アルコール依存症度のチェックと予防

飲酒習慣に問題はありませんか?
飲酒量が増えれば、「アルコール依存症」になる危険性が高まります。


■「アルコール依存症」の兆候

飲酒する人は誰でも依存症になる可能性がある

●アルコール依存の兆候に注意

アルコールには、ある種の薬物と同様に依存性があるので、お酒を習慣的に飲んでいる人は、 誰でも「アルコール依存症」になる可能性があります。 最近は、アルコール依存症のリスクが高まる飲み方や飲酒量がわかってきており、飲酒量を減らすための効果的な方法についても、 世界中で研究が進んできています。依存症が疑われる場合や、依存症にまで至っていなくても、 飲酒に関して何らかの問題がある場合は、早く気付き、問題を改善していくことが大切です。 アルコール依存症が始まっているかどうか、その兆候のチェック項目を下記にまとめました。 当てはまる項目が多いほど、アルコールに依存している可能性が高いといえます。 チェックしながら、自分のお酒との付き合い方を振り返ってみましょう。


▼飲酒量が多い
アルコールへの耐性が上がって、お酒に強くなっている状態です。たくさん飲まないと酔うことができないため、 酔いを求めて多量に飲んでしまいます。飲酒量が「多量飲酒」の域に達していると、肝臓や脳を始め全身への影響が大きく、 アルコール依存症になるリスクも高まります。多量飲酒の域に達していなくても、以前に比べて飲酒量がかなり増えた場合には、 注意が必要です。

▼飲むスピードが速い、つまみをほとんど食べない
アルコールの血中濃度が急激に上がるような飲み方で、「早く酔いたい」という気持ちが強まっていることを示します。 アルコールの血中濃度が高い状態が長く続くと、やはり全身への影響が大きく、脳の委縮を招くリスクも高くなります。

▼二日酔いをよくしている
飲酒量が、アルコールを代謝する能力を超えていることを示しています。 二日酔いの症状を抑えようとして、”迎え酒”を飲むことが、「連続飲酒」の始まりになることがよくあります。

▼記憶がなくなる
一時的に記憶がなくなり、あとで飲酒時の状況を思い出せなくなります。これは、アルコールに対する依存を示す兆候の一つで、 飲酒時にアルコールの血中濃度がかなり高かったことを示しています。英語で”ブラックアウト”と呼ばれることもあります。

▼酔い方がおかしくなった
飲酒中に急に言動が変化し、「目が据わる」「怒る」「暴言を吐く」「暴力的になる」などが見られることがあります。 多くの場合、その間の記憶も失っています。なかには最初からそのような酔い方をする人もいますが、 通常はアルコールに対する依存が進んでから現れる兆候と言えます。

▼一人でよく飲む
仲間との飲酒では物足りず、さらに一人で飲んだり、他の人に干渉されずに思う存分飲みたいために、一人で飲んだりします。 アルコールに対する依存が進んでいる可能性が高い状態です。

●依存につながる考え方

アルコールに対する依存が進むと、お酒を飲むことを正当化しようとして、「自分は酒に強い」「いくら飲んでも、少し寝れば すぐに覚める」「自分はほかの人より肝臓が強い」「飲んで人に迷惑をかけたことはない」「周りは自分の飲酒問題を大げさに言う」 「自分の金で酒を飲んで何が悪い」というような考え方をすることがよくあります。 1つでもこのような考え方をするようになると、「お酒を飲みたい」という気持ちが強まっていると考えられます。 今後さらに酒量が増えて、依存が強まっていく恐れがあります。お酒との付き合い方を振り返り、今のうちに考え方や 飲み方を変えることが大切です。


■お酒の飲み方を変える

日記をつけることなどで、自分の飲酒行動を振り返る

まずは、アルコールへの依存が心身に与える悪影響を知ることから始めます。 WHO(世界保健機関)は、アルコール依存に関して、「体内に入ってアルコールや、アルコールが肝臓で代謝してできる アセトアルデヒドが、60以上の病気とけがを引き起こす」と警告しています。 また、アルコール依存は、心の病気を合併しやすく、特に鬱を合併するケースが多いとされています。 自殺とのかかわりにも注意が必要です。アルコールには精神的な抑制を外す働きがあるため、 自殺願望を持っている人がお酒を飲むと、抑制が外れ、衝撃的に自殺をしてしまうことがあります。 アルコールに対する依存が進むと、不眠も起こりやすくなります。 アルコールには催眠作用がありますが、眠りを浅くする作用もあるため、早く目が覚めやすくなります。 寝酒が習慣化するなど、アルコールに頼り過ぎると、、徐々に飲酒が増える危険性もあります。

●飲み方を変えるために

飲酒に何らかの問題がある場合は、自分の飲酒行動を見直すために、「飲酒日記」をつけることが勧められます。 手帳の片隅にでもよいですから、毎日の飲酒量と、どんな時に飲んだかを記しておきましょう。 また、その際に、次のようなことを実行すると効果的です。

▼飲酒の具体的な目標を立てる
あまり目標が高いと、実行することが困難になります。毎日「6ドリンク」のお酒を飲んでいた人なら、 まずはその2/3の量に減らす、または週に2回はお酒を飲まない”休肝日”を作るなど、実行可能な目標から始めます。

▼自分にとっての危険な場面を整理する
宴会、休みの前日や週末、不安な時、暇な時、寂しいときなど、自分がどんな時に飲んでいるかを整理してみます。 そして、自分にとって危険がある状況を、飲酒せずにやり過ごすことができるようにしていきます。

▼対策を立てる
目標を守るための対策を立てます。「仕事には自動車で行く」「家族に飲む量を減らすことを宣言する」 「宴会は週1回にする」など、自分にとって有効な対策を考えましょう。

▼飲酒量を減らして得られる成果をリストアップする
「不眠が改善される」「飲酒に使っていた分のお金がたまる」「病気のリスクが減る」「人間関係が改善される」 「家族が喜ぶ」など、飲酒量を減らして得られる成果を書きだします。 アメリカで行われた研究では、このような方法によって、「飲酒行動が改善され、飲酒量が半分近くに減少した状態が 4年間維持できた」という報告があります。日本でも同種の研究が行われており、効果がわかってきています。

●コントロールできるうちに改善を

アルコール依存症になると、自分の健康を損ねるだけでなく、仕事や家庭を失うなど、人間関係が崩壊したり、 周囲の人を巻き込むことになったりします。そうならないように、コントロールできるうちに、飲酒量を減らしてください。
また、アルコール依存症になった場合は、「断酒」が必要です。依存症の疑いがある場合は、 ためらわずに専門の医療機関を受診してください。患者さんの依存の程度に合わせた、適切な治療を受けることが大切です。