茸(キノコ)

近年、アガリクス、ハナビラタケ、メシマコブ、チャーガ、霊芝、ヤマブシタケ等の 茸(キノコ)に豊富に含まれている多糖類の「βグルカン」の抗癌作用が注目されており、 サプリメントやお茶で摂取する人が増えています。 また医薬品として、キノコから開発された多糖体制癌剤(免疫療法剤)としてクレスチン、レンチナン、ソニフィランが認可されています。 それ以外にもキノコには、抗菌、抗ウイルス、コレステロール低下、血糖降下、血圧降下、抗血栓、PHA幼若化抑制、抗腫瘍などの効能があると報告されています。


■キノコ類の栄養成分

食物繊維、ビタミンB群、カリウムなどの栄養素を含んだ低エネルギー食品

キノコは生ものでは90%くらいが水分で、残りはほとんど炭水化物です。 炭水化物とは糖質のことで、キノコに含まれる糖質の多くはヘミセルロース、ペクチン、リグニンなど 難消化性の多糖類でいわゆる食物繊維と呼ばれ、エネルギー源とはならず、便と共に排泄されます。 キノコの食物繊維の種類と量は、野菜や果樹類のそれとほぼ同等に含まれています。 そして、キノコの食物繊維には、えびやかになどに存在するキチンが含まれていることが特徴的で、植物とは異なっています。

その他キノコにはビタミンB1、B2そしてナイアシンなど ビタミンB群が、食品の中では比較的多く含まれています。 ビタミンAやビタミンCはほとんど含まれていません。 キノコに含まれているビタミンの特徴は、エルゴステロールをかなり多量に含んでいることです。 エルゴステロールは太陽光に当たるとプリビタミンD2という物質になり、さらに熱が加わると ビタミンD2に変化します。 キノコは植物性食品の中で有用なビタミンD2供給源であり、 骨粗鬆症の予防効果が期待できます。 このことから、干ししいたけの機能性食品としての価値がわかります。

ミネラルではエノキダケ、ヒラタケ、マイタケ、マツタケなどに カリウムが比較的多く含まれていますが、 シイタケにはあまり含まれていません。

結論として、キノコ類の一般成分は野菜に似ていますが、食物繊維、ビタミンB群、カリウムなどの栄養素を含んだ低エネルギー食品といえます。


●キノコ類の機能性

キノコからは有用な生理活性物質が多数発見されています。

生理活性 成分 キノコ名
抗菌作用 グリシン・コリオリン・イルージン・ポリアセチレン化合物 各種キノコ類
抗ウィルス作用 たんぱく質・βグルカン シイタケ・サルノコシカケ
強心作用 ホルバトキシン・フラムトキシン フクロタケ・エノキダケ
コレステロール低下作用 エリタデニン・グリホリン・ネオグリホリン シイタケ・エノキダケ・マイタケ・ニンギョウタケ・アガリクス・マンネンタケ・シロキクラゲ
血糖降下作用 ガノデラン・ペプチドグリカン マンネンタケ・マイタケ・冬虫夏草
血圧降下作用 テルペノイド・糖たんぱく マンネンタケ・マイタケ
抗血栓作用 レンチナシン、5-AMP・5-GMP シイタケ・マッシュルーム
鎮痛作用 ゲルマニウム化合物 マンネンタケ・アガリクス
痴呆改善作用 ヘリセノン・エリナシン・ジイクトホリン ヤマブシタケ・キヌガサタケ
肥満抑制作用 たんぱく質 マイタケ
摂食抑制作用 レクチン ヒラタケ
美顔、美肌作用、保湿性 チロシナーゼ阻害物質・トレハロース・マンニトール マイタケ・ホンシメジ・ホウビタケ・ニンギョウタケ
膠原病改善作用 コラゲナーゼ阻害物質 クリタケ・ホウロクタケ


●キノコ類の抗癌作用

キノコ類に多く含まれるβグルカンには抗癌作用がある!?

近年、キノコ由来の成分が「癌(がん)」に有効といわれ、注目されています。 キノコの研究が本格的にスタートしてから約20年が経ちますが、現在までに数種類のキノコから癌に対する有効作用が認められ、科学的な検証が行われてきました。 キノコの抗癌作用とは主に、人体にもともと備わっている免疫機能を活性化するというものです。 免疫機能が十分に高い状態であれば、体にとって敵である癌細胞と互角に戦い、癌の発生や増殖を抑えることができます。 長年の研究の結果、キノコ類全般に含まれる「βグルカン」という成分に、 免疫力を高める働きが強いことが確認されました。 「βグルカン」とは多糖類(ある特定の糖質がいくつか連なった物質)の一種で、糖の結合の仕方によって β(1-3)、β(1-4)、β(1-6)などに分類されます。 それぞれのキノコに含まれるβ-グルカンの構造を比較してみると、これらの結合が、さまざまな割合で含まれているのです。

キノコの免疫力を高める働きがどのような構造に基づくものかを判断するのは非常に難しく、未だに未知の部分が多いことも事実です。 しかし、これまでの研究結果から考えると、キノコの免疫力増強の中心的な役割を担っているのは、βグルカンと見て間違いないと思われます。 βグルカンは、シイタケ、シメジ、エノキダケ、ナメコ、キクラゲなど、日本人に好まれているキノコに幅広く含まれています。 しかし、その含有量で他を圧倒しているのが、アガリクス、ハナビラタケ、メシマコブ、チャーガ、ヤマブシタケなどです。


●βグルカンとは?

β‐グルカンは、キノコ類や海藻類、酵母などに含まれている素材で、 Poly(1-6)-Glucopyranosyl-(1-3)b-D-Glucopyranoseと呼ばれる糖が数多く連なった高分子多糖体です。 β‐グルカンの中でも、パン酵母由来の1.3と1.6の部分に結合連鎖を持った高分子多糖体は、 特に健康維持に役立つ成分として注目されており、アメリカを始め各国の大学や研究機関で多くの研究発表が行われています。 数々の研究結果の中でも、β‐グルカンは腸管のパイエル板免疫機構(腸管免疫)に影響を与えて免疫賦活作用を示すのではないかといわれております。 我が国日本ではキノコ由来のβ‐グルカンなどを多く含む医療用医薬品(レンチナン、クレスチン、ソニフィランなど) が厚生労働省から免疫治療薬として認められています。 医療用医薬品ですのでそれぞれ薬価があり、通常使用量で1日あたり1500円~6000円程度の金額となりるため非常に高価な医薬品といえます。


■関連項目

アガリクス
「アガリクス」には、βーグルカンやリン脂質、各種ミネラルやビタミン、酵素などの貴重な成分が多く含まれています。 それにより、他の植物に比べ免疫力を高める作用が格段に高く、癌などの難病にも効果があると報告されました。 また、アガリクスの多糖体の中にはインターフェロンの産生を活性化する作用があり、ウイルスの侵入を防ぐ力も強いことが証明されています。

冬虫夏草
「冬虫夏草」は、「昆虫などの動物を宿巣とするキノコ」で、古来より中国では“不老不死の長寿の秘薬”“漢方の横綱”といわれ、 現在でも滋養のための最高級食材として珍重されています。 その効力は科学的にも証明され、中国では国宝級の国家指定食品になるほどのパワーを秘めています。

茶樹きのこ
「茶樹きのこ」は、優れた食材として注目を集めており、近年、茶樹きのこには、私たちの身体に必要不可欠なアミノ酸が豊富であること、 免疫機能を増強する物質が多いことが明らかになりました。

チャーガ
「チャーガ」には、β-グルカンを初めとして多糖体、フラボノイド、食物繊維、ビタミン、ミネラル、 ポリフェノール、リグニンなどが豊富に含まれ、SOD値(抗酸化作用)が最も高い自然食品です。 SODとは、攻撃性の強い活性酸素を無害にする体内の酵素のことです。 このSODと似た働きをするのがSOD様活性物質で、キノコの中でもチャーガには飛びぬけて豊富に含まれています。 チャーガのSOD値は実にアガリクスの23倍、青汁の60倍もあり、ロシアでは癌の治療にも使われるそうです。

ハナビラタケ
「ハナビラタケ」には、身体に対して有用なβグルカン(1-3) が非常に多量に含まれています。 βグルカン(1-3)は免疫力を高め、抗癌作用があるといわれ、 ハナビラタケには、βグルカンがアガリクス茸の3倍以上、メシマコブの約2倍含まれています。

メシマコブ
「メシマコブ」には他のどのキノコよりも強い、96.7%という腫瘍増殖阻止率があり、 その免疫強化機能はアガリスクや霊芝をはるかに凌ぐものとして注目されています。

山伏茸(ヤマブシタケ)
「山伏茸(ヤマブシタケ)」には、β-グルカン、食物繊維、アミノ酸が豊富に含まれ、免疫力強化や活性酸素撃退などに期待されています。 また、山伏茸(ヤマブシタケ)には、 脳を元気に保つ成分である「ヘリセノン」と「エルナシン」という天然素材としてはヤマブシタケにしかない成分も含有しており、 脳血管性認知症やアルツハイマー型認知症に改善効果が期待できることがわかってきたため、ボケを防止する健脳食品として関心を集めています。

霊芝
古代より「霊芝」は中国で漢方として、免疫強化を始めとして様々な用途に使用されてきました。 現代では研究が進み、動脈硬化、血栓、心臓疾患、糖尿病などの生活習慣病予防にも有効だということがわかりました。 また抗ヒスタミン作用があることからアレルギー症状を軽減します。不眠症にも効果的です。 疲れがたまって身体免疫機能が低下している時にお薦めするサプリメントです。

AHCC
「AHCC(活性化多糖類関連化合物)」は高度なバイオ技術によって培養された複数のキノコ菌糸体からの抽出物を交配し、 培養、酵素反応させて作った免疫賦活物質です。 AHCCは、生体の免疫系を刺激することによって免疫異常または免疫低下の状態から回復させるといわれています。 AHCCが他のキノコ系商品と一線を画している理由は、ほとんどのキノコ製品の特有成分が「ベータグルカン」 と呼ばれているものであるのに対し、 AHCCの場合はアセチル化された「アルファグルカン」が その健康パワーの中心となっている点です。