脳卒中に対する備えと起こったとき

脳卒中」が起こってしまったときは、一刻も早く医療機関へ行き、適正な治療を受ける必要があります。 そのためには、日頃から家族や周囲の人と発症してしまったときの対処法を確認しておくことが役立ちます。 そうすることが、一命をとりとめ、後遺症を最小限に抑えることにつながります。


■発症時の"備え"が大切

発症時の"備え"がその後の経過を左右する

脳卒中が起こったときに素早く対応するためには、自分だけでなく、家族や周囲の人の危機管理能力を 高めておくことが大切です。そのためには、脳卒中を起こしたときに、どのように行動すればよいのか、 手順を確認しておくと良いでしょう。昼間だけでなく、夜間に発症した場合も想定します。 また、近隣の脳神経外科や神経内科のある医療機関や、リハビリテーション病院なども調べておきます。 家族に脳卒中を起こしそうな人がいる場合には、消防署などで行われている、応急手当の講習会を 受けることをお勧めします。

生活習慣を改善し、脳卒中の発作を防ぐことはもちろんですが、万一発症した場合に備えて、 次のような準備をしておくことをお勧めします。

▼起こしやすい「脳卒中の種類」を知っておく
自分がどの種類の脳卒中を起こしやすいのか、その場合にどのような症状が起こるのかを知っていれば、 軽い症状でも見逃しにくくなります。
▼自分の"カルテ"をつくる
健康診断などの血液検査の値、これまでにかかったことのある病気や服用中の薬などの情報をまとめておけば、 診断や治療に要する時間を短縮できます。
▼家族や周りの人に知らせておく
自分に脳卒中の危険性があることを知らせておけば、万一のとき、周囲の人が迅速に対応しやすくなります。

■脳卒中を発症してしまったら

脳卒中が起こったら、発症から3時間以内に治療を受けることが重要です。 アメリカでは、"時間の損失は脳の損失"ともいわれるように、発症後の脳の状態は、 時間の経過とともに悪化していきます。
例えば、「脳梗塞」の場合は、3時間を過ぎると血管の損傷が激しくなり、治療の選択肢が狭まってしまいます。 また、「脳出血」は、発症後6時間までは出血が続くため、それまでに血圧をコントロールする必要があります。 「くも膜下出血」の場合は、6時間以内に再出血が起こりやすいため、できるだけ早く対処をして、 再出血を阻止しなければなりません。


●脳卒中を発症してしまった場合

周囲の人は、次のような手順で対応します。

①救急車を呼ぶ
脳卒中が起こったら、直ちに110番します。救急車の到着には、全国平均で約6分かかります。 脳卒中を起こした人は、嘔吐することが多いため、吐いたものが気道を塞がないような姿勢をとらせることも大切です。

②適切な場所に移動
救急隊が到着するまでの間、患者を適切な場所に移動し寝かせることが大切です。 屋外の場合は、自動車などの往来のない安全な場所へ運びます。 屋内のトイレや浴室などで発作が起きた場合は、居間など、患者を寝かせることのできる場所へ運びます。 意識があり、自分で体を動かせる状態であっても、患者が自分で移動するのではなく、 周囲の人ができるだけ早く静かに、患者を運ぶようにします。 患者が自分で歩いたりすると、脳の血流が減ったり、出血がひどくなることがあるからです。

③適切な姿勢をとらせ、気道を確保する
・吐いたものでのどや気管が詰まらないように横向きに寝かせて気道を確保する。
・麻痺がある場合は麻痺側を上にする。
・足をくの字に曲げて体を安定させる。
・頭の下に手を入れて枕代わりにする。
・ベルトやネクタイは緩める。

④環境を整える
救急車が到着するまで、騒音や振動などの刺激の少ない、静かな環境で待ちます。 例えば、テレビを消したり、子供を遠ざけるなど環境を整えます。 付き添いの人も、必要以上に患者の体に触れないようにします。

⑤救急隊に状況を伝える
患者の様子や症状、倒れたときの状況について伝えます。

●救急車到着後

救急車が到着すると、救急隊員は応急処置を行います。患者の状態を調べ、脳卒中が疑われる場合には、 専門医のいる医療機関に搬送します。都市部では、平均15分ほどで医療機関に到着しますが、 交通事情や搬送先の医療機関の場所、状況などにより、時間がかかる場合もあります。


医療機関では、体温や呼吸、脈拍、血圧などの「バイタルサイン」を調べます。 患者の病状によって、鎮痛薬や降圧薬で状態を落ち着かせる場合もあります。 CT検査などの結果をもとに診断を行い、治療を始めます。治療開始までには、医療機関到着から1時間ほどかかります。