α-リノレン酸(ALNA)

α-リノレン酸』は、n-3系脂肪酸(オメガ3)の1つで、必ず食品から摂る必要のある必須脂肪酸です。 高血圧対策にはアマニ油やシソ油に多い「α-リノレン酸」の摂取が大変有効であることが人に対する試験で判明しました。 α-リノレン酸は、血管を広げて血流をよくするので、血圧の低下につながると考えられるのです。 さらに、α-リノレン酸には血栓の合成を防ぐなど、動脈硬化を抑える働きもあるといわれています。


■「α-リノレン酸」とは?

n-3系に属する必須脂肪酸

「オメガ3」の1つ『α-リノレン酸』は、体内でつくることができないため、 必ず食品から摂る必要のある必須脂肪酸です。 また、体に取り込まれたα-リノレン酸は、体内でEPA・DHAに変換されるという特徴があります。 青背の魚は、エサにしているプランクトンに含まれるα-リノレン酸からDHAとEPAを体内で生産するのですが、 人間の体内でもこれと同じことが起こっています。

α-リノレン酸は、脂肪の燃焼を促す一連の代謝作用に関係し、尚且つ筋肉量を増やし基礎代謝カロリーを 引き上げます。 α-リノレン酸摂取により、脂肪分解酵素の脂肪燃焼リパーゼがたくさん作られ血中に放出されることで 脂肪細胞内の溜まった脂肪から「遊離脂肪酸」が活発に作られます。 遊離脂肪酸は筋肉で使われやすい形の脂肪なので、溜まった脂肪を早くエネルギーに換えるため、 ダイエットに効果があるとされています。

しかし、子供の頃にはたくさんあった褐色脂肪細胞は、大人になると1/3くらいに減ってしまいます。 それに加えて、生活習慣やストレスなどによって、褐色脂肪細胞の活性が弱くなり脂肪燃焼リパーゼを作り出す量が 少なくなると、肥満の大きな原因になるといわれています。






●α-リノレン酸の働き

▼細胞膜をつくる
細胞膜はリン脂質でつくられており、このリン脂質の構成成分の一部に含まれているのが脂肪酸です。 どの脂肪酸でつくられたかによって、細胞の性質や働きが異なってきます。 特にα-リノレン酸系の脂肪酸は、肌や網膜、脳や神経組織、子宮や精子に重要な役割を果たしています。

▼局所ホルモン(プロスタグランジン)をつくる
α-リノレン酸系とリノール酸系は、細胞膜に取り込まれ、必要に応じて局所ホルモン(プロスタグラジン)になります。 α-リノレン酸から作られる局所ホルモンは、炎症や腫れの抑制作用、鎮痛作用、血小板凝集抑制作用があります。 α-リノレン酸が欠乏すると、リノール酸から作られる局所ホルモンは過剰な働きをするようになり、 炎症の誘発や生活習慣病を始めとする様々な病気を引き起こすことが知られています。

●α-リノレン酸を含有する食品

α-リノレン酸は、大豆や胡麻、ゴーヤ、乳製品などいろんな食品に少しずつ含まれてますが、 必要な分のα-リノレン酸を通常の食品で効果的に摂取するには、 食品を大量に摂取しなければならず大変難しいと言われています。 そこで、最も効率よくα-リノレン酸を安全に摂取できる食品として、米国厚生省(HSS)をはじめ 世界で高い評価を得ているのが「アマニ油」「エゴマ油」です。

【関連項目】: 『亜麻仁(アマニ)』 『ゴーヤ(にがうり)』


■α-リノレン酸の血圧低下作用

α-リノレン酸を多く摂れば、血圧が低下する

近年、高血圧を抱える人が中高年を中心に増えています。高血圧は、メタボリックシンドロームにつながり、 脳梗塞や心筋梗塞といった大病を引き起こしやすいため、放置するのはとても危険です。 高血圧を防ぐには、塩分の少ない食事も重要ですが、それと同時に、『α-リノレン酸』が豊富に含まれる油を 活用する方法もいいことがわかってきました。α-リノレン酸は、油脂の構成成分である脂肪酸の一種。 私たちにはあまりなじみがないかもしれませんが、アマニ油(アマニ科の一年草の種子から搾った油)や シソ(エゴマ)油に多く含まれています。実は、このα-リノレン酸には、血圧を下げる働きのあることが最近わかり、 世界中の注目を集めているのです。2005年に米国で発表された、大規模な疫学調査のデータを紹介しておきましょう。

調査の対象になったのは、米国に住む白人4,594人。1日あたり1.1g相当のα-リノレン酸を摂取しているグループと、 1日あたり0.4g相当のα-リノレン酸を摂取しているグループに分けて、双方の血圧を比較してみました。 その結果、1.1g相当のα-リノレン酸を摂取しているグループは、0.4g相当を摂取しているグループよりも、 明らかに高血圧の発症率が低く抑えられていたのです。


●α-リノレン酸の血圧低下作用に関する日本での試験

4週間で血圧が約10mmHg下がった

日本でも、ある研究グループがα-リノレン酸の血圧低下作用を検証する試験を行いました。 その試験では、正常高血圧および軽症高血圧の人111人に協力してもらい、 全員を、まずα-リノレン酸を摂る58人(A群)と、対照群53人(B群)に分けました。 そして、A群の人たちには、α-リノレン酸が多い油を14g含んだパンを毎日食べてもらい、 B群の人たちには、調合サラダ油を14g含んだパンを毎日食べてもらったのです。 試験期間は12週間でしたが、試験を始めて4週間が経つと、A群の血圧が平均で約10mmHgと大幅に下がり、 8週目、12週目にも若干の低下が見られました。一方、B群の血圧は、4週目で平均5mmHgほどの低下にとどまっています。 つまり、α-リノレン酸が豊富なパンを食べていた人は、そうでない人に比べて、明らかに血圧が下がっていたのです。 しかし、試験を終了すると、A群の血圧は上昇に転じました。

α-リノレン酸を摂ると、なぜ高い血圧が下がるのかについては、はっきりとわかっていません。 現状では、動物実験の結果から見て、次のような仕組みが働いているのではないかと推測されます。 α-リノレン酸を摂ると、ブラジキニンやプロスタサイクリン、一酸化窒素といった、血管を広げる成分が血液中に増える ことがわかっています。つまり、α-リノレン酸の働きで血管が広がるため、血液の流れがよくなり、 血圧の低下にもつながると考えられるのです。さらに、α-リノレン酸には血栓の合成を防ぐなど、 動脈硬化を抑える働きもあるといわれています。


●α-リノレン酸の摂取量

1日小さじ1杯摂れば十分

私たちはふだん、油の摂り方に関してはそれほど注意を払っていません。 しかし、魚油に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)、 オリーブ油に豊富に含まれるオレイン酸には、動脈硬化を抑える働きのあることが知られています。 それと同じように、α-リノレン酸が豊富に含まれるアマニ油やシソ油を摂ることによって、 血圧の低下が期待できるのであれば、この油に注目しない手はないでしょう。 厚生労働省は、α-リノレン酸やDHA、EPAといった「n-3系脂肪酸」について、 1日あたりの摂取目安量を成人男性で2.2g以上、成人女性で2.0g以上と定めています。 アマニ油やシソ油の場合、全体の5〜6割がα-リノレン酸なので、1日小さじ1杯摂れば十分といえます。

α-リノレン酸が豊富なアマニ油やシソ油は、健康食品を扱う店や一部のスーパーマーケット、 通信販売で入手することができます。油というと、カロリーが気になるものですが、アマニ油やシソ油のカロリーは、 小さじ1杯で45kcal前後です。過剰に摂らないように気をつければ、ほとんど問題にはなりません。 ただし、アマニ油やシソ油は他の油と大きく違うところがあります。 それは熱や光に弱いこと。そのため、アマニ油やシソ油は、ドレッシングによく用いられますが、 味噌汁やスープなどに入れる方法もあります。ただし、熱い料理には食べる直前に入れるなどの工夫が必要です。 また、光による変質を避けるため、開封後は冷蔵庫で保存し、できるだけ早く使い切るようにしましょう。