EPA

EPA(エイコサペンタエン酸)』は、DHA(ドコサヘキサエン酸)とともに魚油に含まれる多価不飽和脂肪酸の1つです。 コレステロール値や中性脂肪値を下げ、生活習慣病を予防するとして、注目されている成分です。 n-3(オメガ)系必須脂肪酸のうち、EPAは主に血管の健康維持に働く栄養素であり、DHAは主に脳の健康に重要な働きをする栄養素です。 EPAを長期間摂り続けると、血液成分(赤血球、血小板)や体全体の細胞に取り込まれます。 その結果、血液を固まりにくくさせたり、血管をしなやかに保つほか、 高血圧症を改善する働きがあります。 神戸大学の研究では、1日2700mgのEPAを8週間投与により本態性高血圧患者の収縮期血圧が低下しました。


■「EPA」とは?

EPA摂取量の多いイヌイットの食生活

北極海のグリーンランドに住むイヌイットは、アザラシや魚を主食として暮らしています。 極寒の地に農作物は育ちません。肉食中心なのに、イヌイットは心臓病で亡くなる人が極めて少ないことが知られています。 大変不思議なことなので、デンマークの学者達が、グリーンランドのイヌイットの血液を詳しく調べてみたところ、 魚やアザラシの脂肪に多く含まれる脂肪酸である、 「エイコサペンタエン酸(EPA)」が多く含まれていることを発見しました。 欧米人の血液に多く含まれている「アラキドン酸(AA)」とは、食べている脂肪の質が全く違っていたのです。 さらに、第二次大戦中のノルウェーでは、戦時下のため家畜が減り、肉不足で魚の消費量が大幅に増えましたが、 その時期は心筋梗塞による死亡率が大きく減りました。 EPAが動脈硬化性の病気を減らす可能性を示す一例といえるでしょう。

◆EPAの由来

海に棲む生物だけがEPAを持っています。EPAはもともと、プランクトンやオキアミなど海に棲息する生物の体内で作られ、 ヒトをはじめとする哺乳動物では合成されません。同じ脂肪酸でも、 アラキドン酸は陸の植物に、 EPAは海の植物に由来しているのです。海では、プランクトンを魚たちが食べ、その魚をアザラシや オットセイが食べるといった食物連鎖によって、あらゆる生き物にEPAが取り込まれます。 この結果、アザラシなどはかなりの量のEPAを貯えています。 イヌイットが大量のEPAを体内に有しているのも、アザラシや魚を主食としているためです。

◆EPAで血液がサラサラに

EPAを長期間摂り続けると、血液成分(赤血球、血小板)や体全体の細胞に取り込まれます。 その結果、血液を固まりにくくさせたり、血管をしなやかに保つ働きをもっていることが、世界中の研究者により確認されています。 血液中の赤血球はさまざまに形を変えながら、体全体に酸素を送り届けています。 しかし、赤血球が硬くなったり、血液が固まりやすくなるといったドロドロ血の状態では、 血流が滞り、やがては心臓や脳の血管が詰まるなど、命に関わる病気になりかねません。

◆EPAは現代人の強い味方

血液をサラサラにするなど、EPAの多彩な作用が誤った生活習慣から起こる 動脈硬化性疾患の進行を遅らせる可能性があるとして注目されています。 近年、食生活の欧米化により日本人のEPA摂取量は年々減少し、ストレスなども加わって、 動脈硬化心筋梗塞が増加しています。 EPAは、私たち現代人にとってまさに母なる海からの贈り物といえるでしょう。

◆EPAの弱点

健康維持へのさまざまな可能性が注目されている「EPAやDHA」ですが、「唯一の問題点は酸化」です。 古い酸化した油は体によくないのと同じでとりわけ酸化しやすいEPAやDHAは酸化を防ぐことがポイントになります。 そこで考えられたのが「大麦若葉」の配合。 大麦若葉に含まれる「2”-0-GIV」が酸化を防いでくれるので安心して摂取できます。


●期待される効能

血液を固まりにくくして血栓症を予防する作用。 脂質異常症を改善し生活習慣病を予防する作用。 精神神経症状を改善する(気分を改善する)作用。動脈硬化の改善。


●作用メカニズム

EPAはDHAと同じく、n-3(オメガ3)系脂肪酸に分類される多価不飽和脂肪酸です。 前述のように、n-3系脂肪酸の摂取量が多いグリーンランド住民の間では、動物性脂肪の摂取が多いのにもかかわらず、 心臓病(冠動脈疾患)がほとんど認められないというデータから、 n-3系脂肪酸が粥状硬化(動脈硬化)を予防するのではないかと注目されました。 基礎研究では、脂質代謝の改善、血液凝固異常の改善が示されました。 EPAは、血液の粘度を低下させ、赤血球の変形能を高めることにより血液を固まりにくくして、 脳梗塞心筋梗塞などの血栓症を予防します。 そのため、大量に摂取すると出血しやすくなると考えられますが、実際に問題となったケースは報告されていません。


●科学的根拠

EPAの脂質異常症に対する効果は、DHAも含めたn-3系脂肪酸の作用として検証されてきました。 これまでの研究報告をまとめると、1日当たり4g程度のEPAとDHAを摂取する場合、LDL(悪玉)コレステロール値を5~10%低下させ、 中性脂肪値も25~30%引き下げる効果があります。 ある臨床試験では、EPA600mgとDHA260mgを脂質異常症傾向にある被験者に投与したところ、中性脂肪値の低下が認められました。 また、糖尿病患者を対象にした臨床試験では、1日当たり1800mgのEPA投与によって、総頚動脈の肥厚が改善したといいます。 さらに、神戸大学からの研究報告では、本態性高血圧患者17名を対象に、1日当たり2700mgのEPAを8週間投与したところ、収縮期血圧の低下が認められました。
EPAが鬱病や統合失調症に効果的とする研究があり、注目されています。 1日当たり2gのEPAを2週間、従来の抗鬱治療と併用した結果、鬱状態の改善が認められたといいます。 しかし、EPA自体の抗鬱作用については、さらに検証が必要と考えられます。 また、認知症患者に投与することで、認知機能の改善を認めたともいわれています。 さらに、EPAをアルギニン(アミノ酸の一種) などと一緒に手術前に投与することで、術後の感染症を予防し、創傷の治癒を促進するという報告があります。


●摂取方法

臨床研究では、1日当たり数百mgから1gあるいは2g程度の投与が多いようです。 脂質異常症患者に対して4gのEPAを投与した試験もあります。 「日本人の食事摂取基準(2010年版)」による1日当たりの「n-3系脂肪酸」の目標値では、18歳以上は 「EPA及びDHAを1g/日以上摂取することが望ましい」とされています。 なお、EPAやDHAはイワシやサバなどの青魚に多く存在します。 特に精製した成分でなくても効果は期待できます。 ただし、EPAは酸化しやすいので、信頼のできる製品を選ぶことが大切です。


●注意事項

通常の食材に由来する成分であり、問題となる健康被害や副作用は知られていません。 ほかのサプリメントや医薬品との相互作用は報告されておらず、併用は問題ないと考えられます。 EPAサプリメントについて、いくつかの注意書きを見ることがありますが、すべて理論上の推測によるものです。


■EPA関連項目