大腸癌

最近、日本での『大腸癌』による死亡率は上昇を続けています。 大腸癌の増加の背景にはさまざまな要因がありますが、特に食生活などの生活習慣が深く関係していると考えられています。 大腸癌の発生の危険因子を知り、バランスのよい食事と適度な運動を心掛けましょう。


■「大腸癌」とは?

死亡率が年々上昇している。早期には自覚症状がない。

大腸癌は、かつて日本人には少ない癌でしたが、1950年代から男女ともに年々上昇を続け、 大腸癌による死亡率は、ここ50年間で男性は約7倍、女性は約6倍にも増えています。 現在、大腸癌の患者数は10万人を超えており、今後ますます増えるだろうと予想されています。 大腸癌が増えている要因として、まず大腸癌を発症する人が増えたことがあげられます。 大腸癌の増加の背景には、食生活の欧米化が深く関係していると考えられています。 さらに、早期にはほとんど自覚症状がないため、癌が進行した状態で見つかる人が多いことも、 死亡率が増えている要因の1つといえます。 大腸癌は、早期のうちに発見できれば、体への負担が少ない「内視鏡」による治療で治すことも可能です。 しかし、早期には自覚症状がほとんどないため、50歳を過ぎたら定期的に検査を受けるようにしましょう。


■大腸の構造と癌の発生率

大腸は、小腸から続く臓器で、小腸に近い部分から、「盲腸」「上行結腸」「横行結腸」「下行結腸」 「S状結腸」「直腸」に分けられます。長さは成人で1.5〜2mほどあり、 食道、胃、小腸で消化・吸収された食べ物から、さらに水分を吸収して、便をためることが主な役割です。 大腸癌は、癌が大腸のどの部位に発生するかによって分類され、その部位によって癌の発生率が異なります。 大腸癌研究会の全国登録によると、癌の発生率は、盲腸が約5%、上行結腸が約18%、横行結腸が約12%、 下行結腸が約5%、S状結腸が約30%、直腸が約30%となっています。 つまり、大腸癌の約6割が、S状結腸と直腸に発生していることになります。 S状結腸と直腸は、肛門に近く、便が長時間蓄積されるところです。 便の中に発癌物質が含まれていた場合、S状結腸と直腸の粘膜は発癌物質に長時間さらされてしまいます。 このことが、S状結腸と直腸に癌が多い原因とされています。

●大腸癌の種類

大腸癌は、癌ができた場所によって2つに大別され、直腸にできた癌を「直腸癌」、 それ以外にできた癌を「結腸癌」と呼んでいます。 また、大腸癌は、発生の仕方により、次の2つのタイプに分類されます。

▼「ポリープ」が癌化する場合
大腸の粘膜が発癌物質によって刺激を受けてできるいぼのような膨らみです。  ポリープのほとんどは最初は良性ですが、大きくなるにつれ、一部が癌化します。  大腸癌の多くはこのタイプと考えられています。
▼デノポ癌
大腸の粘膜に直接できる癌で、平坦だったりへこんでいたりします。  最初から悪性であるため、ポリープよりも早く進行すると考えられています。

■大腸癌の原因・危険因子

大腸癌は、さまざまな要因で発生しますが、なかでも肉類などに含まれる動物性脂肪の摂りすぎは、 大腸癌の発生と密接なかかわりがあるとされています。日本で大腸癌が増加している背景にも、 食生活の欧米化により、動物性脂肪の摂取量が増加したことが、深くかかわっているといわれています。 その理由として、次のようなことが推測されています。 肉類などに含まれる動物性脂肪が小腸などで消化・吸収される際には、肝臓で作られた「胆汁酸」が働きます。 胆汁酸は、大腸に入ると「悪玉菌」などの腸内細菌によって分解され、「2次胆汁酸」になります。 この2次胆汁酸の中に発癌物質が含まれており、それが大腸の粘膜に接触することで、 癌が発生する可能性が高まると考えられています。 胆汁酸は、摂取した動物性脂肪に見合った量が作られます。動物性脂肪の摂取が多くなると、 大腸の粘膜が発癌物質にされされる頻度が高まり、発癌の危険性が高まってしまうのです。

●その他の要因

大腸癌の発生には、アルコール飲料の摂り過ぎも関係していることがわかっています。 アルコールそのものではなく、アルコールが分解されてできた物質が血液中に増えることが、 大腸癌の発生の原因になると考えられています。 また、精神的・肉体的なストレスも、大腸癌を招く要因の1つに挙げられています。 過度のストレスを受けると、異物から体を守る免疫の働きが低下します。 それが、癌の発生を招くと考えられているのです。 さらに、肥満を促進するような生活習慣も、癌の危険因子です。 特に運動不足は、結腸癌に大きくかかわることがわかっています。 加齢は、大腸癌に限らず、癌全体の危険因子の1つです。年をとるごとに、大腸癌の発生率は高くなります。


■大腸癌を予防するには

大腸癌の予防は「適度に運動する」「動物性脂肪やアルコール飲料を摂り過ぎない」 「食物繊維、乳製品、緑黄色野菜を積極的に摂る」ことが基本になります。

●運動で腸の働きを活発にする

適度な運動は、結腸癌が発生する危険性を下げることがわかっています。 運動すると、腸の働きが活発になって便の排出が促され、大腸の粘膜が発癌物質にさらされる時間が短くなります。 また、ストレスの解消にも効果があり、免疫力が高まるともいわれています。 「ウォーキング」など自分にあった運動を習慣づけることが大切です。

【関連項目】:『ウォーキング』

●食生活の改善

動物性脂肪やアルコール飲料は控えめにして、多くの種類の食品をバランスよく食べましょう。 食物繊維の摂取量が極端に少ないと、大腸癌が発生する危険性が高まることがわかっています。 ただし、たくさんとっても大腸癌の発生を完全に予防できるわけではありません。 腸内細菌のバランスを整え腸の働きをよくするには、ヨーグルトなど乳酸菌を含む食品を多く摂りましょう。 緑黄色野菜は、癌の発生を抑えるといわれる抗酸化物質を多く含んでおり、予防効果が期待できます。

【関連項目】
『食物繊維』
『乳酸菌』
『大腸癌の予防に「乳酸菌」』

■遺伝性の大腸癌

大腸癌の一部には、遺伝的な要因によって発生するものもあります。 その1つが「家族性大腸線種症(家族性大腸ポリポーシス)」です。 これは、大腸全体に無数のポリープができる病気です。 放置しておくと、ほとんどのケースで、これらのポリープが癌化していきます。 また、遺伝性の大腸癌で、ポリープができない「遺伝性非ポリーポシス大腸癌」というものもあります。 この癌は、遺伝しても発症しないケースもあります。こうした遺伝性の癌は、大腸癌全体の数%です。