腸の善玉菌を増やす『育菌』⑦腸内環境と肥満

太りやすい体質は腸からきている・・・・・。
これは腸内細菌を研究している研究者にはあたりまえのことなのですが、ほとんどの人はこうした認識を持っていません。 そのため、便秘に無頓着で、何日も排便がないまま放置しています。すると、腸内環境が悪くなって、太りやすくなります。 ここでは、腸内環境と肥満の関係を述べていきます。


■善玉菌の増殖を助ける

腸内環境が腸の病気に関与することはよく知られていますが、最近、全身的な疾患にも大きな影響を与えていることが わかってきました。アレルギー、乳癌、肥満、アルツハイマー病などは、腸内環境と深い関係があります。 とりわけ注目されているのが、肥満です。米国の大学が腸内細菌のDNA解析をしたところ、 「痩せ」「肥満」 で腸内細菌の型が違うことや、太っている人が痩せると、 痩せた人の腸内細菌に近づくことなどがわかってきました。 肥満は、糖尿病やメタボリックシンドロームとも深い関係がありますから、腸内環境で肥満を解消できれば、画期的です。 そして、腸内環境を変えられるのは食べ物だけです。つまり、腸内細菌にどんなエサを与えるかです。 もうお分かりでしょうが、それは次の2つです。

①食物繊維をしっかり摂る
一般に大便の成分は8割が水で、2割が固形分です。その固形分の3分の1が食べカス、3分の2が剥がれた腸の粘膜や腸内細菌です。 食べカスの材料は食物繊維ですから、便を作るには食物繊維が必要です。 食物繊維を摂って便のカサが増えると、腸内の有害物質が吸着・排出されて、腸の中がきれいになります。 また食物繊維は善玉菌のエサになり、善玉菌を増やして腸内環境をよくします。 食物繊維は野菜に豊富ですので、肉に偏った食事では必然的に野菜不足になります。 それが腸内環境を悪化させます。さらに、動物性脂肪は悪玉菌のエサになり、悪玉菌をのさばらせる結果になります。 この悪玉菌が出す毒性物質が増えると、エネルギー代謝が影響を受けて、太りやすくなるのです。

②ヨーグルトを1日300g食べる
ヨーグルトを食べても、残念ながらヨーグルトの中の乳酸菌やビフィズス菌は、腸の中に棲み着きません。 腸にいたとしても、3日から1週間くらいです。しかし、腸の中で発酵して有機酸を作り、腸内を酸性にしてくれます。 それがもともと棲んでいる善玉菌の増殖を助け、悪玉菌の活動を抑制します。 ですから、結果的に善玉菌が増えて、腸内環境がよくなるのです。

こうして食生活を改善し、さらに運動をすると、排便が驚くほどよくなります。ウォーキングや階段の上り下りをすると、 骨盤と腸の間にある腸腰筋が鍛えられ、便を押し出す力が強くなるのです。 痩せるために、食事を摂らない人、ヨーグルトだけを食べる人がいます。これは全く逆効果です。 ご飯や野菜、特に根菜類、イモ、キノコ、海藻類などを食べなければ、便が作られません。 むしろ便秘の原因になり、腸内環境を悪化させてしまいます。