脚に痛みがある人に『ゆっくりウォーキング』

ウォーキングが健康に役立つことは誰もが知っていますが、 痛みがあり、思うように歩けないという人も多いでしょう。 そこで、痛みがある人でもできるウォーキング法をご紹介します。


■痛いからといって歩かないでいると歩けなくなってしまう

歩きたいけれど、歩くと足が痛むという人が多くいます。統計的に最も多いのは「膝の痛み」です。 痛みを我慢しながら歩くのは、確かにつらく、勧められませんが、だからといって歩かないでいるのはよくありません。 なぜなら、筋力が急速に衰えてしまい、やがては歩けない状態へとなりかねないからです。 病気で寝込んだ時のことを考えるとわかりやすいのですが、筋力の低下はどんどん進みます。 高齢者だと、たった2〜3日寝込んだだけで、歩くのが大変になってしまうこともあります。 痛みがあるからといって歩かないでいると、いずれ歩けなくなってしまうということです。

歩くことは日常生活の基本なので、歩けないと日常生活に支障を来すようになります。 いつまでも自分のことを自分で行うためには、できる限り歩けるようにしておきたいものです。 そのためには歩く必要がありますが、歩くと脚が痛む人はどうすればよいのでしょうか。


●痛みがあるときは”正しい歩き方”で歩く必要はない

ウォーキングというと、一般的には次のような歩き方が正しいとされています。
・かかとから着地し、親指で地面を蹴りだすように足を動かす。
・歩幅は大きく、背筋を伸ばして、腕を大きくリズミカルに振る。
・速さは息がはずむ程度の速度で。
というものです。しかし、脚に痛みがあると、このように歩くのはなかなか難しいものです。 ウォーキングの正しい歩き方というのは、トレーニングのために体にに負荷をかける歩き方です。 歩くと脚が痛む人は、この歩き方にこだわる必要はありません。

脚の痛みといっても、そのパターンはさまざまです。体重をかけると痛む人もいれば、関節を曲げると痛む人もいます。 いずれにしても、そういう問題を抱えた人が、正しい歩き方にこだわると、痛みを悪化させてしまう危険性があります。 脚に痛みがある人が歩くときは、なるべく足に負担をかけないようにするのが基本です。 自分にとって痛みのない歩き方を工夫するとよいでしょう。 歩幅が狭くてもよいし、ゆっくりであってもよいのです。 いつまでも若いころの足腰の状態を保っていられるとは限りません。 変化が出てきたら、その時々の状態に合わせた歩き方をすればいいのです。


●1日20〜30分、負担を減らして痛みなく歩くのが基本

健康を維持するためには、1日に20〜30分は歩くことが望ましいでしょう。 もちろん個人差はありますが、この程度が目安になります。 ただし、歩くときは痛みがない状態であることが基本です。 歩くと脚が痛む人は、脚にかかる負担を軽くすることで、痛みのない状態で歩けるようにしてください。
脚に加わる負荷を軽減する方法としては、体重を減らす、杖を使って足にかかる負荷を軽くする、 硬い舗装道路を避ける、靴を工夫する、サポーターなどの装具を使う、といったことが考えられます。 負担を減らす工夫によって、歩くときの足の痛みから解放される人は多いのです。 痛みがなければ、20〜30分歩いてみましょう。少し汗ばむ程度のペースで歩くことができれば理想的です。


●”楽しい目標”を見つけると、歩く意欲が出る

杖を使ってでも、装具に頼ってでも、”歩く”ということを続けることが大切です。 そのためには、何か”歩く目的や目標”を持っているとよいでしょう。 例えば、家族と一緒に旅行したいという楽しい目標が将来にあれば、歩ける状態でいたいという意欲がわいてきます。 ウォーキングを継続するのに、意識付けはとても大切です。 まずは自分なりの”やってみたいこと”を探すとよいでしょう。 それが見つかれば、目的をもって、意欲的にウォーキングを続けることができるはずです。


●減量や靴で下半身への負担を減らす

脚にかかる負担を軽くするために、まず考えてほしいのは体重の問題です。 体を支えている脚には全体重がかかるので、肥満がある人は、食生活を改善したり、運動する習慣をつけたりして 減量することが望ましいでしょう。軽くなった分だけ、脚への負荷が軽減します。 杖をつくことも、脚にかかる全体重の負荷を減らすのに効果的です。 杖は使いたくないという人が多いようですが、脚にかかる負担を減らし、痛みを軽減させる効果は非常に優れています。 気軽に使うとよいでしょう。
歩くときに足に痛みがあるのなら、靴にも細心の注意を払いましょう。 地面からの力を吸収する、クッション性の良い靴底、足裏全体を体重で支えるために、 土踏まずの部分がぴったり合うことなどがポイントです。 また、歩き始めに痛む人は、痛む部分が熱を持っていない時は、歩く前からサポーターなどで膝を温めておくと 痛みを感じにくくなります。


●杖や装具は、自分の体や生活に合ったものを使う

歩くときの痛みを和らげるために、杖、サポーター、足底板などをすでに使っている人もいると思いますが、 それらは自分に合っているでしょうか。実際には、自分に合っていないものを使っている人が多いようです。 例えば足底板だと、家で過ごす時間が長いのか、靴を履いて外出している時間が長いのか、 いつも履く靴は革靴なのか運動靴なのかといったことで、必要となる足底板のタイプが異なります。 生活スタイルに合わせる必要があるわけです。 杖もいろいろなタイプがあるので、自分に合ったものを選ぶようにしましょう。 恥ずかしがらずに使ってください。

▼靴の中底
足の裏にぴったり合って、土踏まずがきちんと支えられるものがよいでしょう。 「足底板」などを中に入れて、調節することもできます。
▼靴のタイプ
運動靴など、歩くときに足がグラグラせず、しっかり支えられるものがよいでしょう。
▼底と中敷の硬さ
地面からの衝撃を吸収するような、クッション性があることが大切。 履いたときに”柔らかいが、ふにゃふにゃしてはいない”感覚のものがよいでしょう。
▼かかと
2〜3cm程度までの高さで、歩きやすい高さのものを選ぶようにします。 かかとが低すぎると、逆に歩きにくい場合もあります。

◆足底板

O脚があると膝の内側に負担がかかり、その部分に痛みが起こることが多いようです。 足底板は、膝の内側にかかる力を外側に逃がすことで、痛みを和らげたり、歩きやすくしたりする目的で使います。 足底板には、靴の中に入れるタイプや、足に装着するタイプなどがあり、 基本的には担当医に相談して自分に合うものを作製します。 足の裏に合っていて、硬すぎないことに加え、運動靴を履いて外出することが多いのか、家の中でよく歩くのかなど、 生活スタイルも考慮して作製し、積極的に使うのが大切です。

◆杖

T字杖がよく使われますが、使いやすさから選ぶとすれば、登山などに使うストック型のものでもよいでしょう。 肘と手で支えられるロフストランド杖や、先が4つに分かれていて安定して使えるタイプもあります。 杖を持つ姿勢は、、痛みのある脚と反対側の手に肘が少し曲がった状態で垂直に、 体を支えやすいよう体の近くに持つのが基本です。杖は、握りやすいタイプの杖を選ぶとよいのですが、 痛みの状態や歩き方、姿勢などによっても使いやすい杖は異なるので、さまざまなタイプを実際に試してみて、 体を支えやすく歩きやすい長さの杖を選ぶことが大切です。

◆サポーター

サポーターには保温のほかに、膝を支持して負担を和らげる目的があります。 支持性や生地の柔軟性などによってさまざまなタイプがあります。 スポーツをする際などは、支持性の高いものを選びます。 担当医に相談して選ぶほか、市販されているものもあります。


●その他

▼土や芝生の上を歩くようにする
脚に痛みのある人は、アスファルトなどで舗装された硬い地面よりも、土や芝生のあるところの方が、 ショックが吸収されるので、痛みのある脚にはよいでしょう。
▼日頃から、膝のストレッチングをする
膝を曲げ伸ばしするとき、”膝のお皿(膝蓋骨)”は大切な働きをしています。 膝が痛む場合、周囲の筋肉が硬くなり、お皿の働きが悪くなっていることが少なくありません。 痛みなく歩くには、お皿の周りの筋肉をほぐしておくのも効果的です。 例えば、ぬるめのお湯を入れた湯船の中でゆっくりと行えば、正座は膝の周囲のストレッチングになります。 湯船の中だと、関節が温められ、浮力で負荷が軽減されるので安心です。

●自分のことは自分でできる生活を維持するためにも、今できる範囲で体を動かそう

痛みで歩くのが難しい人や、入院などで歩くことから遠ざかっていた人は、上記で紹介したような方法でも、 なかなか歩けないかもしれません。そんな時は、できる範囲で歩いたり、体を動かしたりしてみましょう。 続けて20〜30分歩けなければ、途中で休んでもよいし、朝昼夕10分ずつに分割してもよいでしょう。 階段で痛みが出る人なら、エレベーターやエスカレーターを積極的に利用しましょう。 人通りのある道を歩くのが不安ならば、車いすで安全な場所まで移動して、そこで歩く方法もあります。 水中ウォーキングや自転車こぎはできるという人なら、もちろんそこから始めてもかまいません。

”自分のことは自分でできる生活”を維持するためには、脚に痛みがあっても、今できる方法で体を動かし、 積極的に外に出かけていくようにしましょう。