急性膵炎の診断と治療



■急性膵炎の診断

問診、画像検査、血液や尿の検査を行う

激しい腹痛がある場合、救急車を呼ぶなどして、速やかに消化器の専門医がいる医療機関を受診してください。 急性膵炎の診断では、腹部超音波検査CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査などを行い、膵臓の炎症の有無を調べます。 また、血液検査尿検査を行って、消化液の濃度を調べます。 問診で症状を聞いたり、腹部を診察して、腹痛の状態を確認します。


■急性膵炎の治療

医療機関では、血液検査や尿検査、画像検査などで、膵臓の状態や炎症の広がりなどを調べます。 急性膵炎と診断されると、直ちに入院して治療を開始します。軽症の場合、多くは1週間程度の治療で治まります。 重症の場合は、ICU(集中治療室)などで全身状態を管理する必要があり、1~数か月程度の入院が必要になります。 急性膵炎と診断されると、主に次の治療が行われます。

●絶食と安静

膵臓を働かせないようにすることが重要であるため、入院して飲食を断ち、体の安静を保ちます。

●十分な輸液(点滴)

急性膵炎を起こすと、炎症によって血管が障害され、血液中の水分が急速に血管の外に漏れてしまい、 「脱水症状」を起こしやすくなるので、大量の水分を点滴で補給します。


●腸への栄養補給

急性期(絶食中)には点滴を行うことで、水分と栄養を補給します。 重症の場合は、比較的早い時期に鼻から胃や腸に管を挿入し、直接栄養を送り込みます。

●透析療法

急性膵炎によって腎臓の働きが低下すると、危険な状態を招きやすいため、透析の装置を使って余分な水分を排出します。

●薬による治療

急性膵炎の主な治療薬には、「たんぱく分解酵素阻害薬」「鎮痛薬」「抗菌薬」の3種類があります。 たんぱく分解酵素阻害薬は膵臓の膵液の活性化を抑える薬です。 腹痛などの痛みは、鎮痛薬を使います。時にはモルヒネなどの強い鎮痛薬を使うことがあります。 重症の場合は、炎症のある部分に起こりやすい感染症を防ぐために抗菌薬を使います。 絶食しているので、薬はすべて点滴します。

●胆石の治療

胆石が原因で胆管に炎症があったり、黄疸が見られる場合は、内視鏡を使って胆管の十二指腸への出口を切開して胆石を除去したり、 プラスチック製の細い管を胆管の中に入れて胆汁の流れを促します。


●重症の場合

「重症急性膵炎」と診断された段階で、重症の患者を24時間体制で治療する「集中治療室(ICU)」で呼吸器や循環器、腎臓などの管理を行います。 薬による治療のほか、壊れた膵臓の組織から血液中に流れ出した有害物質を取り除いて、 血液をきれいにしてから体内に戻す「血液浄化療法」を行うこともあります。 炎症や壊死による腐った組織が、膵臓の周りに溜まっている場合は、感染症を防ぐためにチューブや内視鏡を挿入して取り除きます。 重症の場合は、膵臓の一部が破壊され、機能しなくなるため、治療後に「糖尿病」や「消化吸収障害」といった後遺症が残ることがあります。 しかし、重症の場合を除けば、急性膵炎のほとんどは元通りに回復します。

●再発防止

急性膵炎は非常に再発しやすく、再発を繰り返すと慢性膵炎に移行するので、再発予防の取り組みが大切です。

▼禁酒
アルコールが原因の場合は、禁酒することが最も重要です。

▼胆嚢摘出
胆嚢をそのままにしておくと再発しやすいため、摘出することが勧められます。

▼禁煙
喫煙は急性膵炎を再発しやすくするため、禁煙が勧められます。

▼食事対策
暴飲暴食や脂肪の多い食べ物は控えます。

このほか、規則正しい生活を心がけ、睡眠不足やストレスは避けましょう。