回、受ける必要があります。 自分自身や歯科でのプラークコントロールによって歯周病が改善したら、その状態を維持していくことが大切です。 丁寧な歯磨きを続けながら、定期健診でチェックを受け、歯周病の再発を防ぐようにしましょう。