高血糖対策・糖尿病予防に
『グリスリン』

グリスリンはキノコの一種であるマイタケに特異的に含まれる成分で、最近になってその存在が確認されました。 高血糖高血圧高脂血メタボリックシンドロームを撃退するのに役立つことが日米の試験で実証されています。


■「グリスリン」とは?

高血糖を改善

現在、心臓病や脳卒中など、深刻な生活習慣病を引き起こす原因となる、いわゆる「メタボリックシンドローム」 の解消法がさまざまな方面で研究されているなか、最近になって、メタボリックシンドロームの解消に抜群の効果を発揮する新栄養が見つかり、 日本や米国で大きな注目を集めています。その新栄養が『グリスリン』です。 「グリスリン」は、私たちにもなじみの深いマイタケから見つかった糖タンパク成分で、米国では「SX-フラクション」 とも呼ばれています。 グリスリンがインスリン抵抗性を改善させる効果は、米国のFDA(食品医薬品局)からIND(臨床試験実施の許可) を受けている企業が行った試験で確認されています。 試験では、糖尿病(Ⅱ型糖尿病)で薬物治療を受けている19人の患者に、グリスリンの粒食品を12週間摂ってもらい、 空腹時血糖値やヘモグロビンA1c、血中インスリン量などの変化を調べました。 ちなみに、ヘモグロビンA1cとは、赤血球中のヘモグロビンがブドウ糖と結びついたもので、過去1~2ヶ月間の血糖値の推移を知る上で非常に重要な数値です。 通常、ヘモグロビンA1cは非常に下がりにくいため、これが下がるということは、グリスリンが高血糖にかなり有効であることを示します。 そうして試験を行った結果、8週目には空腹時血糖値やヘモグロビンA1cが有意に低下し、それに伴って、過剰だった血中インスリン量も減少したのです。 高い血糖値と過剰だった血中インスリン量が同時に減少するということは、細胞に対してインスリンが正常に作用し、 その結果として血液中にだぶついていた糖が細胞に取り込まれ、消費されたと推測できます。 つまり、グリスリンの摂取によって、インスリン抵抗性が改善されたと考えられるのです。

グリスリンとはいったいどんな栄養なのか・・・・・
それを説明するには、まずメタボリックシンドロームを招く元凶とされる「インスリン抵抗性」について知る必要があります。


■インスリン抵抗性

高血糖や高血圧を招くインスリン抵抗性

食事で摂った炭水化物は、ブドウ糖に分解されると、 血液に乗って全身に運ばれ、細胞のエネルギー源として使われます。 このブドウ糖を血液中から細胞に取り込むときに必要となるのが、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンです。 インスリンが細胞にあるインスリン受容体に作用することで、細胞はブドウ糖を取り込めるのです。 インスリンは、細胞に作られた、ブドウ糖が入るためのドアを開く鍵に例えることができるでしょう。 ところが、食べ過ぎや運動不足などで 内臓脂肪が蓄積されると、脂肪細胞から、細胞のインスリン受容体の働きを妨げる TNF-α(腫瘍壊死因子)などの悪玉物質が放出され、細胞がうまくブドウ糖を取り込めなくなります。 このように、インスリンを受け入れる細胞の感度(インスリン感受性)が低下し、 インスリンが十分に働けなくなる状態を「インスリン抵抗性」といいます。

インスリン抵抗性が生じると、血液中のブドウ糖が細胞によって消費されなくなるため、慢性的に血液中のブドウ糖が過剰な状態(高血糖)が続きます。 すると、それが内臓脂肪を作り出すという悪循環を招き、インスリン抵抗性はさらに悪化していくのです。 また、高血糖に陥ると、何とかブドウ糖を消費しようとして、インスリンが効かなくなっているにもかかわらず、より多くのインスリンが分泌されます。 その結果、血液中のインスリン量が過剰になる「高インスリン血症」に陥ります。 インスリンには血糖を調節する働きのほかに、過剰になると、血管を収縮させたり肝臓での脂肪の合成を促したりする働きがあります。 そのため、高インスリン血症になると、高血圧や脂質異常はもとより、心臓病や脳卒中の引き金となる 動脈硬化が急速に進むことになります。


■高血糖・高血圧・高脂血・メタボを解消

●グリスリンがメタボの元凶を改善

上記のことからもわかるように、インスリン抵抗性は、 高血糖高血圧脂質異常、 さらには動脈硬化など、さまざまな恐い病気をもたらす原因となります。 つまり、インスリン抵抗性こそが、メタボリックシンドロームを引き起こす元凶なのです。 メタボリックシンドロームを解消するには、何よりもまず、このインスリン抵抗性を改善させなければなりません。 そこで今、脚光を浴びているのが「グリスリン」です。 では、実際にグリスリンとはどんな成分で、どのような仕組みでインスリン抵抗性やメタボリックシンドロームを改善させるのでしょうか。


●米国の名門大学が効果を続々実証

グリスリンの研究は、日米の多くの研究者によって行われており、インスリン抵抗性以外にも、 メタボリックシンドロームにおけるさまざまな症状を改善させる効果が確認されています。 例えば、メタボリックシンドロームの提唱者の一人として有名な、米国ジョージタウン大学のハリー・ブルス教授の 研究グループは、ネズミを使った次のような実験を行い、グリスリンの効果について報告しています。
実験では、先天的に肥満でインスリン抵抗性を持ったネズミを2グループに分け、一方には普通のエサを、 もう一方にはエサにグリスリンを加えて与え、それぞれの血糖値・血圧・体重の変化などの変化を調べました。 すると、普通のエサを与えたグループでは成長と共に血糖値・血圧・体重などが上昇したのに対し、 グリスリンを与えたグループでは、それらの上昇が明らかに抑えられたのです。
また、米国のニューヨーク医科大学では、グリスリンを用いた臨床試験が行われています。 試験では、糖尿病の患者5名に、通常の治療薬とともにグリスリンの粒食品を摂ってもらい、 空腹時血糖値の変化を調べました。すると、血糖値が有意に低下し、それまで服用していた治療薬を中止できた 例も出たのです。


●日本の医療機関も臨床試験を実施

日本でのグリスリンの臨床試験は、東京都の管野クリニック、高輪メディカルクリニック、千葉県の鈴木医院、 埼玉県の慶和病院の4ヶ所の医療機関により行われました。この試験では、さまざまな興味深い結果が得られましたが、 その中で特に注目したいのは、ほとんどのケースでグリスリンの摂取により体重の減少が認められたことです。 試験では、6名の体重の変化を1ヶ月ごとに2ヶ月間、計測していますが、その間に平均して約3kgの体重が減少していたのです。 一般に、メタボリックシンドロームの改善には、体重を5%減らすことが肝心だといわれています。 そうすれば、内臓脂肪が速やかに減り、高血糖・高血圧・脂質異常が一挙に改善されることがわかっているからです。 また、臨床試験でわかったグリスリンの効果は体重の減少だけではありません。 次のようなこともわかりました。


●高血糖・高脂血症に有効

その臨床試験は、Ⅱ型糖尿病で通院中の患者14名を対象に行われました。 これらの患者には、それまで受けていた食事療法や運動療法を継続してもらいつつ、グリスリンの粒食品を2ヶ月続けて摂ってもらいました。 すると、空腹時血糖値とヘモグロビンA1cは、グリスリンの摂取前と比べて1ヵ月後には低下し、2ヵ月後にはさらに低下したことが確認できたのです。 また、コレステロール値は、善玉(HDL)コレステロール値が上昇し、悪玉(LDL)コレステロール値が低下するという、理想的な変化を現しました。 さらに、中性脂肪値についても、グリスリンを摂取して1ヵ月後には有意に低下していることがわかりました。 この試験からもわかるように、グリスリンには、インスリン抵抗性を改善して増えすぎた体重を減らすだけでなく、 高血糖や高LDLコレステロール、高中性脂肪を改善させる効果まであることが明らかになったのです。


●高血圧に有効

メタボリックシンドロームの代表的な病気には、他に「高血圧」があります。 グリスリンにはこの高血圧を改善させる働きも備わっています。このことは前述した米国ジョージタウン大学の研究グループが行った別の実験で確認されています。 その実験では、先天的に肥満でインスリン抵抗性を持ち、さらに老齢になったネズミを2グループに分け、 一方には普通のえさを、もう一方には普通のえさにグリセリンを加えて与え、血圧の変化を調べました。 すると、普通のえさを与えたグループでは成長と共に血圧が上昇したのに対し、グリスリンを与えたグループでは、血圧の上昇が抑えられたのです。


■グリスリンの摂取目安量

グリスリンの摂取は1日50~60mgが目安

上に述べたように、グリスリンはマイタケ特有の成分です。つまり、マイタケを食べれば、グリスリンを一応は補うことができます。 グリスリンは水溶性なので、マイタケを味噌汁やスープの具にして汁ごと摂れば、グリスリンを余さず補えます。 ただ、メタボリックシンドロームの改善には、この補い方では少々心もとないかもしれません。 というのも、マイタケに含まれているとはいえ、グリスリンはあくまで微量成分だからです。 そのため、マイタケを食事で摂ることで摂取できるグリスリンの量には限界があります。 メタボリックシンドロームの改善を目的とする場合は、市販されているグリスリンを配合したサプリメントを利用するのが一番です。 グリスリンは1日に50~60mg補うのが一応の目安とされています。 サプリメントのパッケージにグリスリンの含有量が記されているので、それを参考にしてください。 グリスリンは食間に摂るのが有効と考えられます。朝食と昼食の間、あるいは昼食と夕食の間という具合に摂るのがいいでしょう。 グリスリンと一緒に摂ってはいけないものは特にありませんが、薬を処方されている人は、医師と相談の上で、薬と並行して摂ればいいでしょう。