【質問】「慢性膀胱炎」は症状がなければ、治療しなくても大丈夫ですか?

若い頃に時々、「膀胱炎」になっていました。 7年前から2年間は頻繁に膀胱炎になり、造影剤を使用したエックス線検査や膀胱鏡検査も受けましたが、特に異常はありませんでした。 昨年になって、膀胱炎のような症状が出たので近所のクリニックを受診し、「フロモックス」を4日間飲み、症状がなくりました。 しかし、9月に受けた尿検査で白血球が増えていることがわかり、「慢性膀胱炎になっている。痛みや出血があったら受診するように」と言われました。 それまでは、特に治療しなくてもよいのでしょうか。
●80歳・女性


【答】

女性だったら、「膀胱炎」を経験したことがないという人の方が少ないでしょう。 女性では体の構造から、「急性膀胱炎」が非常に身近な病気であることが知られています。 男性の尿道が約20cmあるのに対して女性の尿道は3~4cmの長さしかなく、外尿道口が膣口や肛門に近い位置にあるため、 細菌が皮膚から尿道を通って膀胱に入りやすいのです。原因となる細菌の過半数は大腸菌です。 通常は多少の細菌が入っても体の抵抗力があり、排尿で洗い流され、膀胱炎を起こさずに済みますが、 過労や冷え、尿の極端な我慢のし過ぎがきっかけになって細菌が増殖すると、排尿痛、頻尿、残尿感、尿混濁、血尿などの症状が起こってきます。

急性膀胱炎の発症には年齢的に2つの山があります。 1つは若いときで、性交渉の開始などがきっかけになり、「新婚(ハネムーン)膀胱炎」という言葉があります。 性交渉の後は必ず排尿してから眠りに就くようにという助言は、尿道に入った細菌を排尿で洗い流す意味があります。もう1つの山が老年期の女性です。 若いころに時々膀胱炎になり、老年期に入ってまた数年頻繁に繰り返したという経過はよくあるものです。 膀胱炎症状を繰り返すときには、 「尿路結石」「膀胱癌」などの疾患が隠れていないか調べる必要があります。 排泄性腎盂造影(造影剤を注射して尿路を調べるエックス線検査)、膀胱鏡検査をきちんとされたのは安心でよかったと思います。

今回、膀胱炎症状が抗菌薬の内服でよくなったのに、その後の尿検査で白血球が多く出ていたのには、2つの原因が考えられます。 1つは老年期で膀胱の収縮力が低下し、残尿があるという状況です。排尿した後に尿が残っていると、膀胱内で細菌の増殖が継続しやすくなります。 もう1つは、尿の採り方の問題です。外尿道口を消毒し、管を入れて膀胱内の尿を摂れば正確ですが、痛みを伴うので、通常はカップで尿を採ってもらいます。 女性の場合は尿が膣口に触れ、白血球や細菌が混入することがしばしばあります。 いずれにせよ、抗菌薬を長期使用するのは、耐菌性の発生という点で望ましくないので、一定の検査が済んでいれば、 痛みや出血があったら受診するという現在の方針でよいと思います。

(この答えは、2017年4月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)