喫煙と癌予防

タバコには、多くの発癌物質が含まれており、「喫煙」によって発癌のリスクは飛躍的に増大します。 「受動喫煙」によって、周囲の人がこうむるリスクも問題です。 「禁煙なくして癌予防なし」といわれるほど、喫煙のリスクは大きいのです。


■喫煙と癌の関係

喫煙により他の癌のリスクも高まる

日本人では、喫煙者が肺癌になるリスクは、非喫煙者の4~5倍にもなります。 それほど、タバコと癌は密接な関係にあるのです。 タバコを吸っていなければ肺癌にならずにすんだ、と考えられる日本人男性の数は、毎年約3万人と推計されています。 この数字は、日本のすべての肺癌の患者数の約7割に相当します。 ただ、この数字には受動喫煙が原因のケースは含まれていません。 現実には、タバコが原因となった肺癌は、もっと多いといえるでしょう。 喫煙の影響は、期間が長ければ長いほど、本数が多ければ多いほど、大きくなります。

タバコは、肺だけではなく、口やのど、鼻、膵臓、肝臓、腎臓、子宮など全身のさまざまな癌との関係が明らかになっています。 喫煙者が何らかの癌になるリスクは、非喫煙者の1.5倍です。 この数は、それほど大きくないように思われるかもしれませんが、 日本は、先進国の中で最も喫煙率が高い国で、喫煙者の割合は男性で約50%にも及びます。 つまり、日本人男性の約半数が1.5倍のリスクを抱えているといえるのです。


●最も確実な癌予防法「禁煙」

「禁煙」は、世界中の研究において「最も確実で、大きな効果が期待できる癌予防法」 だと認められています。 タバコには、発見されているだけでも、数十種類の発癌物質が含まれていることがわかっています。 この発癌物質が、体の細胞内にある遺伝子を傷つけ、癌を引き起こします。

◆受動喫煙

喫煙は、喫煙者本人だけでなく、周囲の人たちにも健康被害を与えます。 他人のタバコの煙を吸うこと(受動喫煙)でも、肺癌にかかる確率を上げ、 閉経前の女性が乳癌にかかる確率を上げるであろうとされています。 非喫煙の既婚女性(およそ3万人)を約13年間調査したところ、夫が喫煙者のグループは、夫が非喫煙者のグループより 肺腺癌にかかる確率が高く、しかも、夫の喫煙本数が多いほど、その確率は高くなっています。 別の分析では、家庭や職場で受動喫煙のある非喫煙者で閉経前の女性は、受動喫煙のないグループより、 乳癌にかかる確率が約2.6倍高かったことが報告されています。 最近では、この受動喫煙も大きな問題になっており、公共の場での分煙化、禁煙化が世界的に進んでいます。


◆喫煙+飲酒

喫煙しながらお酒を飲むと、適量の飲酒でも、食道癌をはじめ、さまざまな癌にかかる確率が高くなるという報告があります。 その理由はまだよくわかっていませんが、 「アルコールが体内に入ったときに働く酵素が、タバコの煙に含まれる発癌物質を活性化させるため」といわれています。 受動喫煙でも、同じような影響のある可能性があるため、 飲食店などでお酒を飲むときには全面禁煙の店を選ぶなど、極力、タバコの煙を避けるようにしましょう。 欧米の多くや、アジアの一部の国・地域では、公共の場を禁煙にする法律などによって、健康被害を防ぐ措置がとられています。

◆喫煙によるその他の健康被害

タバコの悪影響は癌だけではありません。心筋梗塞や脳卒中、糖尿病などの病気や、胎児への影響などとの関係が認められています。 こうした多くの病気なども、禁煙することでリスクを下げることができます。 特に心筋梗塞や脳卒中のリスクは禁煙するとすぐに軽減します。 これは、ニコチンによる血管の収縮が起こらなくなるためです。


●禁煙の効果・メリット

肺癌の場合、喫煙者が罹患する確立は非喫煙者の約4.5倍です。 ところが、1~9年間禁煙した人は約3倍、10~19年間禁煙した人は約1.8倍と減少し、 20年間以上で非喫煙者と同じレベルに下がります。 したがって、禁煙を続けることで、肺癌になる可能性は確実に下げられるのです。 禁煙してから罹患の確率が下がるまで、癌の場合は少し時間がかかりますが、 心筋梗塞の場合にはそれより早く確率が下がります。 公共の場を禁煙にする法律が施行されると、その地域では数年以内に急性心筋梗塞が1~2割減少するという報告もあります。