鬱やアルツハイマーの改善に「整腸」

難治の鬱やアルツハイマーが続々改善! 心の病を治すには、腸の状態を整えよ!


■病巣は人間の根っこである腸にあった!

以下の文章は健康雑誌『壮快』2013年4月号より転載させていただきました。
【文】 西諫早病院東洋医学センター長 田中康郎氏

日本の登校拒否児童(小・中学校)は約97万人。なぜこれだけ医療が発達しているのに、鬱や引きこもりを治せないのか。 アルツハイマーやパーキンソン病といった難病が、溢れているのか。私にはそれが不思議でなりませんでした。 しかし、その答えは、意外なところにありました。中国最高の医学書「黄帝内経」の中に、「治病泌求於本」という 言葉があります。これは「病気を治すには必ずその本質を求めよ」という意味ですが今の医療は本質に向かっていません。 ですから、病気を治しきれないのです。 西洋医学では、症状はイコール病巣です。皮膚に症状があれば病巣も皮膚にあり、皮膚を治療します。 ところが、東洋医学は違います。症状が皮膚にあっても、病巣は別にあると考え、それを追い求めます。 では、病巣(本質)はどこにあるのでしょうか。その多くは腸にあります。

私がそのことに気付いたのは趣味の盆栽でした。花や葉が枯れたとき、プロの庭師なら根腐れを疑います。 根っこは水や栄養を吸収するところ。そこが腐ったら、花も葉も幹も枯れてしまいます。 人間も同じです。栄養を吸収する腸は、木でいえば根っこ。その根腐れが、さまざまな病気の原因になっているのです。 鬱や引きこもりは、心の病といわれています。この心が宿るのも実は腸です。それは生き物の進化を見れば明らかです。 人間の祖先をたどると、ヒドラという腔腸動物に行き着きます。ヒドラは口と腸と触覚しかない動物で、 「お腹が空いた」と感じるのも、「栄養を取れ」と指示するのも腸です。 つまり、すべて腸が考え、指令を出しているのです。この機能は、そのまま私たち人間にも受け継がれています。 脳は後に腸から派生したにすぎません。 腸で考えて指令を出しているのは「基底顆粒細胞」です。基底顆粒細胞は舌や消化管の粘膜上皮、皮膚にも存在します。 細胞の先端に微絨毛の冠をつけ細胞の底にホルモンを含んだ顆粒を持っています。 腸の基底顆粒細胞は微絨毛が食べ物などの入ってきた外部の情報を細胞に伝えます。 また、5欲(食欲・性欲・睡眠欲・名誉欲・財産欲)を引き起こすホルモンを分泌しています。

代表的な認知症には、2つのタイプがあるといえます。1つは、脳の劣化による単純性認知症で、物や人の名前を忘れて なかなか思い出せない、いわゆる物忘れです。もう1つのアルツハイマー型認知症は、「金をとられた」「飯を食わせない」 といった5欲にまつわる症状が多いのが特徴です。それは、腸の基底顆粒細胞が劣化しているからだと考えられます。


●果物の柿と豚のラードは要注意

脳を頭蓋骨が守っているように、腸は腸内細菌に守られています。ビフィズス菌や乳酸菌などの有用菌は、 腸内で乳酸で酢酸を作って腸内を酸性に傾け、病原菌を抑えたり、有害物質を分解したりしています。 この腸の働きは、糠床にそっくり。糠床は細菌が野菜を発酵させて、美味しい漬け物を作ります。 同様に腸では細菌が発酵して腸の環境を整え、体にいい作用をもたらします。 漬け物の味が糠床で決まるように、人間の健康も腸という糠床しだい。 手入れを怠ると、糠床にカビが生えるように、腸も腸内細菌のバランスが崩れたり、大事な基底顆粒細胞が異変を起こしたりします。

腸の状態は、腹診で分かります。鬱、引きこもり、アルツハイマーなどの心の病は、腹診をすると、必ずおなかに違和感があります。 動悸、痛み、突っ張り感、くすぐったさ、ポチャポチャ感・・・・・・こうしたお腹の状態に応じて、漢方薬を処方すると、 腸の環境がよくなって心の病が改善していきます。

お腹を診て鬱やアルツハイマーが治るというと、信じられないかもしれませんが、そういう事例は多数あります。 鬱の患者さんは、8割は社会復帰できるくらいに回復しています。 また、腸を整えるために患者さんには次の3つを守ってもらいます。

▼よく噛んで食べる
野菜を適度な大きさに切って糠床に漬けるように、よく噛んで食べ物を吸収しやすい状態にすれば、腸への負担が減ります。

▼腹八分目にする
糠床は、たくさん漬け過ぎるとうまく漬かりません。お腹も食べ過ぎると消化不良を起こすので、食事は適量にとどめます。

▼腸を冷やさない
糠床も腸も冷やすと発酵が進みません。これは、単に冷たいものを食べないということではなく、 体を冷やす食材を食べないということ。果物の柿と豚のラードは特に冷えるので要注意です。

日本では「三つ子の魂、百まで」といいますが、腸の基底顆粒細胞や腸内細菌は、生まれて3歳ごろや離乳期までに完成します。 ですから、それまでは、味の濃いもの、刺激の強いもの、抗生剤などの薬を与えないことが大事です。 この時期の食事や育て方が、後に心の病の原因になることがあるのです。