大腸の検査『便潜血反応検査』

健康診断で行われる大腸の検査は、主に大腸癌の早期発見を目的にしています。 検査ではまず、便潜血反応検査が行われ、その結果が陽性であれば、 注腸造影検査(大腸の造影エックス線撮影)、大腸内視鏡検査などの精密検査を行って原因を調べます。


■大腸の検査

健康診断で行われる大腸の検査は、主に大腸癌の早期発見を目的にしています。 集団検診では、まず便を調べて、肉眼では見えないような血液の混入を見つける『便潜血反応検査』が行われます。 大腸癌はかなり進行しないと自覚症状がありません。 早期発見には、便の検査で潜血反応が見られたら、精密検査を受けて原因を調べることが大切です。


●便潜血反応検査

便の検査のうち、一般の健康診断で行われているのが、消化管で出血が起きていないかを調べる 『便潜血反応検査』です。消化管で出血があっても、量が少ないと肉眼ではわかりません。 そこで、肉眼では見えない微量の血液が便に混じっていないかを、「便潜血反応検査」で調べます。

◆便潜血反応検査の検査方法

検査法には「化学法」と「免疫法」があり、わかることの違いから使い分けられます。

▼化学法
食道から肛門までの消化管での出血で「陽性」の反応が出ます。ただ、人間以外の血液にも 反応するため、食べた肉や魚のせいで陽性になることもあります。
▼免疫法
人間の血液の成分に特異的に反応する検査で、この検査で「陽性」の場合は、 大腸での出血が疑われます。胃での出血は、多量でないと検出されません。

現在、健康診断では、大腸癌の早期発見を主な目的に、通常、免疫法で行われています。 癌やポリープがあるところを便が通ると、こすれて出血するので、この微量な血液を調べます。 精度を高めるために、最近では、日を替えて便を2回採取する「2日法」が一般的になっています。


◆便潜血反応検査の検査結果の判定

便潜血反応検査の結果は、「+(陽性)」「-(陰性)」などのように判定されます。 「-(陰性)」の場合は、出血が確認されなかったということなので、 翌年にまた便潜血反応検査を受ければよいでしょう。 「+(陽性)」の場合は、大腸のどこかで出血が起きている可能性があります。 大腸からの出血は、潰瘍性大腸炎、腸結核、赤痢アメーバの炎症、などでも起こりますが、 こうした病気では、普通、自覚症状が現れます。 症状のない人を対象とした健康診断では、癌やポリープなどの可能性を疑います。 大腸の病気でないのに陽性になるケースとしては、最も多いのが痔です。 便潜血反応検査が陽性であれば、「注腸造影検査」や「大腸内視鏡検査」などの精密検査を行って原因を調べます。

◆便潜血反応検査で病気が発見される確率

健康診断の便潜血反応検査で見つかる腸の異常は、主に大腸の内壁に何らかの隆起が生じている場合ですが、 それが癌かポリープかの区別まではつけられません。 また、便潜血反応が陽性の人のうち、癌が発見されるのは5%以下で、30~40%にポリープがあり、 残る60%ほどは病気がありません。陽性であっても癌やポリープのない「偽陽性」も多いのです。 一般に、隆起が2cm以上の大きさになるとほぼ陽性反応が出るといわれています。 大きなものほど、癌である可能性も高いといえます。便潜血反応で大腸癌を発見できる確率は、 一般に、進行癌で約80%、早期癌で約50%といわれます。 癌が小さいうちは、癌があっても陽性反応が出ないで陰性と判定される「偽陽性」が少なくありませんが、 毎年検査を受けていれば、治療できないような進行癌で見つかることは避けられるでしょう。


●大腸癌を早期発見するには?

大腸癌の早期発見のためには、便潜血反応が陽性といわれたら、 注腸造影検査か大腸内視鏡検査を受けることが大切です。

◆精密検査の選び方

最近の大腸癌検診の傾向としては、精密検査は内視鏡検査が中心となっています。 注腸造影検査でポリープなどが見つかっても、結局、内視鏡検査を受けることになるため、 初めから内視鏡検査を行った方がよいという意見が多くなったからです。 ただ、検査法には一長一短があります。注腸造影検査は大腸を一度に撮影できるので、 全体が見え、しかも記録に残るため、複数の医師が検討したり、後から見直すこともできます。 内視鏡はどうしてもカメラの近くを見ることになり、検査中に病変を見つけて撮影をしないと、 記録にも残りません。検査を行う人による差は、内視鏡検査の方が大きいといえるでしょう。 また、内視鏡を使えば、ポリープなどが見つかったときに切除まで行えるのがメリットですが、 施設によっては行っていないところもあります。施設を選ぶ際には、そうした点も確認したほうがよいでしょう。

◆内視鏡検査を受けた後

精密検査で大腸内視鏡検査を受けた場合、それで異常がなければ、毎年、内視鏡検査を受ける必要があるわけではありません。 普通、5年くらいは便潜血反応検査だけを毎年受ければよいでしょう。 ポリープが見つかり、切除して調べたら癌があったという人は、 通常、1年後にまた内視鏡検査を行い、チェックすることが勧められます。