生活療法(生活習慣の改善)

過敏性腸症候群では、ストレスや不安・緊張などの精神的要因が深く関係しています。 ストレスなどの情報が脳から腸に伝わると、軽度の炎症を起こして過敏になっている腸の動きに悪い影響を与えてしまいます。 そこで、これまでの生活を見直し、できるだけ心身にストレスを与えないようにすることが大切です。 具体的には、下記のような生活改善を行っていきます。


■過敏性腸症候群の治療①生活療法

規則正しい生活を心がけ、腸の働きによい食品を摂る

過敏性腸症候群は原因がよくわかっていないため根治は難しいのですが、症状を起こりにくくすることで、 病気と上手に付き合っていくことはできます。気分よく日常生活を送れるように症状を改善させることが治療の目標です。 治療では、まず「生活習慣の改善」と「食事療法」を行います。


●生活習慣の改善

無理のない範囲で次のような生活を心がけます。

▼規則正しい生活
不規則な生活は過敏性腸症候群の重大な原因になります。夜更かしをしたり、食事の時間がまちまちだったりすると、 自律神経やホルモンの働き、腸管神経叢の働きが乱れ、消化や排便の働きにも異常が生じます。 過敏性腸症候群を改善するためには、規則正しい生活によって、排便のリズムを取り戻すことが肝心です。

▼ストレスの少ない生活を心がける
仕事で緊張が続いたときや旅行にいったときなどに便秘をしたという経験はありませんか? このように、脳と腸とは自律神経によって結ばれているため、脳がストレスを感じると、自律神経のバランスがくずれて、腸に影響が出てしまいます。 しかし、現実の生活でストレスを完全になくすことは困難です。 休養をとったり、ストレスを解消できるような趣味を持つなどの心身をリラックスさせる方法を見つけて下さい。
ストレスにより、いったん過敏性腸症候群を発症すると、”またお腹の調子が悪くなるかも”と不安になり、 それが更なるストレスとなって悪循環に陥ります。この悪循環を断ち切るには”トイレにいつでも行くことができる” 環境を作るなどして、できるだけ不安を解消しましょう。 そのうち”慣れれば何とかなる”というように、ストレスを和らげる考え方ができるようになれば、症状が起こりにくくなってきます。
【関連項目】:『ストレス解消』

▼1日3食バランスよく食べる
食生活が不規則だと、腸の運動や排便のリズムも乱れてしまいます。まずは1日3食、規則正しく食べることが大切だと考えられています。 そのうえで、栄養のバランスを考えて食べましょう。また、下痢と便秘、それぞれの場合に、積極的に摂りたい食品と控えたい食品があります。 どちらの場合も控えたいのは、脂肪を多く含む食品や刺激物です。特に、下痢のある人は注意が必要です。 便秘のある人は、食物繊維の多い食品を積極的に摂りましょう。

▼適度な運動をする
適度な運動は全身の血行をよくして、胃腸の消化・吸収を高めたり、自律神経のバランスを整えて、ストレスを発散するのに役立ちます。 ウオーキングや水泳など、何でもかまいませんので、自分のできる範囲の運動を 習慣づけましょう。特にお勧めなのは「足踏み」。腸を刺激すると共に、脳の働きを活発にしたり、ストレスを解消したりする効果もあります。
【関連項目】:『運動不足解消解消』

▼睡眠
早寝早起きをし、睡眠を十分にとるようにします。睡眠不足は、ストレスの誘因になります。

▼トイレ
便秘型の人は、便意がなくても毎朝同じ時間にトイレに行くようにします。 便が出なくでも毎日続け、排便のリズムをつけましょう。 朝は食べ物が体内に入ることによって、腸は活動を開始するので、毎朝トイレに行く習慣を付けることによって、 脳や腸に排便の時間を知らせ、それによって排便のリズムを整えるのです。

●食事療法

ほとんどの場合は、ふだんの生活を見直して腸にやさしい生活を送ることが、一番の治療になります。 だだし、ストレスを感じるような食事制限をするのではなく、まずは「腸の働きによいもの」「控えたほうがよいもの」 を知ることが大切です。

▼規則正しい食生活をする
食事を時間どおりに規則正しく摂ることで、腸も規則正しく働くことができます。 特に、朝食を抜くと「胃・大腸反射」が起こりにくくなるといわれています。 朝食を摂る時間を確保し、きちんと食べることが大切です。 1日3食、きまった時間にきちんと食事をする習慣をつけましょう。

▼栄養バランスの取れた食生活をする
ファストフードや出来合いのお弁当ばかりを食べているとどうしても脂質や炭水化物が多く、 野菜や海藻類、豆類が少なくなりがちです。このような場合は、野菜や海藻類、豆類を使った副菜を加えるなどして、 栄養バランスを整える工夫が必要です。 また、暴飲暴食は腸に負担をかけますし、香辛料やアルコール、脂質を摂り過ぎると 腸を刺激してしまうので気をつけましょう。

▼腸の働きによいものを摂る
乳酸菌食品は、腸内細菌のバランスを整え、腸の働きを正常に近づけます。 ヨーグルトなら毎日200ml程度を摂るのが効果的とされています。 便秘型と混合型の人は、便秘解消のために食物繊維も積極的に摂りましょう。 日本人の食物繊維の摂取量は減っています。大人の1日に必要な食物繊維の摂取量は、 20~25gとされていますが、平均で14gしか摂れていないのが現状です。 野菜はもちろんのこと、食物繊維の量が多い食品は、きくらげ、干しひじき、 干ししいたけです。 このような食品をできるだけ多く食べて、必要な量の食物繊維を摂りましょう。
【関連項目】  『乳酸菌』 / 『食物繊維』

▼控えたほうがよいもの
消化しにくい脂質、腸を刺激する香辛料やアルコールは、摂り過ぎないように気をつけます。 なお、アルコール摂取がストレス解消になるという人は、担当医に相談し、 お腹の調子を見ながら酒量を調節してください。