狭心症の薬物療法に使う薬

狭心症の薬物療法では、主に、発作を止めたり予防するために用いる「硝酸薬」に加え、 冠攣縮性狭心症では「カルシウム拮抗薬」、器質性狭心症では「β遮断薬」が基本的な治療薬となります。 また、血栓を防ぐために「抗血小板薬」などを用いることもあります。 また、「抗高脂血症薬」のように、高脂血症の改善だけでなく、血管を保護する作用もあることから、 狭心症の発作予防を期待して使われている薬もあります。


■発作予防に使う薬

日常の発作予防には、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、持続性硝酸薬、冠血管拡張薬が用いられます。

●カルシウム拮抗薬

降圧薬として高血圧の治療に広く使われている薬で、血管を拡張させる作用があります。 冠動脈を拡張させて血流をよくするとともに、全身の血管を拡張させて心臓の負担を軽減し、酸素消費量を減少させます。 狭心症の発作を防ぐためにも有効で、特に冠攣縮性狭心症の治療では重要な薬です。 「ニフェジピン」「ジルチアゼム」「アムロジピン」「ベニジピン」「ニソルジピン」「ニトレンジピン」 「エホニジピン」「ベラパミル」「ベプリジル」といった薬が狭心症の治療に使われます。 現在は1日2回服用する薬が中心になっていますが、いつ飲むかは狭心症のタイプに合わせて決められます。 薬によって作用の強さに違いがあり、効果に個人差があるので、飲んでみて、様子を確認しながら種類や量を調節していきます。 特に血圧が低い人は、下がりすぎになることがあるので、服用を始める際には、血圧を測りながら合う薬を探します。

◆副作用・使用上の注意

抹消血管を拡張させることから、副作用では顔面紅潮やほてりが多く、頭痛、めまいなどが起こることもあります。 急に服用を中止すると、命に関わる不整脈を引き起こすこともあるので、自己判断で中止するのは禁物です。 また、この薬を飲んでいる人が、グレープフルーツやそのジュースを摂ると、 薬の作用が強まって血圧が下がり過ぎることがあるので、注意が必要です。


●β遮断薬

心臓の収縮に関わる交感神経の刺激を遮断して、心臓の拍動を抑える作用を持つ薬です。 心筋が必要とする酸素の量は、血圧と心拍数によって決まります。 β遮断薬は、血圧を抑え、心臓の働きを抑えて心拍数を低下させることから、心筋が必要とする酸素の量を減らし、 狭心症の発作を防ぐ効果があります。 特に器質性狭心症で、労作時に発作が起こるような人に適する薬です。 高血圧の薬としても古くから使われていて、多くの種類があり、作用時間の長さなどで使い分けられます。

冠攣縮性狭心症では、β遮断薬を単独で使うと 病状を悪化させることがあるといわれるのですが、他の薬と併用すれば、実際はあまり問題にはなりません。 器質的な冠動脈の狭窄と冠攣縮が合併している人では、カルシウム拮抗薬とβ遮断薬の併用が効果的です。 β遮断薬には多くの種類があり、降圧薬としても使われていますが、狭心症によく用いられるのは、 「プロプラノロール」「メトプロロール」「アテノロール」「ビソプロロール」「カルベジロール(αβ遮断薬)」 などです。主に作用時間の長さによって使い分けられます。

◆副作用・使用上の注意

脈が遅くなりすぎると、時に命に関わる不整脈が起こることがあるので注意が必要です。 心不全のある人は特に慎重に用いる必要があります。急に服薬を中止すると、不整脈や狭心症、 心筋梗塞などが誘発されることがあるので、中止するときは徐々に減量します。


●持続性硝酸薬

硝酸薬には、作用が長時間持続するタイプがあり、発作予防に使われます。器質性狭心症にも冠攣縮性狭心症にも有効で、 内服薬のほか、皮膚に貼って使うテープ剤もあります。血管の拡張に伴って、血圧低下や、頭痛、めまい、動悸などの 副作用が起こることがあります。持続性硝酸薬は、血中濃度の高い状態が続くと、「耐性」が生じて効果が弱まる といわれています。それを防ぐには、発作の起きやすい時間帯に薬の血中濃度が高くなるようなタイミングで使って、 他の時間帯に休薬時間を設けます。


●冠血管拡張薬

冠動脈を拡張させる作用を持つ薬ですが、単独ではあまり強力な効果は望めません。 通常、上記に挙げた基本的な薬に加え、次のような冠動脈の拡張作用を持つ薬と併用します。 いずれも効果はあまり強くなく、通常、基本薬に併用されます。「ニコランジル」は、硝酸薬と血管拡張薬の作用を 併せ持つような薬です。血管拡張はカルシウム拮抗薬ほど強力ではないものの、血圧をあまり下げないのが特徴です。 副作用が少ないため、ふだんはこの薬を単独で使っている人もいます。 そのほか、「ジラゼブ」「トラピジル」「ジピリダモール」「トリメタジジン」などの薬は、冠動脈の拡張作用に加えて、 次の抗血小板薬の作用も少し併せ持っています。 最近よく使われている「ニコランジル」は、硝酸薬と血管拡張薬の作用を 併せ持つような薬で、血圧をあまり上げないなど、副作用が少ないのが特徴です。 その他の薬は、冠動脈の拡張作用に加え、抗血小板薬のような作用を少し併せ持っています。