不整脈の「薬とカテーテル治療」

不整脈の「薬とカテーテル治療」について述べます。

■不整脈が起こる原因

原因がわからない場合は、生活習慣の見直しが必要

「不整脈」には、大きく分けて、心臓の収縮と拡張のリズムが速くなる 「頻脈性不整脈」と、 遅くなる「除脈性不整脈」があります。誰でも緊張や運動をすると一時的に脈拍が速くなり、 睡眠中などは脈拍が遅くなります。こうした正常な体の反応によるものを除くと、不整脈は次のような原因で起こることがわかっています。

▼心臓自体の異常
狭心症や心不全がある場合に現れることがありますが、こうした病気がなくても現れる不整脈もあります。 不整脈の最も大きな原因です。

▼全身の病気
高血圧や肺の病気など、心臓以外の全身の病気の兆候として、不整脈が現れる場合があります。

▼薬の副作用
気管支喘息や肝臓の病気の治療薬、抗血小板薬などでは副作用として頻脈が起こる場合があります。

▼神経・ホルモンの異常
神経やホルモンの異常でも不整脈が起こることがあります。例えば、甲状腺ホルモンが過剰になる「甲状腺機能亢進症」 では頻脈が現れ、甲状腺ホルモンが低下する「甲状腺機能低下症」では除脈になります。

不整脈の原因がわかっている場合は、まずその原因への対策を取ることが大切です。 しかし、原因がはっきりしないものも数多くあります。そのため、治療では日常生活を見直すことも必要です。


●日常生活での留意点

まず、喫煙や過剰な飲酒は避けます。また、カフェインや刺激物も不整脈を誘発することがあるので、コーヒーやお茶、 香辛料などを摂り過ぎないようにします。激しい運動、排便時の息み、入浴の際などの急な温度変化は、心臓に負担をかけ、 不整脈を悪化させることがあるので要注意です。 また、肥満や高血圧は不整脈と関係すると考えられていますから、 その改善にも取り組みます。不整脈には軽症のものもあれば、重症のものもあります。 日常生活の見直しで改善する不整脈もありますが、それ以外の場合には「薬物療法」「カテーテルアブレーション」 「ベースメーカーなど」による治療を受ける必要があります。これらの治療法は、不整脈の重症度やタイプなどによって選択されます。


■薬物療法

薬物療法は不整脈のタイプいよって用いられる薬が異なる

不整脈の薬は「不安を和らげる薬」「発作を止める薬」「脈拍を遅くする薬」「脈拍を速くする薬」「血栓を予防する薬」 の5つに大別されます。

▼除脈の場合
除脈を改善するために、脈拍を速くする薬が使われます。

▼頻脈の場合
頻脈による不安から症状が悪化している場合があるため、まずは不安を和らげる薬が使われます。 頻脈の改善には、脈拍を遅くする薬が用いられますが、急いで発作を抑える必要がある場合は、発作を止める薬が使われます。

●心房細動の場合は血栓の予防が重要

頻脈の一種である心房細動があると、心房内に血液が滞って血栓ができやすくなります この血栓が血流によって脳の血管に運ばれて詰まると、脳梗塞を起こす危険性があります。 それを防ぐには、血栓を予防する薬を用いて、血栓ができるのを抑えることが必要です。

心房細動に次のような状態がある人は特に注意が必要です。「心不全がある」「高血圧がある」「75歳以上」「糖尿病がある」 を各1点、脳梗塞を起こしたことがある」を2点とし、該当する項目の合計が2点以上だと脳梗塞を起こす危険性が非常に高いので、 血栓を予防する次のような薬が必要になります。

▼ワルファリンカリウム
以前から使われている薬で、服用量の調節が重要です。食べ物や他の薬の影響を受けやすいため、効果が弱くなったり、 強くなったりすることがあります。

▼ダビガトラン、Xa因子阻害薬
ダビガトランは2011年に、Xa因子阻害薬は2012年に登場した薬です。どちらも一定の服用量で効果が期待でき、 食事などの影響もほとんど受けません。それだけ使いやすい薬といえます。 血栓を予防する薬は、出血が起こりやすくなるので注意が必要です。ダビガトランやXa因子阻害薬の場合、 消化管出血を起こすリスクがあります。腎機能の低下している人や高齢者では出血の危険性が高まるため、 慎重な使用が必要とされています。

■カテーテル治療は、頻脈の根治を目指す治療法

頻脈に対しては、薬物療法以外にカテーテルを使った治療が行われることもあります。太ももの付け根の大腿静脈などから カテーテル(細い管)を数本挿入して異常のある部分を焼灼する、「カテーテルアブレーション」という治療法です。 心房細動の場合、異常な電気信号の発生部位は、左心房とつながる肺静脈と深い関係があるとされています。 従って、左心房と肺静脈との接合部分をカテーテルの先端の電極で焼灼し、心房細動を起こす異常な電気信号を遮断します。 カテーテルアブレーションは、WPW症候群などの「発作性上室性頻拍」では90%以上の根治率ですが、「発作性心房細動」では 治療後約2年の経過観察では、治療を受けた患者さんの70~80%で症状が抑えられていました。