COPD(慢性閉塞性肺疾患)の急性憎悪の予防

急性憎悪を引き起こす風邪などの感染予防に気をつける

COPD(慢性閉塞性肺疾患)』は、長く付き合っていく病気です。 風邪などをきっかけにしばしば急激に悪化する(急性憎悪)ので、日ごろから感染予防の注意が必要です。 また、「運動療法「栄養療法」なども継続しましょう。

COPDの患者は、急激に呼吸困難などの症状が悪化し、入院治療が必要な「急性憎悪」を引き起こすことがあります。 急性憎悪を引き起こす誘引にはさまざまなものがありますが、 多くの場合、ウィルスや細菌による風邪などの感染症がきっかけで起こります。 COPDが軽症でも、深刻な急性憎悪を起こすことがあります。また、COPDが重症の場合には、急性憎悪の程度が軽くても症状が重くなってしまいます。 深刻な急性憎悪は、命に関わることもあるので、予防が何より大切です。


■急性憎悪のサイン

急性憎悪の注意が必要な”危険なサイン”には、次のようなものがあります。

▼発熱
38℃以上の発熱がある。

▼痰の変化
「量が増えた」「切れにくい」「色が濃い」「色が変わった」など、痰の変化があった。

▼息切れの増強
呼吸がしにくくなったり、いつもより「ゼーゼー」と苦しい。

▼むくみ、尿量減少、体重増加
むくみがあったり、尿量が減少して、急に体重が増加した。特に1~2日で体重が2~3kg増えたような場合には、 心不全を起こしている恐れもあるので、すぐに受診する。

COPDの患者は、”風邪だから”と自己判断するのではなく、危険なサインがあったら、すぐにかかりつけ医に 相談するようにしましょう。日ごろから「変だ」と思ったときにすぐ相談できるかかりつけ医を決めておくことが大切です。


■COPDの急性憎悪を予防するには

日ごろの注意としては、次のことに気をつけましょう。

▼手洗いやうがい
帰宅時には手洗いやうがいを励行しましょう。また、風邪などの感染予防のため、タオルは家族と共有しないようしましょう。

▼十分な睡眠
規則正しい生活を送り、睡眠時間を十分に気をつけましょう。

▼部屋の換気、清掃
「大気汚染」だけでなく、部屋の空気が汚れているのも呼吸器にはよくありません。 換気や清掃は定期的に行います。

▼予防接種
インフルエンザは風邪よりも症状が重いので、いっそうの注意が必要です。 インフルエンザの流行の前に、インフルエンザワクチンの接種を受けて起きましょう。 また、風邪の後などに起こる肺炎の主な原因は、「肺炎球菌」で、それを予防する肺炎球菌ワクチンの 予防接種を受けることも勧められます。

●呼吸の仕方

息切れがする場合、呼吸にリズムをつけると歩きやすくなります。
・「吐く」ほうを長く
・口すぼめ呼吸で
・自分に心地よいリズムで
・リズムを崩さないように

▼歩くときの例
一歩ごとに鼻から息を「吸う、吸う」、口から息を「吐く、吐く、吐く」というようにリズムをつける。 「吸う」と「吸う」の間は息を止めない。

▼階段を上がるときの例
立ち止まって、鼻から息を「吸う、吸う」、一段ずつ上がりながら、口から息を「吐く、吐く、吐く」、 立ち止まって「吸う、吸う」、上がりながら「吐く、吐く、吐く」というように、 「吐く」時に動作を行う。

●運動療法

息苦しさが続くと、外出がおっくうになりがちです。運動不足になると、力が弱くなって、ますます動きにくくなります。 その結果、寝たきりになる恐れもあります。また、硬くなった筋肉をほぐす軽い運動を日常生活に何回も取り入れましょう。 運動のポイントは、「安全であること」「継続できること」「楽しめること」です。 適切な運動の強度や量は患者によって異なるので、事前に必ずかかりつけ医に相談してください。 安全で続けやすい運動の例が「ウォーキング」です。ゆっくりと、20分くらい歩くことを目標にするとよいでしょう。 歩きやすい靴や服を選び、荷物はリュックサックに入れ、両手を開けるようにします。 息切れする場合は、自分にあったリズムをつけるように工夫します。 家の中でも、積極的に体を動かすようにしましょう。


●栄養療法

太りすぎもやせすぎも、肺の機能にはよくありません。標準体重を維持するようにしましょう。 COPDが進行すると、やせてくる傾向がありますが、やせすぎると、筋力が低下したり感染症にかかりやすくなったり するので、やせすぎないように注意します。やせぎみで、COPD以外に原因がない場合は、次のようなことに 注意しましょう。

  • 高エネルギーの食品を摂る
  • 良質のたんぱく質をしっかり摂る
  • 小食の場合は、食事の回数を増やしたり、サプリメントなどで補う
  • 間食で栄養の補充をする

なお、COPDに加えて、血糖値や、コレステロール値が高い場合などは、かかりつけ医に相談してください。