加齢性難聴対策③

電車の走行音やイヤホンで聞く音楽、カラオケなど身近な騒音が耳ストレスとなり難聴を招くため、この対策で防げ。


■騒音で内耳の有毛細胞が酷使される

耳をいたわる「快聴生活」を送るうえで、動脈硬化対策とともに重要なのが、騒音への対策です。 騒音は、国立長寿医療研究センターが行った疫学研究の報告で、加齢性難聴を引き起こす重大原因であると指摘されています。 一般に騒音とは85デシベル以上の音量を指します。85デシベルという音の大きさは、耳元ですごく大きな声で話しかけられるくらいの 音量です。騒音と難聴の発症時期との関係は、「音量×その音にさらされた時間」で表すことができます。 つまり、この数式で算出された値が一定限度を超えると難聴が始まるというわけです。 例えば、85デシベルの大きさの騒音を毎日8時間聞き続ければ5年で難聴を発症します。 また、電車が通るときのガード下の音に相当する100デシベルの音なら、毎日15分聞くだけで5年後には難聴が始まります。 飛行機のエンジン音に相当する130デシベルの音では、たった1回30秒聞いただけで難聴に陥ることがわかっています。 騒音にさらされると、前ページでも述べた内耳の有毛細胞(ダンス細胞)が酷使され、激しく振動し続けることになりますが、 そのうちくたびれて機能を停止してしまったり、細胞死を起こしてしまったりします。 その結果、聴力が衰えて難聴を発症するのです。


●気付かぬうちに忍び寄る身近な騒音

ただ、騒音が耳に悪いと聞いても、中には「最近は騒音対策が徹底されていて、昔に比べると騒音が問題視されることも少なくなった」 と思う人もいるかもしれません。確かに、工場や建設現場などから出る騒音を規制する法律も作られ、昔よりも騒音が少なくなった と感じている人が多いのは事実でしょう。しかし、こうした現状を踏まえても、ことに難聴の発症に関して言えば、 安心はできません。というのも、工場や建設現場などから出る騒音が減っても、私たちの日常生活には、電車・地下鉄の走行音、 イヤホンや自動車内で効く音楽やラジオ、さらにはコンサート、カラオケ、パチンコなどの「身近な騒音」が溢れているからです。 これらの音は90デシベル前後に及ぶものがほとんどです。身近な騒音に長時間さらされ続ければ、 それが強い耳ストレスとなって難聴を引き起こすことになります。


●イヤホンよりヘッドホンがおススメ

では、こうした身近な騒音から耳を守るにはどうすればいいのでしょうか。 根本的な対策としては、騒音からできるだけ遠ざかることがあげられます。 ただ、通勤で電車を使っている人の場合はなかなかそうは言っていられません。 また、難聴を防ぐために好きな音楽を聞いたりカラオケに行ったりするのを止めろというのも乱暴な話です。

電車に乗っているときの騒音は、適度に環境音が聞こえる程度の遮音効果が得られる綿を耳栓代わりに使って防ぐといいでしょう。 最近では、効きたくない音だけを遮音できるノイズ消し脳のついた耳栓(ノイズキャンセリング耳栓)が発売されており、 カラオケやコンサートなどで役立ちます。ただし、屋外で耳栓を用いる場合は、身の安全のため、周囲に十分注意する必要があります。

電車の中などで音楽やラジオを聴くときは、イヤホンでなくヘッドホンを使いましょう。 電車では、走行音や車内アナウンスなどの雑音のせいで、音量を上げてしまいがちですが、耳全体を覆うヘッドホンを使えば、 周囲の雑音を10デシベルほどカットできるので、音量を上げなくて済みます。 また、最近市販されているノイズキャンセリングヘッドホンなら、周囲の雑音を20デシベル以上減らせるものもあるので、 ぜひ活用してください。また、音楽はただ聞いているよりもリズムに乗って体を動かしているほうが、 比較的難聴になりにくいという説もあります。コンサートなど大音量にさらされることが多いミュージシャンに意外に 難聴の人が少ないのも、そのせいかもしれません。 音楽を聴くときは、周囲の人に迷惑にならない程度にリズムに乗って体を揺らすといいでしょう。 こうした工夫を活用して、毎日の暮らしを楽しみながら、難聴の危険を回避してほしいと思います。