顎関節症

顎関節症』の治療では、最近、新しい治療法が行われるようになってきて、
これまでなかなか改善しなかった患者さんでも改善するケースが出てきています。

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■顎関節症とは?

痛み、開口障害、関節音などの症状が特徴

◆顎関節症の症状

『顎関節症』は、軽いものを含めると、一生のうちに2人に1人が経験するといわれるほど、身近な病気です。 以下の3つの症状のうち、1つ以上が当てはまる場合は、顎関節症の疑いがあるとされます。 しかし、Bの音がするという症状のみで、@やAの痛みや開口障害がない場合には、特に治療の必要はありません。

  • @口を開けると顎の関節や筋肉が痛む(動作に伴って痛みが出る)
  • A口が途中までしか開かない(指2本分くらいしか開かなくなる)
  • B口を開け閉めすると、カクカクと音がする(カクンカクン、ザラザラなどと表現されることもある)

◆顎関節の構造

口を開け閉めするときには、さまざまな筋肉と顎関節が複雑に働きます。 中でも特に重要なのが、「咬筋」「側頭筋」などの筋肉と、関節内部の「関節炎板」の働きです。 これらの筋肉に緊張や疲労が起こったり、関節炎板が変形したりすると、顎関節症の症状が現れます。

◆発症の要因と治療

これまで、顎関節症の要因は、主に「噛み合せの悪さ」にあると考えられ、噛み合せの調整が治療の中心となっていました。 しかし、最近では、顎関節症の発症には、噛み合せの悪さ以外にも、さまざまな要因が関係すると考えられるようになってきています。 他の要因としては、「ストレス」「歯ぎしり」などがあげられ、いくつかの要因が重なって、その人の筋肉や関節の耐久力を 超えた場合に、顎関節症を発症すると考えられています。 従って、治療は、要因のうち大きなものに合わせて行うことが大切です。 その患者さんにとって、噛み合せの悪さが大きな要因である場合は、噛み合せの調整が効果を示しますが、 そうでない場合には、噛み合せを調整しても、効果は期待できません。

Aさんのケース(下記参照)では、Aさんにとって、噛み合せの悪さは大きな要因ではなかったため、 噛み合せの調整を行っても効果が現れなかったと考えられます。現在では、ガイドラインでも、顎関節症の初期治療として、 噛み合せの調整は推奨されないとされています。噛み合せの調整で一度歯を削ってしまうと、元に戻すことができないため、 他の要因の治療を行うことが優先されます。

【”癖”を直して、顎関節症の痛みが解消】

Aさん(62歳・女性)は、10年ほど前から口を開けたときの顎の痛みに悩んでいました。 歯科を受診したところ、顎関節症と診断され、噛み合せの治療を行いました。 ところが、症状はよくならず、この10年間で4ヶ所以上の医療機関を回り、治療を繰り返していました。 最近、ある医療機関で、常に上下の歯が接触する癖(TCH)があることを指摘されました。 その癖を直したところ、数ヶ月ほどで痛みが無くなり、快適な毎日を過ごしています。

◆治療の基本

現在、顎関節症の治療で健康保険が適用されるのは、「マウスピース(スプリント)」を装着して、正しい噛み合せを作り、 筋肉の負担を減らすという治療と、「鎮痛薬」による痛みの軽減です。 また、ストレスに対して、リラクゼーション法が指導されたり、緊張を緩和する薬が使われたりする場合があります。





●TCHとは?

上下の歯を接触させていると、顎関節症が起こりやすくなる

【TCHは重要な原因】

最近、顎関節症を起こす要因として注目されているのが、「TCH」という、上下の歯を接触させている「癖」です。 本来、上下の歯が接触するのは、咀嚼、嚥下、会話などを行うときに限られ、通常、合計しても1日約20分以内に過ぎません。 それ以外のときは、唇を閉じていても、上下の歯は接触していないのが普通です。 ところが、TCHがあると、無意識のうちに1日何時間も歯を接触させています。 上下の歯を接触させると、それだけで咬筋や側頭筋などの筋肉や、関節に負担がかかるため、顎関節症が起こりやすくなると 考えられるのです。実際に上下の歯を接触させてみると、咬筋や側頭筋が活動することを確認できます(左のイラスト参照)。

【TCHのチェック法】

TCHがあるかどうかは、次の方法でチェックできます。@ABを行って、口の辺りに違和感があれば、TCHの可能性があると 考えられます。

  • @姿勢を正して、正面を向き、軽く目を閉じる。
  • A唇を軽く閉じる。
  • B上下の歯が接触しないように軽く離す。

また、口の中を観察して、TCHをチェックすることもできます。TCHがある人は、下あごに歯が押し付けられ、歯の跡がついています。 TCHがあれば、必ず顎関節症が起こるというわけではありませんが、顎関節症の患者さんには、高い割合で、TCHが見られます。 ある調査では、顎関節症の患者さんの約8割にTCHが見られました(左のグラフ参照)。


【TCHを矯正する】

最近、歯科ではTCHのある顎関節症の患者さんに対し、この癖を矯正するため、臨床心理学で使われる行動療法による治療が 行われ始めています。治療は次の3つのステップから成ります。現在のところ、この治療は、健康保険適用外で、 治療を受けられる医療機関も限られています。しかし、この方法は自分で行うことができますし、 そのために症状が悪化することはありませんから、まず自分で試してみることをお勧めします。

@癖が筋肉疲労を起こすことを自覚する
「上下の歯を軽く接触させて、離す」を行って、筋肉の変化を感じ、無意識の行動が自分を傷つけていることを認識する。

A癖に気付くためにメモを活用する
メモ用紙に「力を抜く」「リラックス」「歯を離す」などと書き、自宅や職場などの目の付く場所に貼る。 メモを見たら、1回力を抜く。行っているうちにメモを見ただけで、脱力できるようになる。

B上下の歯が触れた瞬間に離す
歯が接触すると気付くようになり、やがて接触したら、条件反射で無意識に離せるようになる。

個人差はありますが、早ければ2〜3週間で効果が現れます。効果が現れない場合は、医療機関を受診してください。 口を動かさなくても痛んだり、痛みが悪化する場合は、顎関節症以外の病気の恐れもあるので、早めに受診してください。

【痛みの対処法】

痛みに対しては、鎮痛薬のほか、「口を開ける」などのリハビリトレーニングを行います。 トレーニングのポイントは、痛みを怖がらず、痛みを感じるところまで口を開けることです。 繰り返すことで、徐々に口が開くようになるとともに、関節炎周囲の血流も改善され、痛みが和らぎます。 無理のない範囲で行ってください。
顎関節症の治療で、手術を必要とするケースは、数千例に一例と稀です。 手術や歯を削る治療を受ける前に、まずはTCHを疑ってみてください。





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