コラーゲン

コラーゲン』は私たちの体をつくっているタンパク質の30%を占め、肌をはじめ、骨や軟骨、 血管など、体の重要な部分に存在しています。 コラーゲンは、細胞と細胞をつなぎ合わせるセメントのような役目を果たしており、 このコラーゲンによって健康維持に欠かせない丈夫な骨や血管などの土台が作られているので、 まさに私たちの体を若々しく保つために大切な成分だといえます。 骨粗鬆症や更年期障害の緩和、美肌の維持や健康維持などに、コラーゲンは欠かせないものですが、 体内のコラーゲンは、1日に約2000mg壊れると考えられています。 そして、40歳前後からコラーゲンは急激に減り、60代では20歳の約50%にまで減少。 こうしたことから、1日に壊れる2000mg以上のコラーゲンを補うことが望ましいといわれています。


■「コラーゲン」とは?

肌や体のハリや弾力に!
骨粗鬆症や更年期障害の緩和に!

『コラーゲン』は、単細胞以外の生物であれば、哺乳類だけでなく魚や昆虫にもある動物性のタンパク質で (植物性のコラーゲンはありません)、皮膚や軟骨、骨、腱、内臓(主に消化器)、血管に多く存在し、 細胞をつないでいる細胞間物質に多く存在する体の土台となる物質で、量的には全タンパク質の30%以上を占めます。 コラーゲンの多くは3本のアミノ酸の鎖が3重に合わさったらせん状の形をしており、 その特徴的な構造のため、タンパク質中最強の強度を持ちます。 そのため、強度の必要な部位(骨格や皮膚)に多量に存在します。 つまり、コラーゲンの重要な働きの1つは私達の体を支えることです。 折れにくい粘り気のある骨、弾力性に富む関節、張りのある皮膚、 それぞれの機能はコラーゲン繊維の引っ張り強度の強さにより実現されているのです。

また、細胞とコラーゲンの関わりでは、毛細血管以降はコラーゲンを多く含む細胞間物質経由で 栄養の補給と老廃物の廃棄が行われていることに重要な意味があります。 コラーゲンの新陳代謝が低下すると、血管の傷にコレステロールやカルシウムが付着してしだいに硬くなり、 動脈硬化の原因になったり、骨粗鬆症の原因になったりします。

さらに、コラーゲンの役割として、シワやシミを防ぐ役割を果たし、 肌のみずみずしさを保つ「美容成分」としての役割もあります。 例えば、皮膚の真皮部分は、約70%をコラーゲンが占め、皮膚組織ではコラーゲンが細胞と細胞を繋いで、 酸素や栄養を供給し老廃物を取り除くパイプとして働いています。 コラーゲンが不足すると、肌はみずみずしさをなくし、老化してしまいます。 コラーゲンの摂取が若々しい体の維持(アンチエイジング)に役立ちます。


●分子量

コラーゲンが動物の骨や皮に存在しているときの状態は、線維状の分子がロープのように3本絡まっていて、 分子量は約30万ダルトン(アミノ酸3,000個)です。 これに熱を加えると、絡まっていた分子がほどけてゼラチン(高分子コラーゲン)として溶け出してきます。 3本だった分子が1本になるので、分子量は3分の1の約10万ダルトン(アミノ酸1,000個)になります。 ゼラチン(高分子コラーゲン)に分解酵素を加えて人工的にコラーゲン分子を切断したものがコラーゲンプチド (低分子コラーゲン)で、分子量は商品によって違いますが、だいたい500〜5,000ダルトン(アミノ酸5〜50個)です。 コラーゲンよりはゼラチンのほうに近いので、ゼラチンペプチドというほうがしっくりきます。 正式にはポリペプチドやオリゴペプチドと呼ぶべき物質です。


●コラーゲンペプチド(低分子コラーゲン)

コラーゲンは、体の皮膚や骨、腱、血管などを作るたんぱく質として欠かせない成分といわれ、 美肌効果や関節機能向上を求める女性などを中心に人気があります。 「コラーゲンペプチド」は、コラーゲンを体に吸収しやすいように工業的に分子化したものです。 コラーゲンペプチドは、わが国で1993年に生理機能を発揮するコラーゲン・ゼラチン由来ペプチドとしての 概念が確立されました。コラーゲンペプチドは、特定の単一分子ではなく、さまざまな動物組織から抽出した コラーゲン(ゼラチン)を食品添加物として使用可能な植物由来プロテアーゼや微生物の酵素、 あるいはある種の微生物由来の酵素を固定化して、加水分解したものを示しています。

動物の結合組織中にあるコラーゲン(スーパーヘリックス構造)は、強固な線維で水に不溶ですが、 豚の骨や皮、あるいは魚のうろこや皮などを加熱抽出するとコラーゲンが変性し、ゼラチン(ランダムコイル構造)化 します。ゼラチンは、分子量も大きく、冷えるとゼリー化する性質があるため、ゼリーやマシュマロなどさまざまな 調理や食品に利用されています。ご存知とは思いますが、「にこごり」はまさにこの反応の産物です。 このゼラチンを工業的にタンパク質分解酵素で処理したものがコラーゲンペプチドと呼ばれるものです。 コラーゲンペプチドはゲル化能を持たない低分子です。さまざまな分子断片の混合物で、平均分子量が 3000〜5000くらいですが、遊離アミノ酸やオリゴペプチド(2〜5アミノ酸)も含まれています。

サムゲタンや豚骨スープ等、動物の肉、骨、皮を長時間に込んだスープなどには、ゼラチン化したコラーゲンが 多く含まれると考えられます。一方、部分分解され、低分子化されたコラーゲンペプチドがどの程度含まれているかは 不明です。現時点では、一般的な食品や調理でコラーゲンペプチドを多く摂取できることは期待しにくいかもしれませんが、 発酵食品(鰹節やくさや)や、酢を使用して長時間過熱した調理では、ゼラチンの加水分解が生じている可能性も 考えられます。ちなみに漢方薬の「黄明膠(オウメイキョウ)」「阿膠(アキョウ)」は、牛やロバの皮から作られる ゼラチンで、止血、創傷治癒や関節痛緩和作用に用いられてきました。


●コラーゲンペプチドの生体での働き

コラーゲンは、動物の真皮、腱、軟骨、骨などに多く存在する細胞外基質たんぱく質(細胞外マトリックス)の一つです。 そのアミノ酸配列は特徴的で「(グリシン)−(アミノ酸X)−(アミノ酸Y)」の繰り返し配列をもち、 3重螺旋の立体構造(スーパーへリックス)を作ります。さらに、この螺旋分子が多数凝集・結合して、 コラーゲン原繊維をつくっています。コラーゲン原繊維は、骨や軟骨に存在し、骨を鉄筋コンクリートに例えるなら、 コラーゲン原繊維は鉄の役割を果たしています。さらに真皮や腱には、コラーゲン原繊維が集まって強固なコラーゲン繊維を つくります。一方、コラーゲン分子の違いにより、真皮や骨に多く存在するT型コラーゲン、軟骨に多く含まれる U型コラーゲンなどに分けられます。基本的には、コラーゲンは、我々動物の結合組織の構造を保つために必要な 構成分子として、重要なたんぱく質と考えられています。

ところで、食品由来のコラーゲンあるいはゼラチンは、その一次構造から消化・吸収性が低いといわれています。 また、コラーゲン分子のアミノ酸組成は偏っていて、必須アミノ酸のトリプトファンが含まれず、 たんぱく質栄養としては高く評価できません。そこで、ゼラチンを酵素処理し低分子化したコラーゲンペプチドの 特異な生理機能が注目されているわけです。

一方、コラーゲン分子と類似したアミノ酸配列を持つたんぱく質として、アディポネクチン、 マクロファージスカベンジャー受容体2、BMPなどが知られています。このことからコラーゲンは構造たんぱく質として だけではなく、何らかの細胞機能を調節する調節分子あるいは情報分子としても機能する可能性が考えられています。 コラーゲンペプチドの作用に関しては、学術論文レベルで、特定配列のジペプチドやペプチドが線維芽細胞や白血球の 運動性を活性化するなどの報告があります。


●コラーゲンペプチドの経口摂取の効果と意義について

前述したようにコラーゲンは各組織で生合成され、また分解もされます。一方、元来体内のコラーゲンの代謝は 比較的ゆっくりで、しかも加齢により代謝回転速度が衰えた場合、コラーゲン分子は、酸化修飾を受けている といわれています。そこで、簡単にコラーゲンの原材料をサプリメントで補うというアイデアが生まれたのだと思います。 ヒトでの評価ですが、現時点で米国のナチュラルメディシンデータベース(NMDB)では、コラーゲンペプチドの 記載はありませんが、ゼラチンの「ニワトリ コラーゲンU」が取り扱われています。安全性においては、 信頼性の高いデータは十分に得られていないので、妊婦や授乳婦の摂取は避けるように記載されています。 また、期待される効能や効果についても信頼性の高いデータは十分に得られていないとされています。 ハーブ、そのほかのサプリメント、薬物との相互作用に関しても不明とされています。用法・容量に関して経口投与では、 1日20μg〜2gが関節リウマチや関節炎で使用についての記載があります。

一方、論文レベルでヒトの評価を整理すると、コラーゲンペプチドは、乾燥肌や肌荒れ、関節リウマチ、変形性関節炎、 骨密度、さらに爪の維持などについて有効性が示唆されています。また、ヒトを用いた研究から、コラーゲンペプチド由来 の特定のオリゴペプチドが血中に多く存在することが報告されています。


●最後に

コラーゲンペプチドは、サプリメントとして摂取する場合、適切に用いれば経口摂取ではほぼ安全といわれていますが、 ゼラチンに関するアレルギーを有する場合は注意が必要です。また、妊娠中の安全性については信頼できる十分なデータ がないので使用は避けるべきでしょう。 現在、「コラーゲン」の名前でサプリメントとして市販されているものに関しては、その本体が「ゼラチン」であるものと、 ゼラチンを加水分解した「コラーゲンペプチド」が存在します。コラーゲンペプチドは、原材料の動物種、加水分解方法、 精製方法の違いで、平均分子量や含まれるペプチドの種類が異なっています。これら全てを「コラーゲン」とする のではなく、きちっと分けて評価することが必要です。これらを考慮しながら、消費者が最も期待するヒトでの美肌効果や 関節能力向上に関する信頼できる十分なデータを集めた正当な評価が必要と考えられます。