がんの痛みの薬

がんの苦痛を和らげる「緩和ケア」では、痛みを抑える薬が大きな役割を果たします。 患者さんの中には、”麻薬”を使うことになるのを心配して、痛みを我慢してしまう人がいますが、 最近では、早期から積極的に痛みを取り除くことが重要と考えられています。


■がんの痛みの薬

がんによる体の痛みは鎮痛薬などで和らげられる

がん患者さんは、病気に伴う身体的なつらさばかりでなく、治療への不安、家族や仕事などに対する心配など、心身の様々なつらさを抱えることが少なくありません。 そのようなつらさを和らげて、生活の質を保つことを目指して行われるのが、「緩和ケア」です。 日本緩和医療学会によれば「重い病を抱える患者やその家族一人一人の体や心などの様々なつらさを和らげ、より豊かな人生を送ることができるように 支えていくケア」と説明されています。 緩和ケアというと、かつては治療が望めなくなった患者さんに対する終末期の選択肢と考えられていました。 しかし、現在は、がんと診断されたときから、がんに対する治療と併せて、積極的に行われるべきものとされています。 最近の研究では、がんの診断後すぐに緩和ケアを始めることで、患者さんの生活の質ばかりでなく、がんに対する治療にもよい影響を与え、 生存率の向上にもつながることがわかってきました。 緩和ケアとしては、痛みの緩和や、抗がん剤などの薬の副作用の緩和をはじめ、つらい気持ちを聞き、不安や心配を軽くするためのメンタルケアが行われます。 担当医や看護師だけでなく、様々な職種のスタッフが加わった緩和ケアチームによって行われることが増えています。
身体的なつらさの代表的な問題が痛みでしょう。体の痛みを和らげる方法としては、次のようなものがあります。

▼薬物療法
主に鎮痛薬を用います。痛みを緩和するための中心となる方法で、さまざまな原因の痛みに対応できます。

▼神経ブロック
痛みの原因となっている神経を局所麻酔や高周波熱凝固などによって麻痺させることで痛みを和らげます。

▼放射線療法、手術
がんの骨転移による痛みに対して放射線療法を行ったり、がんによる周囲の組織への圧迫を手術で取り除くなど、がんそのものの治療に限らず、 痛みの緩和を目的に行うことがあります。ここでは、緩和ケアで重要な役割を果たすがんの痛みの薬について述べていきたいと思います。


●がんの痛みの薬

がんの痛みの緩和に用いられる鎮痛薬は、痛み止めとして広く使われている非ステロイド性抗炎症薬などの非オピオイド鎮痛薬と、 モルヒネなどの医療用麻薬を含むオピオイド鎮痛薬に大きく分けられます。 また、必要に応じて、鎮痛補助薬を併用することがあります。主なものが下記の表のような薬です。 中心となるのは内服薬ですが、座薬や貼付薬、舌下錠、注射薬など、さまざまな剤形の薬があります。