脳卒中予防10ヶ条

これまでの調査や研究などから、『脳卒中』になりやすい原因がいくつかわかってきました。 ここでは、日本の卒中協会が、それから導き出した『脳卒中予防10ヶ条』を紹介します。 『脳卒中』は、命に関わることのある病気です。原因となる病気や生活習慣への注意で予防に取り組みましょう。


■脳卒中とは?

脳の血管に異常が起こり、神経が障害される病気

脳卒中は、脳の血管が詰まって起こる「脳梗塞」と、血管が破れて起こる「脳出血」「くも膜下出血」に大別できます。

▼脳梗塞
脳の血管の一部が動脈硬化により細くなったり、血の塊(血栓)が血管を塞いだりすると、 その先の組織に血液が正常に流れなくなります。血液から十分な栄養や酸素を受け取れなくなった神経細胞は壊死し、 正常に働くことができなくなります。

▼脳出血(脳内出血)
主に脳の奥の細い動脈に起こります。血管の一部が破れて出血し、血液が固まってできた血腫が脳の働きを障害します。

▼くも膜下出血
脳の表面の動脈にできたこぶが破裂して、脳を包むくも膜と脳の間に出血が広がるものです。 くも膜の下に広がった血液が脳を圧迫して、脳の働きを障害します。

これらは、原因に若干の違いはあるものの、脳の血管の病気という共通点があります。 予防のためには、脳の血管を健康に保つことが大切です。


■脳卒中の3大原因

高血圧、糖尿病、不整脈に特に注意が必要

脳卒中予防10ヶ条の最初の3つは、脳卒中と密接な関係があるとされる高血圧、糖尿病、不整脈に関してです。
1.手始めに 高血圧から 治しましょう
2.糖尿病 ほうっておいたら 悔い残る
3.不整脈 見つかり次第 すぐ受診

●高血圧

高血圧は、脳卒中を起こす最大の危険因子と言えます。血圧は、収縮期血圧(最高血圧)が139mmHg以下の場合に正常とされています。 脳卒中で死亡するリスクは、140~159mmHgの軽症(Ⅰ度)で、正常血圧の約3倍になり、180mmHg以上の重症(Ⅲ度)で、 約7倍以上になると言われています。 血圧が高い状態が続くと、血管に負担がかかって血管壁が傷つき、血液中のコレステロールなどが入り込んで、 血栓ができやすくなり、もろくなった血管が破れやすくなったりします。 また、内腔が狭められ、動脈硬化が進みます。 血圧が高い人は、きちんと治療を受けて血圧を下げることにより、脳卒中で死亡するリスクを下げることができます。

【関連サイト】:『高血圧症』

●糖尿病

血液中のブドウ糖(血糖)の濃度が上がることにより、血管壁が徐々に傷つけられます。 すると、血管の内腔が狭くなったり、動脈硬化が進んだりします。 糖尿病がある場合は、糖尿病がない場合に比べて、2~3倍も脳卒中になりやすいと言われています。 脳卒中の中でも、特に脳梗塞が起こりやすいのが特徴です。

【関連サイト】:『高血糖症(糖尿病)』

●不整脈

不整脈の中でも、特に高齢者に多いものに、「心房細動」があります。 心房細動は、何らかの原因で心臓の心房が細かく震えて、規則正しく拍動することができなくなる病気です。 それにより血流が滞り、血液がよどむため、血栓ができやすくなります。 その血栓の一部が剥がれ、脳まで運ばれて大きな血管が詰まると、脳梗塞を起こします。 心房細動がある場合は、ない場合に比べて、約5倍も脳卒中が起こりやすいと言われています。 「動悸がする」「ふらつく」などの症状があったり、脈が乱れていたりする場合には、すぐに医療機関を受診してください。 心電図検査を行うことで、ほとんどの不整脈を発見することができます。 心房細動と診断された場合、血栓ができるのを防ぐ抗凝固薬の服用により、脳卒中の約80%を抑制できるといわれています。

【関連サイト】  『不整脈』


■その他の原因

悪い生活習慣も脳卒中の原因になる

脳卒中予防10ヶ条の4~9条には、生活習慣に関する内容が多く含まれます。
4.予防には たばこをやめる 意志を持て
5.アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒
6.高すぎる コレステロールも 見逃すな
7.お食事の 塩分・脂肪 控えめに
8.体力に あった運動 続けよう
9.万病の 引き金になる 太り過ぎ

●たばこの有害性

4~6条の「たばこ」「過度のアルコール」「高コレステロール」は、脳卒中を引き起こす要因になるというデータがあります。 喫煙、飲み過ぎ、高コレステロールなどが当てはまる場合は、改善してください。 特に、喫煙は脳卒中の原因になるだけでなく、心臓や肺など全身に悪影響を与えます。 1日にたばこを40本吸っている人は、吸わない人に比べて約4倍も脳卒中で死亡する率が高いというデータがあります。 タバコに含まれるニコチンが交感神経を刺激して血圧を上げるためと考えられます。 喫煙と血圧の関係を調べた研究によると、タバコを吸うたびに血圧が上昇し続けることがわかりました。 喫煙している場合は、ぜひ禁煙してください。

【関連サイト】  『禁煙補助製品』 / 『高コレステロール血症・高中性脂肪血症』 / 『アルコール依存症』

●運動の有益性

7~9条は現代人に多い生活習慣に関連した内容で、「塩分・脂肪」「運動不足」「太り過ぎ」は、 高血圧、糖尿病、脂質異常症、コレステロールなどに悪影響を与える要因とされています。 体力に合った運動に関しては、全身の血行を促進したり、肥満を抑制したりすることができる 「ウォーキング」が勧められます。 1日1万歩を目指して、少し早足で、汗ばむ程度の距離を歩きましょう。


■一過性脳虚血発作

脳卒中の前触れ発作を見過ごさない

脳卒中予防10ヶ条の締めくくりです。
10.脳卒中 起きたらすぐに 病院へ
当たり前のことだと思われるかもしれませんが、現実にはその通りに行動していないケースがよくあります。 例えば、倒れてすぐに救急車を呼んだ場合でも、その前日などに「半身が麻痺している」「ろれつが回らない」 などの症状が起きている場合があります。最初に起きたこの症状は、脳梗塞が起こりかけているもので、 「一過性脳虚血発作(前触れ発作)」と呼びます。 通常は15~60分くらいで症状が治まりますが、たまたま血栓が流れて消えたなどと考えられ、 翌日あるいは翌々日までの間に本格的な発作を起こす恐れがあります。 前触れ発作の段階で医療機関を受診し、適切な治療を受けると、約80%は脳卒中が防げるというデータがあります。

●脳卒中の代表的な症状

前触れ発作に気付くために、次のような脳卒中の症状を知っておきましょう。 どれか一つでも症状が出たら、脳卒中を疑い、迷わずに救急車を呼んでください。

▼片側の麻痺
顔、手、足など「体の片側に力が入らない」、あるいは「痺れを感じる」などが起こります。

▼顔の麻痺
例えば、顔の片側の動きが悪くなったり、歪んだりします。

▼言葉の障害
「ろれつが回らない」「しゃべりたい言葉が出てこない」「他の人の話が理解できない」など。

▼目の異常
「片方の目にカーテンがかかったようになり、急に見えなくなる」「視野の半分が欠けてしまう」など。

▼頭痛
今まで経験したことのないような激しい頭痛が突然起こった場合、くも膜下出血が考えられます。