加齢性難聴対策②

加齢性難聴』には耳をいたわる快聴生活が大切で、動脈硬化を招く「高脂質・高脂肪食」を断つことが必要です。


■動脈硬化が起こると、耳の血流が不足する

加齢性難聴の発症・悪化を予防・改善するには、生活習慣を改めて、耳をいたわる「快聴生活」を送ることが大切です。 そのためにまず行ってほしいのが、加齢性難聴を招く重大原因と分かった 「動脈硬化」への対策です。 耳は、肝臓や腎臓などの臓器と同じくらいたくさんの酸素と栄養を必要とする器官で、常に十分な血液が送られていないと 正常に働けません。特に、音の振動を電気信号に変換して脳に伝える役目を果たす内耳は、耳の構造の中でも 非常にデリケートです。内耳には「蝸牛」というリンパ液に満たされた渦巻き状の器官があり、 その内部には、音の振動を電気信号に変える主役となる「有毛細胞」と呼ばれる細胞が並んでいます。 有毛細胞には十数本の細い毛が生えており、伝わった音の振動に合わせてダンスをするように細かく振動します。 このことから、有毛細胞は別名「ダンス細胞」とも呼ばれています。

有毛細胞は、1秒間に最高で2万回ものスピードで激しく振動する非常に消耗の激しい細胞です。 そのため、酸素と栄養の供給源となる血液の流れが滞ると容易に壊れてしまいます。 有毛細胞が破壊されれば、当然、音を感じる力も衰え、難聴や耳鳴りなどの耳の不調を引き起こす原因となります。 耳に十分な血液を送って有毛細胞を守るには、柔軟性のある健康な血管が不可欠です。 動脈硬化が進めば、血管が硬く狭くなって血液が滞りやすくなるばかりか、血管が詰まったり破れたりしやすくもなるからです。 特に微小な器官が集まる耳の血管はとても細く、動脈硬化が起こればすぐに血流が不足して、有毛細胞に悪影響が及び、 聴力が低下してしまうのです。動脈硬化と耳の機能との関係は調査でも確認できています。 難聴とも関係が深い患者さん(57例)を対象に血管の状態を調べたところ、なんと90%以上の人で、 頸動脈内膜中肥厚が認められたのです。これは、首を走る頸動脈の血管が厚くなって血管が狭窄した状態のことで、 全身の動脈硬化の進行度を知る目安となります。つまり、耳鳴りの患者さんのほとんどが動脈硬化に陥っていたというわけです。


●糖尿病の人では難聴の危険が数倍にアップ

動脈硬化は、糖尿病や脂質異常、高血圧などの生活習慣病が原因で起こることがほとんどです。 とすれば、動脈硬化の発生・進行を防いで、難聴の悪化を食い止めたり改善に導いたりするためには、 これらの生活習慣病を改善することから始める必要があるでしょう。 そのために重要なのは、何と言っても食生活の見直しです。糖尿病や脂質異常、高血圧が生活習慣病と呼ばれるのも、 食生活に代表される普段の生活習慣の乱れが大きく関わっているためです。 食生活の見直しでは、まずは糖質と脂質の摂り過ぎを止めることから始めたいものです。 ご飯・パン・麺類などの主食や甘いお菓子などの糖質を多食する習慣を続けていると、 血糖値を下げるインスリンというホルモンを分泌する膵臓を傷め、糖尿病を招く引き金になります。

国立長寿医療センターが行った調査では、糖尿病の人は、そうでない人よりも2~4倍も難聴になる危険度が高いことがわかっています。 また、ヘモグロビンA1cが上昇すれば、それだけ難聴の危険度が高くなるという調査結果もあります。 血糖値を低く保ち糖尿病を防ぐためにも、糖質はふだんから控えめにすべきです。 また、脂質の摂り過ぎは血液中の中性脂肪やコレステロールを増やし、脂質異常を招く原因となります。 油を多く用いる揚げ物や炒め物などの料理は、糖質と共に控えてください。
反対に、ぜひ食事に取り入れてほしいのが、魚・野菜・海藻類です。 魚に含まれる DHAEPA などの脂肪酸は、血液をサラサラにして動脈硬化の発生・悪化を防ぐ優れた栄養素です。 実際、オーストラリアの研究者らの報告では、 n-3系多価不飽和脂肪酸 の摂取量が多い人ほど、加齢性難聴になる危険が少ない と指摘されています。野菜や海藻類に多い食物繊維には、食事で摂った糖や中性脂肪の吸収を抑える働きがあります。 これらの食品はビタミンやミネラルなどの微量栄養素も豊富で、血管の健康を維持するうえでも非常に役立ちます。


●ウォーキングの継続で動脈硬化が改善

動脈硬化や生活習慣病の撃退には、食生活の見直しと共に、 ウォーキングなどの適度な運動を習慣にするのも大切です。 運動は肥満の解消になるだけでなく、血管壁を刺激して血管の柔軟性や弾力の回復を促すのにも役立ちます。 実際、耳の不調に悩む患者さんが1日15~30分のウォーキングを半年間継続した結果、頸動脈内膜中肥厚が 0.1ミリ以上減り、改善したケースがありました。加齢性難聴を引き起こす動脈硬化の発生・悪化を防ぐには、 まずはこうした生活習慣の改善から始めてみてください。