鬱病(うつ病)の治療

鬱病(うつ病)の治療は、「抗鬱薬」と「ストレス軽減・休養」「精神療法」が中心になりますが、 自殺の危険がある場合は「ECT(通電療法)」を用いることもあります。


■鬱病(うつ病)治療の基本

休養をとってストレスを減らし、心身の過労を取り除く

鬱病患者は、心身が過労状態に陥っているので、休養をとってストレスを減らし、心身の過労を取り除くことが、治療の基本です。 また、心身の過労が長く続くと、脳内で気分や意欲を調節する働きをしている「セロトニン」や「ノルアドレナリン」 と呼ばれる神経伝達物質の量が一時的に減って、鬱病(うつ病)の症状が現れると考えられています。 治療では、神経細胞間の神経伝達物質の量を増やす、抗鬱薬による「薬物療法」も併せて行われます。 さらに、患者さんに病気や休養の必要性などを理解してもらったり、鬱病(うつ病)になりやすい考え方の癖を修正する 「精神療法(カウンセリング、認知療法)」も行います。 治療は十分に回復するまで続けないと再発や難治化を招きやすくなります。 回復を焦らず、担当医の指示通りに治療を進めることが大切です。

▼休養
鬱病患者は、身体的・精神的に過重な負荷を受けながら精一杯頑張った果てに、 疲れきった状態に陥っていることが多いので、まず「休む」ことが治療の基本になります。

▼薬物療法
鬱病治療の中心となるのが「抗うつ薬」です。 つらい症状を和らげるために「睡眠薬」や「抗不安薬」を用いたり、抗うつ薬の効果を高めるために「気分安定薬」を併用することもあります。

▼精神療法
気持ちを支える「支持療法(カウンセリング)」と病気を理解し休養や治療の必要性の自覚を促す「疾患教育」が中心となります。 再発予防のためには、家庭や職場の環境の調整も必要です。 症状が落ち着いてきたら、”鬱病になりやすい考え方の癖(認知の偏り)”を修正していく「認知療法」などを行なうこともあります。

▼電気療法(ECT)
全身麻酔をした上で、頭部に電気刺激を与える治療法です。 即効性があるため、鬱症状が激しくて自殺の危険性が高い場合などに救急治療として行なわれたり、 薬で十分な効果が得られない場合に試みられたりしています。

■鬱病(うつ病)治療の基本「休養とストレスの軽減」

鬱病の人は、疲れきった状態にあるので、しっかりと休む時間をとることが重要です。 休養のとり方は「週末はきちんと休む」「しばらく仕事を休む」など病状によって異なります。 また、鬱病の人にとって何がストレスとなっているかを明らかにし、それをできるだけ減らすようにします。 例えば、一時的に仕事の内容や部署を変えて心理的な負担を減らすなど、勤務先の理解と強力を必要とすることもあります。

【関連項目】:『疲労回復休養』 / 『ストレス解消』


■鬱病(うつ病)の治療「薬物療法」

抗うつ薬には、「SSRI」「SNRI」「三環系抗鬱薬・四環系抗鬱薬」などがありますが、 最近では、比較的副作用の少ないSSRI、SNRIが最初に用いられることが多くなっています。 ただし、特に18歳未満の患者では、SSRI、SNRIの服用を始めたばかりの時期にいらだちが募ったり、 不眠が生じたり、”死にたい”という気持ちが強まることもあるので、慎重な治療が必要です。 一部の三環系抗鬱薬・四環系抗鬱薬でも、飲み始めの時期はこれらの症状が強まることがあるので、要注意です。

【関連項目】:『鬱病の薬物療法』


■鬱病(うつ病)の治療「電気療法(ECT)」

鬱病が重症で、自殺の危険性がある場合などには、「ECT(通電療法)」を使用することがあります。 ECTは、全身麻酔を行ったうえで、頭部に電気刺激を与える治療法で、抗うつ薬と異なり、即効性が期待できます。 この治療は、1~2ヶ月程度入院して、何度か繰り返し行いますが、1回だけの通電で効果が現れることもあります。 ただし、再発の可能性もあるため、一般に治療後は抗うつ薬による治療が行われます。


■その他

▼ゆっくり休む
鬱病は「心のエネルギーが不足した状態」ともいわれます。休養をとり、精神的にも、肉体的にもリラックスすることが重要です。

▼家庭でのサポート
家族は、病気だからといって特別扱いせず、普段どおりに接するようにします。 また、「頑張って」などの言葉はプレッシャーを与えるので控えましょう。

▼職場でのサポート
鬱病では、最低でも2週間程度の完全休養が必要です。 回復してきても、まずは簡単な仕事から始めたり、勤務時間を短くしたりするなど「リハビリテーション出勤」が必要です。