家庭でできる温熱療法で低体温を解消する

生理痛・子宮筋腫などの女性特有の悩みで、体の冷えが原因となっている場合は、 家庭でできる温熱療法「腹巻半身浴」で改善することができます。


■冷えと婦人病

お腹の深部体温が33℃台の人もいる

近年、生理痛や生理不順、子宮筋腫、子宮内膜症などの病気に悩む女性が目立って増えており、 しかも、婦人病の発病が低年齢化する傾向にあることが、医学界で問題になっています。 女性特有の不調や婦人病には、必ずといっていいほど、冷えによる自律神経の乱れが関係しています。 自律神経とは、私たちの意思とは無関係に全身の働きを支配する神経のことで、 体が活動しているときに働く交感神経と、体が休息しているときに働く副交感神経の2種類があります。

さて、健康な人の下腹部の体温は、36℃~37℃ですが、婦人病の患者は下腹部の体温が1~2℃も低く、 骨盤周囲の血流も滞っているのが特徴で、中には33℃台の人もいるという臨床報告があります。 33℃というのは、雪山で凍えているときの体温とほぼ同じで、下腹部に極度の冷えが起こっている状態です。 体が冷えを感じると交感神経が働いて血管を収縮させ、体外に熱が放射されるのを防ごうとするのですが、 体の冷えた状態が長時間続くと、常に交感神経が優位に働くため、自律神経に乱れが生じます。 それによって女性ホルモンの分泌にも悪影響が及ぶようになり、生理痛・生理不順から子宮筋腫・子宮内膜症まで、 さまざまな不調や婦人病を招くことになるのです。

子宮筋腫とは、子宮にコブのような腫瘍(異常な細胞の塊)ができる病気です。 良性の腫瘍なので子宮癌につながる恐れはなく、30歳以上の女性の4~5人に1人は筋腫を持っているという報告があります。 子宮内膜症は、子宮内膜(子宮体部の内側を覆っている膜)の組織が、内膜以外の部位で増殖してしまう病気です。 子宮筋腫や子宮内膜症などの発病には女性ホルモンの分泌異常が深く関わっていると考えられています。 そして、重い生理痛や生理不順、不正出血(月経異常)・下腹部痛・腰痛などを伴うばかりか、 不妊を招く恐れもあります。こうした婦人病に悩む女性にぜひとも必要なのは、下腹部の冷えを取り除くことです。


●冷え改善に「腹巻き」

3週間後に約8割の人が冷えを解消した

下腹部の冷えを取る方法の中でも特におススメなのが「腹巻の着用」です。 まず、腹巻を日ごろから着用していると、腸や子宮、膀胱といった臓器が温まって体の深部体温が上昇、 すると、全身の血流がよくなり、体を冷やす余分な水分もスムーズに排出されるため、 冷えが改善されて、自律神経の働きやホルモン分泌のバランスが正常になってくるのです。 実際、腹巻を毎日着用した結果、3週間後に約8割の人に冷えの解消効果が現れたという報告もあり、 この報告によれば、足先の体温は平均3℃上がり、下腹部の深部体温は平均1℃、人によっては2℃も上昇し、 冷えによる婦人病が改善する例も数多く見られたそうです。

近頃は、薄手で保温性が高くデザイン性にも優れた腹巻きが売られています。 しかし、合成繊維(ナイロン・アクリル・ポリエステル)でできた腹巻きは汗をあまり吸収しないため、 腹巻きの内側に湿気がたまって冷たくなると、かえって下腹部が冷える原因になります。 その点、天然繊維の中でもは、吸湿性・放湿性・保温性が抜群に高く、 病原菌の繁殖を抑える抗菌性にも優れており、しかも、下着の素材によく使われる綿に比べると、 絹の吸湿性は1.5倍、放湿性は約2倍も高いことがわかっているので、 絹の腹巻きを選ぶといいでしょう。特に低体温で強い冷えを感じる人は、腹巻きの内側に使い捨てカイロを入れて、 下腹部や腰を温めるのも効果的です。


●冷え改善に「半身浴」

早ければ1週間で平熱が1℃上がる

日本には、昔からぬるめの温泉に体をじっくりと浸して不調やけがを癒す「湯治」の習慣があります。 ところが最近になって、42℃というやや熱めの湯を入れた風呂で「半身浴」をすれば、 冷えの改善に効果的であることがわかってきました。これは、ときどき洗い場に出たり立ったりしながら、 42℃の湯に合計20~30分、みぞおちまで浸かる半身浴です。 この42℃の半身浴を毎日続けると、早ければ1週間、遅くても3~4週間で、低体温の人の平熱が0.5℃~1℃上昇する と報告されています。ただし、実行するにあたっては、脱水症状を防ぐために半身浴の前・最中・後に、 必ず水分を十分に補給(合計で500mlが目安)するようにしてください。

【関連項目】:『低体温・冷えが原因の婦人病に「塩浴」』


このように腹巻きも半身浴も家庭で簡単にできるにもかかわらず、冷えの改善に驚くほどの効果を発揮するので、 女性特有の不調や婦人病に悩んでいる人には、試す価値が非常に大きい温熱療法といえるでしょう。