ナルコレプシー

ナルコレプシーとは、夜十分に睡眠をとっていても、昼間に耐えられないほどの眠気に襲われる病気です。


■ナルコレプシー

夜十分に睡眠をとっているのに、昼間に「耐えられないほどの眠気」に襲われ、 居眠りしてしまう病気を「ナルコレプシー」といいます。 あまり聞きなれない病名ですが、世界的に見ると、1000~2000人に1人発症するという、 決して少なくない病気です。 ナルコレプシーは、知らない人からは「怠け者」などと誤解されることも多く、 社会生活に大きく影響する病気ですが、治療や生活の工夫によって、 症状に悩まされずに生活を送ることも可能です。


●ナルコレプシーの症状

前夜に十分に睡眠をとっていても、昼間に耐えられないほどの眠気に襲われるのが特徴です(誘眠発作)。 通常は眠気が起こらないはずの危険な作業中や試験の最中、会話中などにも、急に強い眠気に襲われ、 居眠りをしてしまいます。もう1つの大きな特徴は、「笑う」「びっくりする」「怒る」など、 大きな感情の動きに伴って、全身あるいは身体の一部の力が急に抜けることです(情動脱力発作)。 意識ははっきりしており、通常、長くても数十秒以内に症状は治まります。 そのほか、寝入りばなに現実なのか夢なのかわからないような、鮮明な怖い夢を見たり、 同じく寝入りばなに「金縛り」にあったりします。 これらの症状は、10歳代から始まるケースがほとんどで、「レム睡眠」が現れることが原因だと考えられます。

◆診断

「誘眠発作」と「情動脱力発作」があれば、「ナルコレプシー」と診断されますが、 その上で「睡眠潜時反復検査」が行われます。日中、2時間おきに床に付き、 照明を消してから寝付くまでの時間を調べます。通常は、10分以上かかりますが、 ナルコレプシーがあると8分以内に寝付いてしまいます。


■ナルコレプシーの原因

ナルコレプシーの原因は、まだはっきりとわかっていません。 しかし患者のほとんどが、白血球の血液型(HLA)が特定の型であるため、 発症には体質的な要因が関係していると考えられます。ただし、その型を持っていれば ナルコレプシーが必ず発症するというわけではありません。 また最近、しっかりと目覚めているのに必要な「オレキシン」という脳内物質が、 ナルコレプシーの患者では非常に少なくなっていることがわかりました。 これは、患者の異常な眠気と関係した変化として、注目されています。

●ナルコレプシーの治療

▼薬物療法
現在のところ、根本的に直すのは難しいのですが、薬で症状をコントロールすることで、日常生活を改善していきます。 睡眠発作には「精神刺激薬」が、情動脱力発作には「抗うつ薬」が用いられます。 怖い夢などが原因で夜の睡眠が不安定な人には「睡眠薬」が使われることもあります。

▼生活の工夫
ナルコレプシーの場合、昼休みなどに20分ほど昼寝をすると、その後2~3時間程度は眠気を軽減できます。 短い昼寝を規則的にとるとよいでしょう。 また、治療を受けていても、長時間の自動車の運転などをせざるを得ない場合は、 安全を考えて、医師とよく相談するようにしてください。
ナルコレプシー患者は授業中や仕事中に居眠りをしてしまうため、 「怠け者だ、緊張感がない、やる気がない」などと誤解されがちです。 周囲の人に病気のことを正しく伝え、理解と協力を求めることが重要です。