薬の名前 | 使い方 | 働き | 副作用 |
ドネペジル | 飲み薬:1日1回 | 脳の神経細胞の働きを活発にする薬。物忘れを一時的に改善するほか、 意欲の向上ややる気の回復にも効果がある。 | 吐き気や嘔吐、食欲不振、下痢などの消化器症状、脈が遅くなるなど。 興奮しやすく、攻撃的になることがある。 |
ガランタミン | 飲み薬;1日2回 | ||
リバスチグミン | 貼り薬:1日1回 | ||
メマンチン | 飲み薬:1日1回 | 脳の神経細胞を保護する薬。認知機能の低下を防ぐほか、気持ちを穏やかにする効果もある。 | ふらつき、眠気、頭痛、血圧上昇、便秘、食欲不振など。 |
■現在研究と開発が進められているアルツハイマー型認知症の治療薬
●アミロイドβを標的にして根本的治療を目指す
根本的治療薬は開発中で、海外でも実用化されていないのが現状です。 根本的治療薬としては、アミロイドβやタウたんぱくに関わる薬が研究されています。 主に研究が進んでいるのは、アミロイドβを標的にした次のような薬です。
◆γ-セレクターゼ阻害薬
アルツハイマー型認知症のある人の脳では、アミロイドβが凝集・蓄積し、それが神経細胞に悪影響を及ぼすと考えられています。 そこで、アミロイドβの形成を阻害する薬の開発が進められています。 アミロイドβは、「APP」というたんぱくが2ヵ所で切断されることで作られます。 切断する役割を果たしているのは、「γ-セレクターゼ」と「β-セレクターゼ」という2つの酵素でです。 「γ-セレクターゼ阻害薬」は、前者の酵素の働きを阻害して、アミロイドβの形成を阻害する薬です。
◆β-セレクターゼ阻害薬
APPを切断するβ-セレクターゼの働きを阻害することで、アミロイドβが作られないようにします。
◆免疫治療薬
私たちの体には、ウィルスや細菌など、体にとっての異物から体を守る「免疫」という働きがあります。 この働きを利用して、アミロイドβを攻撃、排除する「抗体」を作り、薬として使うための研究が進められています。 投与された抗体がアミロイドβに結合すると、それを目印として「貪食細胞」がアミロイドベータを取り除いたり、 アミロイドβが凝集・蓄積するのを阻害するように働きます。
◆キノリン誘導体
かつて整腸剤として使用されていた「キノホルム」という薬を改良した薬です。 アミロイドβが凝集し、神経細胞の外側に蓄積するのを抑える作用があるとされています。
■認知機能の維持・改善にはごく初期からの治療が必要?
最近、ある免疫治療薬の研究において、アルツハイマー型認知症のある人の脳へのアミロイドβの蓄積は阻害できたが、 認知機能の改善は見られなかったという結果が出ました。そのため、根本的治療薬を使って、 認知機能の低下を抑制したり改善したりする効果を得るためには、症状が現れる前のごく初期の段階からの治療が必要ではないか と考えられるようになってきています。現在このようなことを調べるために「J-ADNI」という研究が全国的に行われています。