【質問】5回目のカテーテルアブレーション治療を受けるか悩んでいます

10年ほど前に「心房細動」と診断され、 これまでにカテーテルアブレーション治療を4回受けました。 治療後は快適に過ごせますが、3~4か月経つと息切れ、動悸、ふらつきなどの症状が現れるので、そのたびに希望して受けたのです。 現在も坂道を歩いたりすると心房細動の症状が現れます。 これまで何度か転院し、医師から「薬を服用しながら病気と付き合うのもよいのでは」と言われたこともありますが、根治は難しいのですか? 今、5回目のカテーテルアブレーション治療を受けるかどうか悩んでいます。
●71歳:男性


【答】

「心房細動」は 高齢者に多い不整脈で、 動悸やめまいを来し、しばしば頻脈となって心不全を引き起こします。 また、心房内で血栓ができ、脳の血管に流れて詰まると、 重症の脳梗塞の原因となります。 直接命に関わる不整脈ではありませんが、合併症のリスクがあるので、決して放置してはいけません。

心房細動の治療法として、最近はカテーテルアブレーションが普及しています。 肺静脈の異常な電気活動が主な原因なので、左心房につながる肺静脈周囲を高周波で焼灼、または冷凍バルーンで凍結し、 肺静脈からの電気信号を遮断(隔離)する「肺静脈隔離術」が基本です。 心房細動のタイプによっては、左心房後壁や上大静脈からの電気信号の隔離が追加されます。 また、肺静脈以外のトリガー(異常な電気活動の発生部位)があれば、焼灼します。 発症早期の「発作性心房細動」には肺静脈隔離が有効で、80~90%は治ります。 一方、発作が自然に治まらない「持続性心房細動」では、追加の隔離などを行っても治療の有効性は50~80%に、 1年以上続く「長期持続性心房細動」になると、さらに低下します。 これは心房細動が長く続くと、心房自体に構造的変化が生じ、前述の治療部位以外も関係してくるためです。

さて、ご質問ではアブレーションを4回行っても再発しているようですが、いくつか原因が推測されます。 まず、治療を行ってもまだ他にトリガーや不整脈が起きやすい部位が残っている可能性があります。 現在の診断技術でも、すべてを見出すことは困難です。また、医療技術は年々進歩していますが、4~5年前までは今ほどではなく、 これに術者の経験などが影響した可能性もあります。さらに、心房の持続期間が長く、発症メカニズムが複雑化していることも考えられます。 今後ですが、担当医とよく話し合い、技術的な問題であれば、遠慮せず、経験が多い他の施設を紹介してもらい、相談されるとよいでしょう。 治療が適切である場合は、アブレーション治療の限界と言わざるを得ません。 ただ心房細動は薬で適切に管理すれば、決して怖い不整脈ではありません。 カテーテルアブレーションの効果がなくとも、健康に過ごせると思います。

(この答えは、2017年7月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)