慢性頭痛の薬

慢性頭痛は、「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」の3つのタイプに大きく分けられ、 タイプに応じて、「トリプタン系製剤」「エルゴタミン製剤」「鎮痛薬・消炎鎮痛薬」 「筋弛緩薬」「カルシウム拮抗薬」「β遮断薬」「抗うつ薬・抗不安薬」「その他の薬」などが使い分けられます。


■慢性頭痛の薬

『慢性頭痛』は、「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」の3つのタイプに大きく分けられ、 タイプに応じて、「トリプタン系製剤」「エルゴタミン製剤」「鎮痛薬・消炎鎮痛薬」 「筋弛緩薬」「カルシウム拮抗薬」「β遮断薬」「抗うつ薬・抗不安薬」「その他の薬」 などが使い分けられます。


●トリプタン系製剤

血管の拡張や収縮にかかわる「セロトニン」という神経伝達物質に代わってセロトニン受容体を刺激することで、 拡張した血管を収縮させる薬です。三叉神経の興奮を鎮め、血管やその周囲の炎症も抑えます。 数十種類あるセロトニン受容体のうち、脳に多く存在して片頭痛や群発頭痛に 関係しているものだけに作用するのが特徴で、「コハク酸スマトリプタン」「ゾルミトリプタン」 「臭化水素酸エレトリプタン」「安息香酸リザトリプタン」という薬があります。 現在、血管拡張による頭痛に対して最も効果の高い薬で、片頭痛の第一選択薬になっています。 群発頭痛には、このうちコハク酸スマトリプタンの注射薬や点鼻薬が用いられます。

【副作用】
副作用は少ないのですが、この薬が作用するセロトニン受容体は脳以外の血管や 内臓の筋肉にも少しあるため、のどが詰まるような感じや、胸が締め付けられるような 圧迫感が一時的に起こることがあります。また、ゾルミトリプタンで眠気が出ることが あります。こうした症状が気になる場合も、他のトリプタン系製剤に替えると 起こらなくなることが多く、どのトリプタン系製剤も使えないという人はめったに いません。ただし、脳血管障害、心筋梗塞、狭心症を起こしたことがある人や、 その危険性がある人などは使えません。

【用法】
片頭痛や群発頭痛が起きたらすぐに薬を用います。なるべく早く使ったほうが効果的 ですが、炎症を抑える作用もあるので、頭痛が始まって少し経ってから用いても 効果は望めます。

●エルゴタミン製剤

セロトニンに代わってセロトニン受容体を刺激することで血管の拡張を防ぐ薬で、 トリプタン系製剤が登場するまでは片頭痛や群発頭痛の中心的な治療薬でした。 「酒石酸エルゴタミン・無水カフェイン」 「酒石酸エルゴタミン・無水カフェインイソプロピルアンチピリン」 「メシル酸シヒドロエルゴタミン」という薬があります。
エルゴタミン製剤には、トリプタン系製剤のような炎症を抑える作用はないので、 頭痛が治まってから時間が経ってしまうと、痛みを抑える効果が望めません。 また、片頭痛や群発頭痛に関係しているセロトニン受容体にも作用するため、 副作用が出やすく、以前ほど使われなくなってきています。

【副作用】
吐き気や嘔吐、胃腸障害、めまい、手足の脱力感などが起こることがあります。 特に吐き気は4~5人に1人に見られ、薬を飲んだ後に吐いてしまうと安定した効果が 得られないことが、もともと吐き気を伴うことの多い片頭痛では、 使いにくい理由になっています。 また、血管を収縮させる可能性があるため、閉塞性の血管障害のある人、 心筋梗塞や狭心症を起こしたことがある人やその危険性がある人などは使えません。

【用法】
頭痛が起こる直前か、始まってすぐに飲むことが重要です。偏頭痛の前兆症状があったら、 その時点で飲みます。メシル酸ジヒドロエルゴタミン製剤は片頭痛の予防薬として 健康保険の適用がありますが、服用後に発作が起きた場合、24時間以内に トリプタン系製剤の使用はできません。

●鎮痛薬・消炎鎮痛薬

頭痛に対して保険適用のある「アスピリン」「アセトアミノフェン」「メフェナム酸」をはじめ、 「イプロフェン」「ナプロキセンナトリウム」「ジクロフェナクナトリウム」 「ロキソプロフェンナトリウム」「ケトプロフェン」「ロルノキシカム」「トルフェナム酸」 「インドメタシン」など、さまざまな薬が用いられています。
主に血管周囲の炎症を抑える作用により痛みを抑える薬で、痛みの程度が軽い場合は、 頭痛のタイプを問わず、治まることもあります。市販薬の痛み止めの中心となっている薬ですが、 副作用で胃腸障害などが出やすく、また、使い続けると慣れが生じて薬の量が増えがちなので注意が必要です。 痛みがひどくなってからでは薬の量が多くなりやすいので、頭痛が起きたら、なるべく早く飲みます。


●筋弛緩薬

緊張型頭痛で、筋肉の緊張が確認された人には、「塩酸チザニジン」「塩酸エペリゾン」 などの「筋弛緩薬(中枢性筋弛緩薬)」が用いられることがあります。 首や肩などの筋肉の緊張が緩めば、緊張が引き起こしていた頭痛も楽になります。
これらの薬は精神神経系にも作用するため、副作用で眠気が出ることがありますが、 消炎鎮痛薬より、比較的長期にわたって使っても問題の少ない薬です。


●カルシウム拮抗薬

カルシウム拮抗薬には血管の収縮を防ぐ作用があり、通常、降圧薬として使われています。 その一つの「塩酸ロメジリン」は、片頭痛の予防薬として健康保険の適用がある唯一の薬です。 塩酸ロメリジンには基本的に血圧を下げる作用はなく、セロトニンの過剰放出を防ぐとされますが、 片頭痛の予防効果はあまり高いとはいえません。頭痛が起こってから飲んでも効果はないので、 予防薬として毎日飲み続けます。副作用で、食欲が高まって太りやすくなったり、 眠気が出たりすることがあります。
このほか、「塩酸ベラパミル」が、片頭痛や群発頭痛の予防療法に用いられることもあります。 この薬の副作用としては、便秘が起こることがあります。


●β遮断薬

β遮断薬も主に高血圧の治療に使われる薬ですが、片頭痛の予防療法にも用いられています。 なかでも「塩酸プロプラノロール」は、塩酸ロメジリン以上に有効性が認められており、 欧米では片頭痛予防薬の第一選択薬となっています。
β遮断薬は、副作用で、血圧が下がったり、脈が遅くなることがあります。 気管支喘息のある人は使えません。


●抗うつ薬、抗不安薬

抗うつ薬では、主に「塩酸アミトリプチリン」が、片頭痛の予防療法に用いられています。 この薬は緊張型頭痛にも効果があることから、両方を合併している人には特に向く薬といえます。 抗不安薬は、ストレス性の病気に広く用いられていますが、不安を和らげるとともに、 筋肉の緊張を緩める作用があり、「エチゾラム」という薬に、緊張型頭痛に対する健康保険の適用があります。
いずれも副作用で、眠気やのどの渇きなどが起こることがあります。


●その他の薬

片頭痛・緊張型頭痛の治療薬として、セロトニンの働きを抑える抗セロトニン薬の 「メシル酸ジメトジアジン」という薬があります。また、抗てんかん薬の「バルプロ酸ナトリウム」 などを片頭痛の予防療法に用いたり、抗躁薬の「炭酸ナトリウム」などを群発頭痛の予防療法に 用いることもあります。
片頭痛に伴う吐き気を抑える制吐薬としては、「メトクロプラミド」「ドンペリドン」 などの薬が用いられています。そのほか、「カフェイン」「無水カフェイン」には、 鎮痛成分の作用を強めたり、眠気を防ぐ作用があり、多くの痛み止めの配合剤に含まれています。